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続きのない話#529:グレイマン読破!(1739/1000)

グレイマンシリーズの既刊12巻20冊、ほぼ3ヵ月で読了!
読書会や読みたいラジオなど読まねば本が何冊もある中でたどり着いたよ!

グレイマンとは、尊敬する北上次郎が「二十一世紀に冒険小説の神が降りてきた」とまで褒めちぎっていた作家、マーク・グリーニーが書いた物語の主人公のニックネーム。

黄金の80年代、北上次郎が紹介しまくった冒険小説を貪るように読んで読んで読んでいたものです。
日本の作家だと、志水辰夫も北方謙三も船戸与一も逢坂剛も佐々木譲も原寮も大沢在昌も稲見一良も高村薫もなんなら影山民夫までも。
海外作家なら、アリステア・マクリーン、ジャック・ヒギンズ、ギャビン・ライアル、A・J・クィネル、ルシアン・ネイハム、デズモンド・バグリィ、ロバート・B・パーカー、ジョン・ル・カレ、ロバート・ラドラム、ジェームズ・クラムリ―、ディック・フランシス、ボブ・ラングレー、トレヴェニアン、スティーブン・ハンター、ドン・ウィンズロウ、ウィルバー・スミス、クライブ・カッスラー、ディーン・R・クーンツ、ロバート・R・マキャモンなどが順不同で思い出される。
どれもこれも血沸き肉躍る物語で、徹夜で読む、なんてこともざらにあったな。ワタクシが若かったこともあるけど、なによりグンバツに面白い本ばかりだったから。

ところが2010年代には日本冒険作家クラブが、続いて日本冒険小説協会が解散し、冒険小説の領域がぐいんと狭まったのだね。かつてのSFの隆盛と衰退が彷彿とされて寂しい思いをしたものでした。

それでも本は無限にあるから読むものに困っていたわけではないけれど。
たとえば一昨年は北方大水滸伝51冊を集中的に読み、昨年は伊坂幸太郎の全文庫41冊を読み、といった具合に。
もちろんそれ以外にも読まなくてはならないし、読みたくもなっちゃうし、と、かなり読んではいるので、安心してください。読み物多様性はある程度達成されております。

で、マーク・グリーニー。
1巻目の「暗殺者グレイマン」は3年前の暮れ、入院しているときに読んだ。その面白さにコーフンして、入院患者にはあるまじき血圧になっていたほど(多分)。やっぱり北上次郎の目は確かだ!
直後に山本幸久(この作者も北上さんのお気に入り)を読んでクールダウンしたものの、ほどなくして2巻目の「暗殺者の正義」にも手を伸ばした。
こちらは帯に北上次郎コメントが掲載されており、「翻訳ミステリーの今年のベスト1だ。多分年末まで待ってもこれを超える作品は出ない」なんて言ってます。(このコメントの初出は「本の雑誌2013年7月号」だから、原稿を書いたのはおそらく2巻目が刊行された直後の5月アタマくらいでしょう。なんとも凄みのある断定ですよね)
で、読んでみると、これがまた素晴らしき内容!

と、自分自身でも太鼓判を押せるシリーズだった。
のだけれど、なんとなく「読むのは今じゃない」という気分になりまして。その時点での既刊はすべて購入し、その後も新刊が出るたびに本棚に並べていたのだけれど、去年まで完璧積ん読状態。

昨年暮れ、久しぶりに新刊の第12巻が刊行されたので、すぐに購入したところ、書店にチラシが置いてあるじゃないですか。

担当者が編集長を騙して勝手に作ったのではないか? と思わせるような、この脱力系チラシ、見ているうちにじわじわと楽しくなってきて。
ちなみに裏はこんなです。

うーん、シリーズ12巻をこんなにつまみ読みしていいのかね? 特快なんて3巻でいいんだよ、最新刊まで。
とはいえ「暗殺者の屈辱」に力を入れていることはよくわかる。きっと物語の節目になる巻なんだろうな。

というのがきっかけとなり、いよいよ今年の1月からグレイマンシリーズを手にすることに決めたわけ。
1巻目「暗殺者グレイマン」を再読。おお、3年前と変わらぬコーフン。やっぱり面白いじゃないか~。
それから次から次へと読み進んでおりますが、すべて同工異曲ならぬ異工異曲といいますか。
各巻工夫を凝らした設定と豊かなアイディアとで、主人公のグレイマンをこれでもかとばかりに絶対絶命のシチュエーションに置きまくる。普通の人なら1巻の途中で死んでしまってもおかしくないくらいの凄絶壮絶ぶり。

主人公のグレイマンは暗殺者という設定なのに(そして文字通り殺しまくっているのに)、物語にはダークな味わいがなく、主人公にムリなく共感させられることに驚く。
だから12巻20冊(5巻目からすべて上下巻になるので)、しかもそれぞれかなりページ数があるにも関わらず、次から次へと読みたくなるのじゃよ。

シリーズが長く続くと、自作を模倣したりするようになりがちだけど、グレイマンは違いますよ。なにしろどんどん尻上がりに面白くなるのだから。
なにしろ昨日読み終わった12巻「暗殺者の屈辱」下巻が、これまでのベスト巻ですからね。

紙の本は手に持ったとき、残りのページ数が分かるじゃないですか。
12巻下巻では、その残り1/10くらいの時点でも、「え? 残りわずか数10ページなのに、まだ物語を広げているよ。それで全部回収できるのか???」と読みながら心配するほど、ぶ厚い展開がある。
さらにクライマックスシーンでは、あまりにドキドキするので一気呵成に読み通すことができず、段落ごとに一休みしてコーヒーを一口飲み、宙をにらんで今後の展開を想像し、こわごわと活字に目を戻す、なんてことを繰り返しておりました。
いやもうホントに大傑作(なんてなかなか言いませんからね)!

とはいえ、北上次郎はこんなことも書いている。
「ぼくは現代の冒険小説として、グリーニーがいま読めるということにとにかくびっくりした。ただ、冒険小説を好きじゃない人には、なぜ北上さんが興奮しているのかわからないと言われたから、冒険小説好きにだけ薦めるようにしてる(笑)」
まったく同感。
冒険小説に関心がない人だと、読んでも愉しくないだろうな、とワタクシも思いますです。

それを見極める方法はただ一つ。
1巻目の「暗殺者グレイマン」を読んでみること。
途中で投げ出すようなら(それは決して悪いことではなく、単なる相性の問題なので気になさらずに)、それ以上グレイマンの世界には近づかない方がいい。

でも、もしも。
読んでいて巻を措く能わずというゾーンに入ったら、悪いことは言いませんから全巻読破を熱烈オススメします。とにかく12巻下巻までたどり着いて欲しい。そして語ろうじゃないか、グレイマンを!

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