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毎日がクリスマスだったら#3:クリスマスストーリーの考察(164/1000)

冬至が終わり、これからは日一日と日が長くなっていきます。一陽来復。
冬至は、まだ寒さは続くものの、春がやってくることが確実になる転回点。

人はなぜクリスマスを祝うのかを考えたことがあります。
半分仕事、半分趣味で。
もちろん全人類の話をしているのではなく(祝わない人だっていますからね)、「祝う人にとっての祝う理由」みたいなことを。
厳然とした宗教的行事だとしたら、日本でここまで広まるわけがない。なんとなく昔からずーっと続けられているような気がするのはなぜなぜなぜ?

いろいろ調べて考えて、こうじゃないかなと思ったことを、以下だらだらと記してみます。

考えてみればキリストが生まれなければキリスト教は生まれないし、ミサという概念も発生しないわけで、おおよそ2000年前の人類(ここは全人類でいいでしょう)は「クリスマスを祝う」なんてことをしたことはなかった。
つまり生粋のキリスト教信者でさえ、どんなに長くても2000年の中で培ってきたにすぎない伝統ですよね。まして今のような形で体系化され意味づけられ祝われてきたのはもっと短いことでしょう。

だのになぜ、歯を食いしばり(歯は食いしばらなくてもいいか)まるでDNAに由来するかのように自然にクリスマスを祝うのだろう。

暮れも押し迫りみなさんお忙しいでしょうから、結論から言うと、クリスマスは人類が太古から連綿と祝ってきたことに新たな意匠を加えたもの。
です、多分。

芽生えの春、緑の夏、収穫の秋を経て、太陽が恵みをもたらす時間は日ごとに短くなる。もしかすると、もう太陽の輝きは戻らないかも知れない。
しかし、その心配を打ち消すのが冬至。
翌日から日が照る時間は少しずつ長くなり、厳しい冬はやがて葬り去られ、温かい春がまたやってくることが確かになる。
この、季節の死と再生を祝う冬至の祭りは古来より続けられていたようです。思いつくままに記すと。

紀元前数千年前。
バイキングは太陽神の誕生を祝うユールタイドという祭りを執り行った。人びとは多いに食べ、飲み、歌い、オーディン神とトール神のために祈り、ユールログという巨大な薪をかがり火にくべた。

古代ローマでは。
種蒔く神サトゥルヌスが慈悲の心で太陽の降下を食い止めてくれたと考え、人びとは冬至の祭りをサトゥルナリアと呼んだ。期間は12月17日からの1週間。
ローマの祝祭の中でも最もめでたく盛んな祭りだった。奴隷には自由が許され、贈りものの交換がなされ、人びとは寛容になったという。

3世紀ごろのローマでは。
太陽崇拝を起源とするミトラ教が発展し、太陽が上り下ることを死者の復活の象徴とした。そのためサトゥルナリアは排斥されず、期間終了直後の12月25日を太陽と真理の神ミトラの誕生を祝う日と定めた。

話はずーんと飛んで1823年。
クレメント・ムーアの『聖ニコラスの来訪』によって、サンタ・クロースは今のような形になり、乗り物のそりは、馬ではなく8頭のトナカイがひくように変わった。

1843年にディケンズが『クリスマス・キャロル』を発表し、クリスマスの時期には善意が満ちあふれるという寓話が定着した。

1931年、コカ・コーラ社の販促キャンペーン用にサンドブロムという画家が描いたサンタが、コカ・コーラ社の公式商標の赤と白の服を着ていたことから、サンタといえば赤と白、になった。

1914年、イギリス軍とドイツ軍が戦っていたクリスマスの日、ドイツ軍は前線の士気を高めるためクリスマスの食べ物を届け、ツリーを飾った。しかしこれは忠誠心より厭戦気分を高め、塹壕のへりにツリーを立て、真夜中には銃撃を止めキャロルを歌い始めた。突然の静寂に驚いたイギリス兵もびくびくしながら合流し、即席の休戦協定が結ばれた。そうしてお互いにプレゼントを交換しあい、翌日には緩衝地帯をハーフラインにしてサッカーの試合まで行われた。これがクリスマス休戦の始まりとされる。

意表をつくところでは、丸谷才一が『忠臣蔵とは何か』で、このように述べています。
「わたしが思ひ描く時間の枠組みは気が遠くなるくらゐ大きいので、平安初期の御霊会よりも遙かに古く、カーニヴァルの祖先らしい古代ローマのサトゥルナリア祭よりももっと昔の、東西における太古の祭りを想像したいのである」
冬至を祝う衝動は、忠臣蔵の中にも連綿と連なっているというスケールの大きな提示をしています。

思いついた例だけを述べましたが、きっと世界各地に同じような祭りはあるのだと推察します。
太陽は光と熱と恵みをもたらしてくれる偉大な存在。再び力を得たことを喜ばないわけがありませんからね。

紀元前、遙かな昔から根付いたこの気持ちがベースにあるから、クリスマスという行事に、宗教的基板が薄い日本人も馴染んだのではないか、と思います。

そうそう、クリスマスストーリーに必要な3つの要素というものがあるそうです。
奇跡と精霊と子ども。

ナルホド。
『クリスマス・キャロル』も『素晴らしき哉、人生!』も、もちろん『飛ぶ教室』にもその要素はありますね。
『ホーム・アローン』だって『ダイ・ハード』だって『ホワイト・クリスマス』だってあるはず。気になる人は要素を探しながら観てみてください。

このあいだ観た『ラスト・クリスマス』もハートウォーミングな作品でした。もちろん要素は満たしていましたとも。

なんだかとりとめのない話になったけど、この混沌もまた太古の昔から続くもの(ホントかな)。
聖なる夜、世界と人生とが少しでも良くなりますように。
メリークリスマス!


あ、説明を忘れてました。
見出しのイラストは、20年以上前モーニング誌上で毎週クリスマスのイラストを掲載していたことがあり、その刷り出しの一部です。(なんと物持ちのいいことか!)
(左上より時計回りに、秋月りす、わたせせいぞう、モーニング表紙(いでるりこ)、小椋冬美、村上もとか、安田弘之、夢野一子)
わたせせいぞうさんの裏に岩館真理子さんのイラストがあり、いっしょに撮影できなかったのでお見せします~。

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