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どうやらGK林卓人のすごさがJリーグにバレてしまったらしい

2018年2月・3月のJ1月間MVPにサンフレッチェ広島のGK林卓人が選ばれました。初受賞です。やったぜ。選考理由については次のとおり。

2、3月度「明治安田生命JリーグMastercard priceless japan 月間MVP」決定 明治安田生命J1:林 卓人選手(サンフレッチェ広島) 明治安田生命J2:オナイウ 阿道選手(レノファ山口FC)

<Jリーグ選考委員会による総評>

●明治安田生命J1 林 卓人 選手
2、3月は5試合1失点という安定したパフォーマンスが光り、首位に立つ広島を支えている。第3節の鹿島戦では相手FW金崎のPKを読みきり、続けざまのピンチも体を張って防いでチームの完封勝利に大きく貢献。安定したセービングからくる自信が構えの良さ、備えの良さにも繋がっており、決定的なピンチを幾度も防ぐ活躍が認められMVPに選出された。

鹿島戦ではPKストップばかりスポットが当たっていますが、前半にペトロジュニオールのシュートをストップしていなかったらあっさり敗戦していたと思っています。

PKストップは確かにすごいことなのですが、上記ように他のデータでも1位となっており、納得感のある選考ではないかと思います。

本日は、2015年に圧巻のパフォーマンスでチームを優勝に導いたにもかかわらずベストイレブンに選出されない程のステルス性能を持ったNINJA林卓人にJリーグが気付いたことを記念して、林卓人のすごいところをみんなに知ってもらおうと布教させていただきます。

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①林卓人について知ってほしいこと⑴安定感

GKにもそれぞれ特徴があります。例えば浦和レッズの西川周作はその卓越したキック精度、横浜マリノスの飯倉大樹はその広いカバーリング能力、ジュビロ磐田のカミンスキーは準備のうまさ、柏レイソルの中村航輔などはその反応スピードの速さ…などなど。勝手な印象ですが。

では林卓人の強みとは何か。それは2つあって1つは安定感ではないでしょうか。GKのデータは全然公表されていないのでFootball LABのデータを集計してみました(黄色が1位、緑色が2位、水色が3位)。

セーブポイントなどの定義についてはややこしいので割愛しますが、要するに過去6シーズンは9割以上の試合に出場し、各種ランキングで上位に位置している。Jリーグを代表するGKであることは間違いないでしょう。

データとは対照的に、実際に試合を見ていると実はスーパーセーブはあまり多くありません。ただ淡々とシュートを正面で止めるGK。それが林卓人です。そういう意味でも安定感のあるGKなのだと思います。

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②林卓人について知ってほしいこと⑵PKストップ

今回もそうですが林卓人はPKストップで話題になることが多いGKです。PKストップの要因を聞かれると大体いつも次のコメントをしています。

柏vs広島の選手コメント(明治安田生命J1リーグ:2018年4月8日):Jリーグ.jp

難しいですね。見て、最後は感覚的というか、ぎりぎりまで動かないで、相手をどれだけ迷わせられるかの勝負。最後は相手の(軸)足の入り方とかを見て、自分の直感や感覚を信じた感じです。

広島サポにとって林卓人がPKストップすることはあまり珍しい光景ではありません。ありませんがすごいものはすごいです。

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③林卓人について知ってほしいこと⑶目標

林卓人のもう1つの強みは意識の高さだと思います。日々の試合・トレーニングにおける意識が非常にプロフェッショナルなのです。

【広島 vs 横浜FM】 ウォーミングアップコラム:2連続PKストップを成し遂げた最高の守護神・林卓人は、満足できない男でもある

テレビの実況や解説の人が“このシュートはGKにとってはノーチャンス”というじゃないですか。あの言葉、めっちゃ嫌いです。ノーチャンスのシュートがあるのなら、GKなんている意味がない。どんな状況でもどうにかするのがGKの仕事。素晴らしいシュートに対しても、どうすれば手が届くのか。とめられるようになるのか。そう考えて、トレーニングしている。それはたとえ、クリスティアーノ ロナウドのシュートだって同じこと。絶対に止められないシュートなんて、ないんです

このように普段から全てのシュートを止めるという意識でトレーニングを積んでいる。常識的に考えればそれは高すぎる目標ですが、それを目指しているからこそのパフォーマンスだと思います。

【広島 vs 横浜FM】 ウォーミングアップコラム:2連続PKストップを成し遂げた最高の守護神・林卓人は、満足できない男でもある - J's GOAL

自分自身のプレーにしても、まだ2015年のレベルにようやく戻ってきただけ。これが自分の水準。もっともっと、積み上げたい。楢﨑正剛(名古屋)、川口能活(相模原)、そして下田崇を上回る日本のGKは出てきていないのが現実。サッカーの質やGKに求められていることは変わっているが、シュートを止めるということに関しては、3人の先輩方は本当にすごいから

林卓人の目指すところは上記の3人だそうで。まだまだ貪欲に成長しようとしているところがまたすごい。

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④林卓人について知ってほしいこと⑷広島愛

ここまではサッカー選手としての林卓人のすごさですが、一人の人間としても素敵なところがいっぱいあるということを知ってほしい。

林卓人はサンフレッチェ広島でプロデビュー。しかし、前述の下田崇という厚い壁を破れずコンサドーレ札幌へ移籍。その後ベガルタ仙台で主力となり、2014年に広島へ復帰しました。その時のコメントがこれ。

林10季ぶり復帰“広島愛”で3連覇/サッカー/デイリースポーツ online

晴れ晴れとした表情で登壇した。10年ぶりの古巣復帰。林は「去年12月半ばに話をもらった。嫁も泣いていたし、言葉にいい表せないほどうれしかった」と新人選手のように目を輝かせた。
(中略)
復帰には自身の成長を広島関係者へアピールすることが不可欠だ。「広島戦でいいプレーをすれば関係者に見てもらえると思った。いつも以上に気合が入った」。闘志を燃やしピッチに立ち続けた。

他サポにとってはどうでもいいことかもしれませんが(特に仙台サポや札幌サポにとっては微妙かもしれない)、広島サポとしては涙が出るほど嬉しい話でした。西川周作という高い壁を無事乗り越えて広島の守護神となったことをとても嬉しく思います。

こっちが泣くわ。

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⑤林卓人について知ってほしいこと⑸チームメイトとの接し方

8試合でわずか2失点の驚異的堅守。広島・林卓人「動かぬ」守護神哲学。 - Jリーグ - Number Web - ナンバー

自分から動かなければDFもちゃんと寄せてくれる。ビッグセーブというよりは、チーム全体で守った守備なんじゃないかなと思います
【サンフレ 男気の証明】 林卓人選手 Vol.7|広島の地域生活情報サイト【リビングひろしま.com】

ボールの軌道に、素早く反応する林選手のプレーに話が及ぶと、「高い能力を持ったディフェンスの選手に、いつも助けてもらっているから」と、チームメイトとの連携の良さを強調します。

林卓人に欠点があるとすれば、失点したときは自分のミスだと責めるくせに、ナイスセーブがあったときはチーム全体での守備の成果とみんなを讃える謙虚すぎるところでしょうか。

【広島】林卓人の復帰戦。仲間であり、ライバルであるGK陣に表した感謝と敬意 | サッカーダイジェストWeb

実はミックスゾーンで林は「久々の先発だったが、パフォーマンスはどうだった?」という質問を訊かれている。それに対して「僕自身の前に」と真っ先に仲間への気持ちを話したのだ。林という選手の、GKとしての矜持を垣間見た気がした。

こういうところは尊敬する下田崇とはまた違った一面のようにも思います。下田崇はやはり孤高の人というイメージが強かったので。PK止める度に顎を触られるところとかも周りに愛されている証拠でしょう。

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⑥林卓人について知ってほしいこと⑹今シーズン好調な理由

月間MVPを獲得したことからも明らかなように、今シーズンの林卓人は好調です。チーム全体として意思統一ができていることも要因の一つでしょうが、それ以上にコンディション調整の方法を変えたそうです。

ゴールを守るベテラン守護神の林卓人が新たに描く、 再起へのストーリー | 広島アスリートマガジン

チームはJ2降格を免れたとはいえ、昨季は満足いくシーズンではなかったと思います。また林選手ご自身も8月途中に手術をして、チームから一時離脱されました。昨季を振り返ってみて、どのような1年でしたか?

「これは、昨季だけの話ではありませんが、僕の中でサンフレッチェに加入してから、もっと自分自身をレベルアップさせたいと思って過ごしていました。とにかく夢中になってトレーニングをしていたのですが、今思えば、当時自分が目指していたことは間違っていて、それが昨季の個人的なパフォーマンスの低下につながっていたんだと思います」

昨年はヘルニアで離脱するなどチーム状態だけでなく不本意なシーズンだったと思います。今シーズンはリラックスすることを意識しているそうで、自分の身体を見つめ直したことが、高パフォーマンスに繋がっているのでしょう。

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そんなこんなで林卓人布教回でした。W杯イヤーですからチームとしてどういう結果になるかは分かりません。ただ、林卓人がベストイレブンに選ばれることは強く願っております。

サポートして頂いた金額は、広島のスタジアム建設募金に全額寄付する予定です。