子どもの感情のコントロール

子どもが癇癪、パニック、泣き叫ぶなどの感情の混乱状態をおこすわけ

発達が凸凹の子どもはその認知機能が弱いことから
  どうにもおさまらない癇癪
  泣き叫ぶ
  パニック
  逃げ回る
などを起こすことがあります。

 お母さん方に聞いても、「癇癪に苦労しました」「幼稚園にお迎えに行くと一人ハイテンションになっていて、なかなか帰る気にならない」「なにかの拍子に急に暴言を吐いて教室を飛び出す」など、お子さんの感情のコントロールに困っておられる様子が見られました。

なぜ、子どもは急に癇癪を起こしたり、暴言を吐いたり、急に飛び出したりするという感情の混乱状態が起きるのでしょうか?

それは、子どもが不快な感情を持っているからです。
          ↓  
       不安・恐怖・痛い

この不快感情(不安・恐怖・痛い)が起きたときに
 不快感情を受け止め、和らげる→子どもの安心感、安全感が起きてくる
 不快感情が受け止められない → 安心感、安全感が得られない
               →  過覚醒反応・ 一次解離反応
を示すことになります。
※過覚醒反応とは
 きわめて攻撃的、多動であり、どうにもおさまらない癇癪を起こし、
 暴言を吐き、パニックになり、逃げ回るといった、とても扱いにくい状態
 になる。
※一次解離反応とは
 感情をフリーズさせ、痛くない、怖くない、寂しくないという状態を
 実現する。
 身体の現実を否定することで、大人に適応することを選択できた状態で
 ある。

感情の混乱状態を治められるわけ
では、どうすれば、大人は子どもの不快感情を受け止め、和らげることができるのでしょうか?
それは、一言で言うと

子どもの不快感情を大人が声に出して言うことです。
そして、その不快感情を否定せずにあってもいいことだと
子どもに伝えることです。

例えば、子どもが泣いたりぐずったりしたときに
 お母さんが子どもの不快感情を言語化し、抱きしめることを通して、子どもに安心を与えます。「よしよしよし」「おっぱいほしかったねぇ」「ねんねしたかったねぇ」など、子どものリズムに合った声かけと行為を行います。
 子どもの脳の中には痛みや不快を和らげる鎮静物質などが分泌され、安心によって不快感情をおさめた状態になります。子どもの不快感情が言語化されることにより感情が社会化されるプロセスが進みます。このような安定した親子間の中で、子どものネガティブ感情は自身に統合され、感情のコントロールの力を獲得し、他者への共感性も発達していくものと考えられています。

 その一方で、例えば、子どもが転倒したときに「泣いたらダメ」「ぐずってはいけない」「痛くない」と言って子どもの感情を抑えたとき 
 子どもの反応として不快感情が否定されるので子どもは危機におちいり、過覚醒反応が生じます。また、過覚醒反応がエスカレートすると、一次解離反応を起こすようになります。

 ないことにされた不快感情は、自己に統合されず、感情のコントロールができない状態になっていくのです。

感情の社会化とは
 
 子どもが、自分が体験した感情を言葉で表現することができるようになるプロセスを
「感情の社会化」と言います。それは大人とのコミュニケーションにより実現していくものです。

 例えば2歳くらいの子どもをブランコに乗せて、ゆらゆらさせるときゃっきゃっと大喜びします。そんなとき親は自然に「楽しいねぇ」「気持ちいいねぇ」と声をかけます。このようなコミュニケーションを通して、子どもは自分の感覚や感情が「楽しい」「気持ちいい」という言葉(記号)に結びつくという学習をしていきます。感情は言葉と結びつくことによって、他者にそれを伝えることができるものになります。これを「感情の社会化」といいます。

 しかしながら、怒っている、悲しい、寂しい、不安だ、くやしいなどの不快感情については「感情の社会化」のプロセスをたどることが困難になっています。

 2歳の子どもが砂場で夢中になって遊んでいるときに、他の子がやって来てスコップを借りて持っていってしまいました。スコップをとられた子は、大暴れで砂をまき散らして怒りを表現しました。。これは同然の反応ですね。

 この場面で大人はどのような声かけをするでしょうか?
 
 多くの場合は「もう泣かないの」「怒らないの」「こっちのスコップを使えばいいでしょう」「みんなで仲良く遊ぶの」などの声かけによって、感情をおさめようとします。しかし、感情が社会化されるためには「悔しかったねぇ」「いっぱい怒ったね」「いやだったんだね」と子どもの身体にわいてきた感情を大人がくみとって先に言語化するというコミュニケーションが必要になります。

 多くの日本人はたとえ2歳であっても、不快になった時に不快を表現することは良くないことだと考えています。そして、それを親がおさえる声かけをすることになっています(同調圧力ですね)。その結果、子どもは不快感情は出してはいけないと学ぶのですが、自分の身体にあふれてくる不快をどう表現すればいいのかは学ぶことができず、ただただ抑え込むことを学ぶのです。

 発達のプロセスで重要なことは「身体が感じている感情を発し、大人にその感情を承認され、言語化され、安心する」ことである。

つまり、

感情のコントロール機能の育成方法
  身体が感じている感情 → 大人に感情を言語化される  → 安心する

ことなのです。

 これらの「感情の社会化」ができてくる過程で、親と子どもの基本的信頼関係が作られていきます。基本的信頼関係を平たく言うと「子どもが困ったときに親の顔を見ると安心する」と言うことです。
この関係性の重要性は、乳児から青年に至るまで一貫しています。この関係がゆるぎないものであれば、「不快感情を安全に抱える(=感情のコントロールができる)力を身につけて、安定した大人へと成長することができるのです。
ただ、それは「結果」であって、子育て中には、親子は泣いたり、怒ったり、悩んだり、心配しながら、お互いに育っていくのです。

 このように、子どもが生まれておむつが濡れたら泣く、お腹がすいたら泣く頃から、大人は子どもの不快感情をくみとって言語化し、子どもの不快感情を受け止め安心させることが大切です。

 しかし、それができなかったお母さんもいるかもしれません。それでも大丈夫です。今からでも十分に間に合うのです。

 それから、子どもが不快感情を持っているときに、毎回、お母さんが温かく子どもを抱きしめ「困ったんだよねー」「〇〇がしたかったんだよねー」とできないこともあるでしょう。上にも書いたように、子育て中にはいろいろな感情が親子ともども出てきます。毎回毎回、子どもの不快感情が受け止められなくても大丈夫です。子どもの不快感情を受け止め、言語化していくことが大切だと分かっていれば、きちんとできることもあります。

 発達が凸凹であれば、感情の社会化は定型発達のお子さんよりは遅いかもしれません。でも、必ず成長はしていきます。
そして、お母さんが温かく接する時間が増えれば、子どもは落ち着きますから、お母さん自身も子育てが楽になっていくことでしょう。
 
 今日得た知識は、頭のどこかに置いてもらって、毎日の子育てにほんの少し生かしてもらえればと思います


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