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仲間ログ#99:中央線の会7「国分寺」(474/1000)

高尾からじりじりと東京駅に向けて中央線の駅を踏破する我々。
駅ごとにすてきな店を見つけては飲む、それが我々中央線の会!

イヌがあちこちの電柱にマーキングして歩くように、我々もひとつひとつの駅に精神的マーキングを施しています。

高尾? ああ、あそこは暑い駅だね(真夏に行ったから)。だからビアマウントで飲む生ビールは最高さ。
西八王子にある「ごんの家」は案外いい店だよ。
八王子は思いの外地元の店がなくって、チェーン店が多い街なんですな、これが。
豊田も日野も駅前にちょっぴり店があるだけで、典型的な住宅街だって知ってる?
立川! いやあそこはパラダイス。店が無限にある。モノレールもあるからモノレール好きには中央線随一の素晴らしい駅なことは間違いない(当たり前だ)。
国立は文京都市だけに学生が多いから安くていい店がたくさんある、と思ったら大間違い。寒風吹きすさぶ中(真冬に行った)、探し回ることになるから、暖かな恰好していったほうがいいよ。
西国分寺は大きな駅ビルがあるぶん、周囲に店は少ないんだなあ。

「中央線の駅ごとに飲んでいるというウワサですが、それぞれの駅にはどんな特徴があるんですか?」
なんて質問された日には、こんな風にぺらぺらと喋ることができます。
もちろん駅周辺の短時間の観察と、1軒の店に数時間いるだけの経験だから、関係ある人たちからすればピントがずれた感想かもしれないけれど。
でも、なんというかそういう極めて個人的で偏頗な決めつけ(ただし悪意はまったく含有せず)は面白いと思うんだよね。

かつて赤瀬川原平が「ルーヴル美術館の楽しみ方」という本で、無数の名画を独特の視点で評しているのを読んだとき、それまでほとんど興味がなかった美術に対して、爆発的に開眼したことがあります。
いや、だって面白いんだもの。
美術の時間にオベンキョーとして教えられた、あのマジメくさった(と感じるのは学校での取り組みの問題なんだなあ、と今では思うけど)絵。それを、「ほら、画面の片隅にこんなへんてこな顔したヤツがいる」なんて路上観察的に、トマソンのように教えてくれるんだから、たまらない。
赤瀬川さんの面白いものを見つけ愉快に表現する技を、げらげら笑いながら読み進めるうちに、ベンキョーの呪縛がほどけ、おや、美術って面白いじゃんとコペルニクス的展開(ってバーが京都にありましたね)が起きたのでありました。

私のコメントを読んで、爆発的に中央線の駅が好きになる奇矯な人がどれほどいるかはわからないけど(いないでしょう、普通)、自分フィルターを通してなにかを言うために人は生まれてきたんだと思えば、駅をたどるたびになにかを言っちゃうのもやむを得ない。あきらめてください。
どの街にも特有のニオイや雰囲気があり、それが店にもなんらかの影響を与えているはず。そう思って敢えてなんの下調べもせず、自分たちの足と目と鼻で店を選んでいる我々は、いよいよ国分寺に降り立ちましたよ。

中央線屈指の歓楽街。
そんなイメージだったけど、意外に(と思われるのは住んでいる人からすれば意外なのかも知れませんが)もおとなしい。ネオンギラギラな歌舞伎町的様相を想像していたのに。(残念、というわけではありませんよ)
中央線は駅の南北に街が広がっていることが多いので、まずは北側を攻めてみます。
道が整然としていない。碁盤目のようになっていなくて、かつて人が歩いて固めた道をそのままアスファルト化したような感じ。人が歩く速度に合わせて道が左右に揺れているのが気持ちいい。歩くのが楽しい。
店が固まっておらず、そこかしこに点在しているのもうれしい。いかにも個人が営んでいる感じ。
暗い道の先にぽつんと光る大きな提灯。それを目指していくと「うーん、ちょっと違うかも」となるけど、すぐそこの角を曲がってみると、また新たな店が顔を出す。
路地から路地へ。
大きな道がなく、クルマより人間が通りやすい道なのもいいですねえ。
とある店に目星をつけたものの、せっかくだから南側も探訪せねば。

南側は国立駅の南側のように、駅を中心に放射状に道が伸びている。けど、あれほど人工的ではなく、自然にぐにゅっと曲がったりしていて好ましい。
ここにも1軒すてきな佇まいの店を見つけたよ。
「戦後、屋台から始めて店を持ち、代替わりしたときに店をビルにしたんだよ、的な店だねえ」
「というふうに見せようとして昨年オープンしたんですよ、とか言われたりして」
と来歴を想像し、その裏をかき、歩く人たちは勝手に盛り上がっていくのです。

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明かりに惹かれて店まで行き、雰囲気をみて入るかやめるかを判断し、街をうろうろ歩く。

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お月様といっしょにうろうろ。

メンバーの一人、O野くんが急遽入った会議で遅れている。
ちょっと待ちつつ一献行きますか。

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間髪を入れず乾杯に突入する会員たち。

歩き回ったから、喉は渇いたお腹も空いた。
欲望の赴くままに注文をする会員たち。

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のれんの奧から恵比寿さまが笑ってる。

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慌てて飲んでがつがつ食べているうちに、なんとなく満足感が漂ってきた。
そんな頃、やっとO野くんが会社を出るという。
「せっかくだから」
「あんなに店をみたんだから」
先ほど満席で断られた店に河岸を変えよう、と衆議一決。

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ここが戦後屋台から始まった店。
(ですか? と店の人に尋ねたら、笑いながら17~8年前にはじめましたと教えてくれました)

O野くんも到着し、改めて乾杯。
こちらは串の店なので36本は頼まないと。

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思いも掛けない店に入って、いつものようにばかな話を繰り広げる。
嗚呼楽しき中央線。
もうお月様もあきれて雲の陰に隠れたかもしれないね。

追伸:見出しの串は「バターライスの串焼き」。
お店の人に、「あんなぽろぽろしてるものをどうやって焼くんだい?」と聞いてみた。けど、答えを知ったらおもしろくないぞと思い直し、「あ、いいからいいから、2本ちょうだい」とオーダーしてみたもの。
そしたらこれがグンバツな美味しさなんだよ! 
バターと醤油とおこげが相まって、全日本人の飲みの締めに最適な一串だと思います。これだけ食べに国分寺行ったっていいくらいですよ、ホントに。





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