柴犬チョロと兄ちゃん

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柴犬チョロと兄ちゃん

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柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#7

    ー 兄ちゃん ー 「はい、チクッとしま~す。手先しびれないですか?」と男性看護師が患者さんに尋ねる。 「ええ、大丈夫よ。」患者さんは手を開いたり、握ったりして確認しながら返答した。 男性看護師は点滴をつなげ、滴下の速度を調整し、定期的に様子を見に来ますと伝え、次の患者さんのところへ移動した。 しばらくして、仕事がひと段落つき、「休憩いってきまーす!」と詰所のスタッフに声をかけ、休憩ルームで昼食の用意をし始めた。 15分程で食べ終え、微糖コーヒーをゆっくり味わう

    • 『おやすみなさい』柴犬

      • 柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#6

        トテトテ…と非常に小さな足音を立てながら、幻獣の女王ディア・ムーンから一時離れ、チョロは執事バートラについていく。 ごはんが食べられるのを楽しみに感じ、ちょんとした尻尾をクネクネさせながら歩く。精神犬齢は18歳であるが、姿は幼犬(正確な年齢は不明、おそらく生後1か月)であるため、まだまだ歩行はおぼつかない感じだ。 しかし、そこは問題ないとばかりに前世の記憶がなんとか身体をうまく動かし、おぼつかないなりにも歩けている。たまに前足がすべり、後ろ足の股関節が開いて、おなかがポテ

        • 『行ってらっしゃい』柴犬

        柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#7

          柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#5

          チョロは口のところがどうしても気になって、アグアグしたり、口を開けながらくちゃくちゃ舌を動かしている。身体も前足を交互に上へ上へと出して、足掻いてみせた。 人間の声でしゃっべっている事実と変化に動揺している様子。 老婆「ほぉ、ほぉ、ほぉ、そのうち慣れてくるさ…」とチョロが落ち着けるように穏やかに話した。 (うんんん…うんんん…頭でこんなに今まで人間の言葉を使っていたのに、いざ声に出してみると、すごい違和感がある。しかも、流暢に『しゃべった…わたし』なんて恥ずかしすぎる)

          柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#5

          柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#4

          (おばあさんに名前つけてもらったけど…兄ちゃんからすでに【チョロ】と呼んでもらっていたから、なんか変な感じ。でも以前の私のままでいていいんだって思えるから嬉しいや) 柴犬チョロは口角を上げ、ニコニコさせるような顔で老婆を見ながら、尻尾をフリフリと動かす。 老婆「あんた、喜んでるのかい。あはっはっはっはっ」 「しかし、尻尾を動かすのはあんまり上手くはないわねぇ~。」 「久々に癒されたよ。ありがとう。」 チョロ「うぉぁーん、ぅん(私こそ、ありがとう)」 老婆は背もたれのい

          柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#4

          コロコロの小さな柴犬

          コロコロの小さな柴犬

          柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#3

          「ふあぁぁ…ほ、ほ、ほぉ~」老婆はあくびをした。 同時に「くわぁ~~おぉぉん~~」と大きく口を開け、舌をペロンと出し、盛大に小さな柴犬もあくびをした。くちゃくちゃと口を動かし、まだ眠たそうな感じである。 お互いに目が合った。 「お前さん、いくつだい?」と老婆が尋ねる。 「・・・」 伏せの状態から少し頭を声のするほうへ上げ、老婆の顔をじっくり見るように表情を読み取ろうとしている。 しかし、人間の言葉を出す手段がない。犬ならば当然か…と。 コロコロの小さな柴犬は『私は

          柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#3

          柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#2

          火だ。 パチッと音をたてて統一感のない形で燃えている。真っ暗闇の空間で明かりの役割を担っている。 そばには背もたれのいい椅子に誰かが座っている。ゆらゆらととてもゆっくりな動きで椅子を揺らしている。どうやら眠たそうな感じだ。 赤いフードを被っているので、鼻の上半分ははっきりしない。服はこれまた赤いロープを着ている。全身赤のコーデだ。口や手の部分でしわが多いことから老人だと判明。 どこからかテクテクと足音をさせて、暖炉の暖かい明かりに釣られるようにして小さなコロコロの生き物が暗

          柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける#2

          柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける♯1

          「に、兄ちゃん…」 「どこ?」 ひとつの命が尽きようとしている。 「苦しい…すごく…息が…はぁはぁ」 「兄ちゃん…」 兄ちゃんと呼ばれている人物は自分の家族である老犬を抱きかかえる。 椅子に座り、呼吸するのがやっとの彼女を優しく膝元にのせる。 何度も何度も茶色のモフモフの毛をなでる。 あぁぁぁ------。彼女は最後の力で目を大きく開き、兄ちゃんへ声をかけようとするが、もはや犬らしく鳴くことができない状態だった。なんとか答えたいと必死だった。 「はぁ…兄ちゃんの…に

          柴犬チョロは異世界へ行くけど、夢の中で兄ちゃんを癒し続ける♯1