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わたしのひどい落とし物エピソード供養(日記)

   私が財布を落としたことに気づいたのは、大学から帰る寄り道で服屋に寄っていくつか試着を終え、いざ会計をしようとしたときだ。さすがに嘘だと思い、そばにあった椅子にリュックの中身を広げて確認しても確かにそこに財布は無いのである。
 
   そこで私は今日の行動を思い返してみた。私は今日、いつもは自転車で大学まで行くところ、大雨で気温も極端に低かったのでとても自転車でカッパを着て行く気になれず、バスと電車を使って行くことにしたのだ。普段バスに乗る時はパスケースに入ったPASMOを使うので、そこで財布を取り出すことはない。しかし、バスを降りて電車に乗る前にPASMOにチャージをしたため、そこで財布を確実に取り出して使ったのだ。その日は大学に用があったのが3限の1コマだけだったので、大学では何も買っていないし、当然財布も取り出していない。講義が終わって大学から帰る際、服屋に寄る前に本屋を3軒ハシゴして寄ったが、そのうち最初に入った本屋で小説を1冊購入し、PayPayで支払った。大学の最寄り駅の中にある本屋である。私はここまで自分の行動を思い返してみて、確実に最後に財布を取り出して使ったのはバスから降りて電車に乗る前にPASMOにチャージをしたときだと思ったため、まずその駅で尋ねてみることにした。なお、試着した服は購入せずに戻した。

   大学の最寄り駅から1つ乗った先にあるその駅に着くと、私はさっそく駅員に落とした財布について話した。
「数時間前にこの駅でPASMOにチャージをした時に財布を使ったんですけど・・・このくらいの大きさで茶色くて薄い財布で・・・名前が入ったキャッシュカードが入ってます」
といったように一通り説明したのだが、駅員の反応は芳しくなく、結局財布はなかった。駅員からは、その駅の近くに交番があるからそこに行ってみてはどうかという助言をもらってその駅を後にした。

   交番でも同じように落とした財布についての説明をした。しかし、そこでも財布は届いていないということがわかった。警察の方からは遺失物届けを提出することを勧められたため、仕方なくそうすることにした。遺失物届けには名前や住所、電話番号など、落し物がもし見つかったときにかかってくる連絡先から、落とした財布に関する詳細な説明が求められた。今振り返ると20分以上は交番にいたと思う。最後に遺失物の受理番号を渡され、もし自力で見つけた時には連絡して、この受理番号を伝えて欲しいという説明を受けて交番を出た。
 
   私は暫くの間、交番の前で立ち尽くした。その間何を考えたのかというと、服屋に寄る前に本屋に入って小説を買ったときのことである。私は確かにPayPayで支払ったため、財布は使っていない。でも代金を支払おうとして財布を取り出した後にPayPayで支払えることに気づいて財布をレジのその場に置いたのではないかということに気づいたのである。そう思った私は本屋を検索して、電話番号を調べてダメ元でも連絡してみることにした。そのとき、まだ交番の前である。
「先程、そちらの本屋で買い物をした者ですが、もしかして財布を忘れて行ってしまったかもしれません。無いですか。」
「はい、届いてますよ」
「あの、茶色い財布なんですけど・・・すいません多分それです今から行きます」
あった!!!という素直な気持ちとなんだったんだ今までの時間は、駅員さんにも警察の方にもお世話になったのに、と複雑な感情を一瞬にして抱えながら、私は交番にまた入り
「今、今日寄った本屋さんに連絡してみたんですが、私の物とみられる財布が届いていると返答が来たので財布あるっぽいです!本当に手間取らせてごめんなさい!!」
と弁明すると最初は目を丸くしてびっくりされたが、その後は良かったねぇと言いながら笑われた。処理はこちらでやっておくからと警察の方から言われ、汗汗しながら私は交番を後にし、そのまま電車に乗って1駅先の本屋さんに向かった。

   本屋さんに行き、さっき電話を取ってくれたとみられる店員さんに尋ねたところ、いとも簡単に私の財布を手渡ししてくれた。本当にほっとした。ちゃんと私の財布で中身もそのままだ。私は何を思ったかその駅にあるビアードパパでフォンダンショコラを買い、さっきの駅に戻った。戻った私は流石にバスで帰ろうと思い、時刻表を確認したところ、次のバスが来て出発するまで12分あることに気づき、この時間なら服屋に戻って買って帰れると思った私は、ダッシュで服屋に戻り、少し雑に戻してしまったまま置いてあった服を手に取って会計を済ませ、ダッシュでバスに戻り、無事に乗って帰ることができた。
 
   こうして、私の長いようで短い1日は終わったのである。もう落し物はしたくない。最後に、家に帰ってレンジで少し温めて食べたフォンダンショコラはとっても美味しかった。

 

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