見出し画像

仲間ログ#84:本の中の夏服のサマードレスの女たち(398/1000)

いにしえの昔の武士の侍が、山の中なる山中で馬から落ちて落馬して。
重言は忌避して避けるべきだと言われるのを聞いても、面白くて好きだよ。

先月に続いてZoomで開催したBookトライブはなんと50回目。
2016年4月から初めて、月イチ開催で4年と少し(途中何度か中止したことがあるので計算は合わない)。友人たちと本を読むことがこんなにオモチロイことだとはねえ。

今回取り上げたのは「夏服を着た女たち/サマードレスの女たち」です。ご存知アーウィン・ショーの有名な作品を中心にした短編集。
常盤新平が訳したものが「夏服を着た女たち」。「サマードレスの女たち」は小笠原豊樹翻訳。
原題は「The Girls in Their Summer Dresses」。

なにを読むかを決めるのは前々回なので、6月の回のとき。
誰だっけかな「夏服を着た女たち」はどう? と言ったのは。昔好きだったなあ、いい話だった、と思って賛同したのでした。
自分の中では、ニューヨークを舞台にした爽やかなラブストーリーという記憶だったので、暑い日に清涼剤のような物語をみんなで読もう、と思ったんだった。

しかし。
十数年ぶり(数十年ぶりかも)に読み返したら全然違った。若い夫婦の会話をスケッチした、アイロニーに満ちた短編でした。
しょーもない男(マダム評)とそれを許す女性。爽やかとは言い難い。けど、どこかカラリと乾いた風も吹いている。
日本を舞台にすると、湿度の高い演歌のような味わいになるのではないかな。でもこれはクール。この作品の時代から20年ほどくだってマイルス・デイヴィスが「クールの誕生」を作った素地がここにあるような気もします。
個人的にはラストの1行がしょーもなさを普遍化して、永遠の作品になったのではないか、と思います。記憶と違ったけど、好きな気持ちは変わらなかった。

昨晩は作品そのものもさることながら、この作品をきっかけにそれぞれに親との距離の取り方を披露しあったのが印象的でした。
きっかけはエスねえ。
「実はこの短編集は、私がはじめて母親と、親子ではなく、女同士の会話をするきっかけとなった本なのですよね(20歳のころでした)、とても思い出深い本」なんて言われたら、なになに? と知りたくなりますよね。興味深い。
さて、それはどういうこと? と尋ねると。
「子どものころは親の前ではいつまでも子どもでいたほうがいいんだろうなと漠然と考えていたけど、はたちのころ環境の変化があって『おかあさん、私もうオトナなんだよ』と伝えたくなった(概略)」ですって。
ふーむ。趣深い。
人はどういうきっかけで大人になる(と自覚する)のかな。
参加者に聞いてみました。

答えはいろいろ(そりゃそうだ)。
でも、みんなの話はそれぞれ印象的で、本を読むことをきっかけに友人の人生を垣間読んだような気がしたな。
どんなに親しくても、なんらかのきっかけがなければその話題にならないことってありますよね。昨晩だって初めは誰一人、自分と親との関係を開陳することになるなんて思っていなかったでしょう。
なんでもない一言を触媒として心の化学反応が起きる。これもまた読書会の醍醐味だなあ。甘露甘露。

ところでこの短編集、日本独自で編んだものなので、収録作品が異なります。どれほど違うかというと。

「夏服を着た女たち」(常盤新平・訳)(10タイトル)
80ヤード独走
アメリカ思想の主潮
ストロベリー・アイスクリーム・ソーダ
ニューヨークへようこそ
夏服を着た女たち
カンザス・シティに帰る
原則の問題
死んだ騎手の情報
フランス風に
愁いを含んで、ほのかに甘く

「サマードレスの女たち」(小笠原豊樹・訳)(16タイトル)
二番抵当権
墓場の街
サマードレスの女たち
おれはデンプシーの贔屓だ
正義の勝利
保安官の助手
「いざ進め、フィールドへ」
躓きなき、自由な良心
埃まみれの辻説法
エルサレムのメダル
傷ついて彷徨う
アルジェの夜
機銃手の後送
復員兵は思う
ホーキンズ一等兵の受難
いやな話

ご覧のように表題作以外は重複なし!
これはこれでなんだか凄い。どんな思惑があったんでしょうね。
結局2冊は異なった短編集なので、両方読むとよろし、という結論です。

Zoomはそれぞれ自宅で参加するので、次々回のタイトルを決める時、それぞれが推奨する本が手元にあるんですよ。(そりゃ好きだからみんなにも読んでもらおうと思うんだもんね)
なので今回はそれぞれ手に持ってもらいました。

みんなが推奨した次回の候補作は
「10月はたそがれの国」(レイ・ブラッドベリ)
「つむじ風食堂の夜」(吉田篤弘)
「夫婦善哉」(織田作之助)
「トリエステの坂道」(須賀敦子)
「アミターバ」(玄侑宗久)
「春琴抄」(谷崎潤一郎)
さて、10月に読む本は。。。

今回の参加者は、マダム、うっちー、BENさん、オレガ、エスねえ、スカスカ、コンソメ、長老の8人でした。
ではまた来月~。

画像2

課題の本とアーウィン・ショーの本と本。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?