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偏愛食品#39:三時のおやつはカステラ一番!(201/1000)

犬も歩けば棒に当たる、人も歩けばいろいろなものに当たるよシリーズ!
目を開き耳を澄まして闊歩すれば、新たな出会いが待っている~。

銀座を歩いていました。
向島橘銀座とか戸越銀座じゃなくって、銀座中の銀座、中央区銀座3丁目の路地を。

すると店頭のワゴンに「ご自由にお持ちください」と「銀座百点」が置かれているではないですか。

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置いてあったのは1月号。(2月号は別のところでいただきました)

ふーむ、さすが「銀座百点」。錚々たる人たちが寄稿していますねー。
アートディレクションはクラフト・エヴィング商會だって。言われてみればたしかにあの雰囲気だ。(言われないとわからなかったけど。。。)
商業誌並みにお金がかかっているだろうに、これを無料配布しているとは! 
この冊子を、支える/支えられる/支えようという意志がある店がどれほどあるかということですよね。これだけで銀座の街の凄みがわかろうというものです。

さて、パラパラと中身を見ていくと、坂木司さんの「続おやつが好き」というエッセイが載っています。
そういえば「和菓子のアン」、面白かったなあと思いながら読んでみると。

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なんと、カステラ礼讃ではないですか。
しかも、文明堂の、カステラです。

坂木さんも書いているように、「カステラ一番、電話は二番、三時のおやつは文明堂」というコマーシャルソングは、忘れようったって忘れられないほど大脳新皮質にメモリーされています。多くの日本人がそうなのではないかな?
実際にカステラだって何度も食べたことがあります。定番の美味。

でもだからこそ、「文明堂のカステラ」という言葉には、なにそれ? おいしそう! 食べてみたい!! という欲望を励起させる要素はないですよね。おばあちゃんが握るおむすびみたいなもので、おいしいのは分かるけど最新式な味わいがそこにあるとは思わない。

ところが。
坂木さんのエッセイによれば、文明堂、攻めているらしいですよ。
定番だけではなく、たとえば「特撰ハニーかすてら吟匠」という文明堂でいちばんやわらかでかろやかな口どけのものがあり、たとえば「天下文明カステラ」という銀座限定で6,480円もするものもある、とか。

いつもおむすびしか作っていないおばあちゃんが、料理に目覚めてポルトガル料理を作り始めたようなものかな。カステラだけに。
ちょっと違うかもしれないけど。

とにかく文明堂が新しい美味しさを追求していることを知ったわけです。
この攻めカステラがいつから作られているのかは知らないけど、私はこの「続おやつが好き」を読んではじめて知ったのだったよ。
これもまた犬も歩けば、ということですよね。街にはなにかしら面白いこと、新しいこと、興味深いことが転がっている、と。

で、銀座でこのエッセイを読み終わった人がするべきことは、当然文明堂に馳せ参じることでしょう。
しかも限定品があるという歌舞伎座の隣の店に。
その日の朝、銀座に向かうまでは文明堂の「ぶ」の字も考えていなかったのに。

カステラってなんとなくお土産でもらうもので、自ら購入したことないな、なんて思いながら入店。
おお!
まず目に飛び込むのは天下文明。
「続おやつが好き」のタイトル下のイラストのように、焼き印が押してあります。高級ですよ、と言わんばかりに。さすが6,480円!

ほかにも歌舞伎カステラとか歌舞伎三笠山、天下文明バームクーヘンなど目新しいものが山ほどあります。こんなにバリエーションあるんだ~。

さて、お目当ての「吟匠」はいずこ?
お、ありましたありました。
隣には同じ値段で「特撰五三カステラ」が並んでいます。
お店の人に聞いてみたら「吟匠」はハチミツ入りなんですって(だから「ハニーかすてら」なんだね)。
甲乙付けがたいけど、ここは初志貫徹。
「吟匠をください」

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これが吟匠の包装。
ほのかに漂う高級感。
はじめて自分で買ったカステラ。

朝起きたときには、文明堂でカステラ買って帰るとは思いもしなかった。
思いがけないことが起きるのは、常に思いがけないことを受け入れようとしているから。だから街(でも山でもどこでもね)を歩くのはおもしろきことですね。

家に帰って包装紙をはがしてみると。

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どこまでも高級感。
筆文字がさらに高級感に輪をかけている。

もちろんがしがしと包装を剥がし、中身を出して食べてみましたよ。

カステラ断面図

ほう!
このハニー、このやわらか、止めどなく食べられそうな優しい甘味。
カステラといえばもちろんカステラなんだけど、「天国の」と連体詞で修飾してもいいお味じゃないですか。
おいしいね、おいしいね、と家族和やかにいただいております。
おいしいものは間違いなく世界平和に貢献しているよね。

吟匠でこれほどなのだから、天下文明焼き印付きだったらどんなことになるのでしょう?

いつか食べる!
そんな人生の目的まで見つけさせてくれた銀座の街でありました。




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