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銚子は琥珀の産地

 あまり知られていないのですが,銚子は琥珀(こはく)の日本三大産地の一つです。

 岩手県久慈市,千葉県銚子市,福島県いわき市が三大産地で,このうち久慈が最も有名ですが,銚子も貴重な産地です。


 銚子駅から犬吠埼に向けて自転車で直進すると,途中に粟島台(あわしまだい)遺跡があります。この縄文時代の遺跡(6000年前~3000年前)からは,多くの琥珀製の装身具とともに琥珀の原石や加工途中の琥珀の破片が出土しており,この場所は琥珀供給の拠点だったと考えられています。

粟島台遺跡

 そして,時代が下がって古墳時代,6世紀後半から7世紀には,久慈〜奈良,銚子〜奈良で琥珀が運ばれた交易路(アンバールート)が存在したと推定されています。
 久慈琥珀総合サイト:https://www.kuji.co.jp/story


 銚子の琥珀は日本国内で最も古く,1億1000万年前~9000万年前のものです(久慈の琥珀はそれより新しく,8900万年前~8300万年前)。

 虫入り琥珀は,世界で最も古いものはレバノン産ですが(1億2500万年前),その次がなんと銚子産です(1億1000万年前)。千葉県立中央博物館に保管されていますが,常設展示ではないようです。

世界で2番目に古い虫入り琥珀


 宝石は鉱物が一般的ですが,琥珀は植物由来の特殊な宝石です。
 樹液の中の樹脂がとても長い時間をかけて固まり,化石になったものです。
 樹液の香りに引き寄せられて飛んできた虫などが,粘性の強い樹脂に接触して動けなくなり,それが固まると,虫入り琥珀になります。


 琥珀は,見た目が美しいだけでなく,海水に浮く・火に燃えるという特性も昔から人々を魅了してきました。また,薬やお香として利用されたり,久慈地方では虫除けとして利用されたりしてきました。

 余談ですが,電気を意味する「electricity(エレクトリシティ)」は,ギリシャ人が琥珀を「elektron(エレクトロン=太陽の光のように輝かしいもの)」と呼んでいたことに由来します。紀元前600年頃,ギリシャの科学者タレスが琥珀を毛皮で擦ると羽毛や糸くずを引き寄せる力があることに気づき,静電気がまだ知られていなかった当時は,琥珀に閉じ込められた太陽のエネルギーだと考えられていたのだそうです。


 銚子産の琥珀は,地球の丸く見える丘展望館に展示されています。

地球の丸く見える丘展望館に展示されている銚子産琥珀

 琥珀は,久慈ではお土産として買うことができますが(私の職場の机にも小さな久慈産琥珀を飾っています),残念ながら銚子では産出量が少なく,売られていません。
 ご自身で海辺を探して頂くより他にないのですが,耳寄り情報としては,犬吠埼灯台の南側の酉明浦(とりあけうら)が「古来有名な琥珀の産地」で,「台風直後に,波で砂が引いたときに見いだしやすい。そのときには,漂流琥珀採取の可能性もある」とのことです(銚子市教育委員会編「粟島台遺跡-銚子市粟島台遺跡1973・75年の発掘調査報告書-」396頁)。ネットを検索してみると,実際にその辺りで琥珀を発見した方がいらっしゃるようです。
 なお,「自然公園内では石を一個でも持ち帰れば違法」と書いているサイトもありますが,採掘などではなく漂流琥珀を拾う程度であれば法的には問題ありません(自然公園法20条9項5号,同法施行規則12条19号。銚子土木事務所にも電話で確認済み)。


 1億年前の自然や縄文時代・古墳時代の人々を想い浮かべながら銚子の海辺をのんびり歩いているうちに,ひょっとしたらいつか琥珀に出会えるかもしれません。

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