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そう僕を信じてくれないか:日向坂四期生楽曲『見たことない魔物』感想

はじめに

 本稿は日向坂46の10thシングル『Am I ready?』に収録されている四期生楽曲『見たことない魔物』について、その感想を記していくものになります。先日の日向坂ちゃんねるで放送された「四期生個人PVプレゼン大会」(アーカイブ上がってないんだよな…)において、各メンバーの個人PV見どころ解説と同時に新しい四期生楽曲が『見たことない魔物』というタイトルであること、そしてセンターが藤嶌果歩さん(かほりん)であることが発表されていました。
 『見たことない魔物』というタイトルのインパクトは、直近で櫻坂三期生楽曲が『静寂の暴力』だったこともあってかより印象に残っており、kawaii monster的な楽曲なのかな、はたまたスピッツの『夏の魔物』みたいな感じなのかな、と想像を膨らませていました。ただ、上述の配信で平尾帆夏さんが「タイトルからは想像できないような明るい曲」というニュアンスの予告(?)をしていて、MV公開の日を今か今かと待ち望んでいました。今思うとあの配信の時期にMV撮ってたんだな、と思ったりも。『ブルーベリー&ラズベリー』、『シーラカンス』と来てからの『見たことない魔物』。タイトルからでもギアを上げたことが感じられる本作。以後は歌詞→曲→MVの順に触れてから、日向坂四期生とこの『見たことない魔物』から描く展望、だったりに触れられればと。あくまで個人的な読み取りだったり感想です。それではどうぞ。

楽曲面

 本作について感じていることの要約は上記のTweetなのですが、そこに考え至った流れや個別要素の解きほぐし、総体としての印象、などを以下に書いていきます。

歌詞

 「答えが見つからない 出口はどっちだろう 僕ならここにいるよ」から始まる今作。冒頭の一節でこの楽曲のアティテュードを感じ取ることができるのではないかと。答えが見つからなくて出口がどこにあるか探しているのは「君」で、「僕」はそれに応答し「僕ならここにいるよ」と語りかけており、ここに「君」に寄り添って力になるよ、という前向きな、そして隣に立ちともに歩む、そんな像を描いています。
 次節の「微かな月明かりが道を作るみたいに 真っ暗な道を手探りして歩いてゆく」は道=進むべき方向とも読み取れ、それを「手探りして歩いてゆく」のは普遍的なメッセージであると同時に、これまでもそうだったしこれからも道を探し続ける日向坂自身と重ね合わせても聴いています。続く「こんな真夜中すぎ 家から抜け出して」では非日常の予感を醸し出すとともに、サビ前の「なんにも見えないけど すぐ側たしかに愛があると感じてる」はまさに「絆とは そこにいること」であり。互いを想うことそれ自体が力になる、という愛の一丁目一番地といいますか。

 サビの「見たことない魔物が出てきたって」は本作のタイトルにもなっているフレーズですが、ここでいう「魔物」は用法的には「甲子園の魔物」みたくぶち当たる壁や得体の知れない困難、といったものの象徴的な表現と読み取っており、そこに対して「絶対そこから逃げ出さないでよ 恐ろしいものは幻覚なんだ 僕らの約束を試してるだけ」と続きます。そう、「僕ら」の歌なんですこれは。「僕らの約束」と歌う日向坂四期生たちが、「君」=歌を聞いている私達に向かって「そう僕を信じてくれないか」と投げかける。ここに『約束の卵』の精神と『青春の馬』の精神を見出していますが、これについては歌詞の節の最後にまとめて触れます。

 2番に入ると「世界にたった一人きりになってしまったのか」だったり「胸の奥の不安 行方さえぎられても」と孤独や不安と吐露するワードが並ぶものの、「足を止めないまま一気に走り抜けよう」と鼓舞する展開。そこから続く一節で唐突に「ポニーテールのシルエット」が「幻想かもしれないが」見えてきましたが、ここが本作でいちばん康成分が濃いところだと思います。康ポニーテール好きすぎるだろ。『ポニーテールとシュシュ』を皮切りに、『キュン』は「真っ黒なヘアゴムでポニーテールに髪を束ねた」だし、『17分間』では「今日のポニーテール世界一似合ってるね」だし、直近なら『ドローン旋回中』でも「スケートボードで飛び出すポニーテールの君を追いかけたいけど」だし。「何かが見えてきたよ」で「ポニーテールのシルエット」という、ポニーテールそのものではないところが康ポイント高いところです。

 ただ、ちゃんと(?)ポニーテールについて考えたとき、「幻想かもしれないが」と続くことによって実在のというよりは「像」としての働きを感じさせるため、暗闇の中道を模索していく過程で光指す方に見えた自分たちにとっての理想像、と読み取れなくはないかなとも。軽めに受け取ってください。もしかしたら『青春の馬』の直喩なのかもしれない。

 2サビでは「一番怖い魔物に邪魔されても」という直面する壁や困難に対して「瞼を閉じて僕のことを想って 僕は君のことを想うから」「それでも愛してるか もちろん愛している」とよりストレートに愛を、というよりも互いを想うことによって巻き起こる力について歌っていると受け取っており、これを受けてのラスサビは1サビと同じ歌詞を持ってきています。これによりラストの「僕を信じてくれないか」の説得力というか効力が増すというか、2サビ分の呪力(概念)が上乗せされた状態での詠唱となっている為、「見たことない魔物」に対してもきっと僕らなら大丈夫、という感触を受けました。

 そう。「僕を信じてくれないか」なんですよねこの曲は。信じること、そばにいること、鼓舞すること、これこそ日向坂が持っている『青春の馬』イズムであり、「待っててくれるか?夢叶うまで 君のことを連れて行く 苦しくても諦めない 僕ら信じてよ」の『約束の卵』イズムなのだろうな、と感じています。四期生楽曲で、しかもパッと見夏曲なサムネでこのメッセージの強度と普遍性が来るとは思わなくて、いい方向に裏切られた感触でした。

↑Tweet引用失礼します、この繋がり・情景の広がりが好きです

 この記事構成で数作分対象にして書いてきて痛感するのはわたし自身に楽曲知識や素養がないことによって取りこぼす範囲が広いんだろうな、というところです。だからこそ、得られる周辺情報やクリエイター陣の過去作などから傾向を掴むとともに、本作の曲の面でわたしが何を受け取ったか、を主眼に書いていきます。
 クレジット的な話をすると作曲は野村陽一郎さん、編曲は若田部誠さんのタッグによって本作が誕生しました。野村さん作曲は日向坂だと『キュン』や『ドレミソラシド』、『恋した魚は空を飛ぶ』『恋は逃げ足が早い』など、若田部さんは直近ならブルラズを担当しているらしいです。下記引用Tweetにもあるように、なるほど冒頭にサビのフレーズ持ってくるこの感じはかなり日向坂楽曲でも聞き馴染みのある構成でした。

 そしてサビの印象的なメロディー。すでに何人もの方がTL上でも言及されていたので元ネタ(?)を聴いてみたけれどこれはもう確実にサンプリングというかオマージュというかリスペクトというか。「荒野の七人」が「七人の侍」のリメイクであるように、『見たことない魔物』は『青春の馬』『約束の卵』の精神性をリスペクトし日向坂四期生として出力されたもの、と受け止めています。

https://twitter.com/tomikyu/status/1678243618790998017

 メロディ構成においては上記の2節で重要なポイントは頭出しできたので、以後は時系列(?)的に触れていきます。

 冒頭サビ(仮呼称)に鳴っているのは早めのBPMに抜けるようなサウンドのシンセであり、音数としてはシンプルなメロディに歌詞が乗っかってくる作りかと思われます。サビのメロディとされる最後のパートは余韻もなく気持ち的には0.5拍手前でメロディが切り替わる、という手法もあり、場面展開が目まぐるしい音像です。
 また「こんな真夜中すぎ」からは跳ねるような高音を忍ばせて得も言われぬシンセを響かせるとともに、サビに向かうバースではシンセソロ(?)とでも言うべきパートでメロ部分を構成し、同時に拍を刻む上乗せのビートがどんどん加速していく様はより一層サビへの期待感を醸し出している、と言えるでしょう。
 全体的に見ると1番と2番のメロディ自体の構成は共通しており、その差分は乗っかる「歌唱としてのメロ」にあるのではないかと思っています。今作はブルラズやシーラカンスよりもソロパート、あるいは2人ペアのパート分量が多くなっていて、それ故個々人の声質が際立つ作りになっています。特にかほりんのソロパートは先日の個人PV予告編でもその歌唱力(”うまさ”だけじゃない表現力の粋を秘めた歌声)をいかんなく発揮しており最高。「何かが見えてきたよ」の部分とか特に。
 そして間奏〜ラスサビ。ラスサビは体感だと半音上がってる?歌詞は1サビと共通ながら、2サビ〜間奏を挟んでかつ半音アップ(これを転調というのかな)で戦闘力が上がった状態で突き進んでいき、「そう僕を信じてくれないか」で潔く終了します。この、バン!と終わる構成もまた『恋は逃げ足が早い』などに共通するものであり、翻って楽曲の余韻を残す効果があるのではないかと感じています。

 最初はサムネやMVで夏曲だ!!となりましたけど、サウンドのみにフォーカスして聴いてみたときの第一印象としては、夏曲要素は含まれていつつもより根源的なマーチ感といいますか(セカサン然り)世界への肯定のニュアンスを受けましたし、季節を問わずに聴ける普遍的な音色なのでは?となっています。そもそも夏曲のあんたの定義を聞かせてくれよという話なので書くと、個人的には夏の持つ一過性、生と死のニュアンス、キラキラの色彩と日差しあたりを内包するものとして捉えているので、現時点での個人的な2023年夏曲としては「ナツマトペ」(イコラブ)、「あの夏の防波堤」(AKB研究生曲)、「ドローン旋回中」(櫻坂6thカップリング)です。本作もここに含んで差し支えないとは思いますが、方向性としてはキラキラしていると同時に永遠と未来を志向している、そんな印象です。わたしは夏ライブでこれを聞いてブチ上がりたいし放水を浴びたい。ケヤフェスくん行きたかったよあたしゃ。というわけで日向坂四期生、TIF出てくださいできればスマイルガーデンで…。

MV

展開と描写、好きポイント

 形式としては大まかなMVの描写を時系列で捉えつつ、通底する部分や寄り道、またスクショを用いた個別具体なカットへの言及、といった流れで進めます。これまでの記事では展開とスクショパートを分けていましたけど、今作は展開や構成の妙、というよりも画そのものが雄弁であるなと感じたためこの形にしました。

 日向坂四期生楽曲MVにおける学校モチーフは『ブルラズ』『シーラカンス』に続いており、流れで言うならば乃木坂5期生が『絶望の一秒前』『バンドエイド剥がすような別れ方』『17分間』と同様かと。だからこそ櫻坂三期生が2曲目にして学校モチーフを捨象した(というかそこを主軸にしなくなった)ことの特異性とグループとしての方向性が見えてきたりします。なお本作のMVには体調不良の関係で岸くん(岸帆夏)が不在なので、完全体、とは言い切れないものの、岸くん含めた「日向坂四期生」の輝きがそこには映っていた、と思います。

 冒頭「使用中」から放送室へと移りタイトルを書いたカセット(四期生世代はカセット知らない説全然ある)と「日向坂46」、12人の名前を表示するという冒頭約5秒間。このタイトルの使い方はかなり好きです。ブルラズはMV中にタイトル表示されてなかった(見落としてたらすいません)ものの、シーラカンスでは冒頭にしょげこを映しながらタイトルを出していましたが、この第3形態といったところでしょうか。

放送室ってドラマが始まりそうな感じしますよね、普段だと限られた人しか入れない空間だから。
校内に放送しているのは1対多でありながら1対1なアイドル個人と私たちの関係性にも結びつく。
かなり好きなカット。しかし皆綺麗な名前だ…

 そこから歌唱パートに移ると「水を抜いたプール」に並ぶ四期生たちが。すぐさま想起したのは『ドレミソラシド』で、以後も校内でのソロカットで歌唱とともに顔の近くでの手の振りが多用されており、ここは明確に意識している部分かなと思っています。

ドレミソラシド。いつ観ても「いい…」となる。
鼓舞。かほりんは四期生の要石だと思ってます。
当初から感じていたインタビュー等での落ち着きっぷりも(不動の心)、
その歌唱力という武器も満を持しての発揮といいますか、
「僕を信じてくれないか」と発するに説得力が付与される人選だと思います。
カノンで徐々に前列→後列へ。今作においてソロで映ったときのすみれちゃんの画力というか
佇まいのビビッドさについ目が彼女を追っているんですよね気づいたら。
しょげこ。少年のような強さと儚さを内包しつつも、等身大の女子高生でもある。
奥に映るひらほー(平尾帆夏)がシャツインしてないのもいいし、
はるはる(山下葉留花)の茶髪にチェック柄スカート+リボンが大正解すぎる。
すみれちゃんの爪先!!!(とだけ書くと少し危ない感じ)
振付のポテンシャルを最大限に引き出してる。
Here Here Here、の部分。ひらひらひら、じゃなかったんだ。
ソロパートかほりんの歌声すばらしいね…
そしてドレミソラシドリスペクトなカットが続きます。
つよっ、って言ったもんね観たとき。
推しメンことこにし。どの曲においてもコンセプト消化力が高いと感じています。
はるはる。楽曲の屋台骨になっているのははるはるだと思う。
ダンススキルもさながら表情が素晴らしい。
「この街を見下ろす丘で会おうって言った」
「この街を見下ろす丘で会おうって言った」
「僕らの約束を試してるだけ」。クラーク博士のオマージュ?
仮面ライダーの変身ポーズみたいなキメでもある。
わたしの好きな組み合わせの2人。手を取り合う渡り廊下はブルラズでも見られた構図。
ひらほーたまちゃん。歌声に記名性が特に高いこの2人。
「足を止めないまま一気に走り抜けよう」が似合うね。
プールに飛び込んでる!!!『ガールズルール』であり『夏嵐』であり。
この角度のカット中々ない気がする。かほりんがポニテだということに気づく。
校内組。円環もまたドレミソラシドを彷彿とさせる。
画角が面白い。
ドローン旋回中。
めちゃくちゃ雨。ここまで…?ってくらいに雨。
「僕たちはもうすぐ会えるはず」のず!で水しぶきをあげるこの振りの勢いが素晴らしい。
細かいところもこだわってて良いすね
こにしななみさん!!!!!!好きです!!!!!!!!
マジで素晴らしいカットだと思う。
この辺の足元カットは冴えてて好き。
「僕を信じてくれないか」

日向坂四期生定点観測

 日向坂四期生がお披露目されたのは2022年9月21日、ティザーにより12人の新メンバーの存在を明らかにした上で翌日から個人ティザー、そして『ブルーベリー&ラズベリー』を発表するという流れでした。「似てるような全然似てない僕たち」と歌っていた彼女らも今ではその個性をいかんなく発揮し日向坂46の一員として同じ目標に向かって突き進む、そんなフェーズに入ってきたかなと思っています。とくにおもてなし会→ひな誕祭を経ての四期生の成長は目覚ましく、徐々に増えてきた個人仕事やブログの充実度、あるいは「ひななり」における経験が四期生たちをより一層アイドルにしている、という段階かなと。個人的にはもっとライブで見る機会がほしいので、四期生ZeppツアーもしくはTIFに出てほしい。アットジャムでも。とにかくライブの場数がほしい、しせっかくいいパフォーマンスする子たちであるということが伝わっていかないのは勿体ないなと思っています。

 そんな四期生の加入にあたって加入前後の時期のグループ状況を振り返ってみると、約束の卵を3月に実現しその後渡邉美穂卒業を経て次の日向坂とは…?という方向性を模索している時期だったかと思います。所感として「日向坂」としてはそこから引き続きいまも模索が続いているタームだという認識ですが、ここを一つ突き抜けるため、そして「日向坂」自身が続いていくための四期生加入、だったとわたしは感じています。「魂の形が日向坂」な子たちがいればそれは日向坂なんだよというか。この規模のグループが「続いていくこと」自体本来凄いことで、わたしは日向坂というグループが好きだし続いてほしいと思っているからこそ、その向き合い方には日々模索している段階です。正解なんてわからん。『Am I ready?』だって意欲作だと思うし。要は「僕を信じてくれないか」というわけです。1〜3期生のお姉さんたちは道を切り拓き、四期生は先輩が切り拓いてきた道をなぞりつつも自らのレーゾンデートルを高らかに歌い上げている。思ってたよりもずっと四期生たちは頼もしくなったなあ、と感じた一作でした。

おわりに

 というわけで、『見たことない魔物』について書いてみました。速度重視。このあとがき部分はかほりんSHOWROOMを観ながら書いてます。歌い上げたあとニヤニヤしてるのかわいい。と思ったらこにしがやってきて脳が溶けている。たすけてください。こにかほチャンネル最高になってる。また書きます。それでは。(SHOWROOMに集中します)

おまけ/参考

ただ好きな夏曲を貼るコーナーです。

あと直近のSKEの新曲普通にすき

そしてわたしの推しグループことfishbowlの新曲、その名も『八月』。作詞作曲は梅澤美波さん個人PVの『梅色』やFRUITS ZIPPERの『わたしの一番かわいいところ』を手掛けているヤマモトショウ。

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