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続きのない話#531:必見! 時をかけるホルモー(1744/1000)

みなさんは「鴨川ホルモー」が舞台化されたことをご存じか。
そう、万城目学のデビュー作がヨーロッパ企画により舞台化されたことを。

私はもちろんご存じである。
なぜなら朝日新聞をとっているから。

本年2月15日の記事をご覧にいれよう。

ちゃんと保存しているのが偉いよね、と自画自賛を挟んでおいて。

これを読んで、びっくりしゃっくり狂喜乱舞しまくり。
「鴨川ホルモー」、もちろん読んでいる、というか大好きだ。
「ヨーロッパ企画」、もちろん知っている、というか大好きだ。
大好き×大好きなんだから、好き好き大好き超愛してる。となるのは舞城王太郎じゃなくたってわかる計算さ。

ヨーロッパ企画が製作した映画、「ドロステのはてで僕ら」も「リバー、流れないでよ」も、大好物。時の流れにあらがうことのできない人間が、時の小さな歪をとっかかりに自分を取り戻そうとする、笑えて泣けて感動する物語なんだよね、どちらも。
佐野元春が「生活といううすのろがいなければ」と歌ったように、「時間といううすのろがいなければ」と奮闘する人たちから図らずもにじみ出るユーモアとペーソス。その配分がたまらなくいとおしい作品だから、観て!

「鴨川ホルモー」は言うにや及ぶロマンスとコメディーとファンタジーの超絶ごった煮名作ですから、この舞台は観ないわけにはいかないわけ。
その日のうちにチケット予約して、待つこと2ヵ月。

芸術劇場と勘違いしていて危うく開演に間に合わなくなりそうだったのを、事前に気が付き無事にサンシャイン劇場へ。(このくだり、いる?)

開演前の舞台装置を見ながら、こう考えた。
あの複雑怪奇登場人物多種多様な物語をどのように舞台化するのだろう?
そして、あの、例の、「オニ」はどうやって登場するのだろう?
とかくにヨーロッパ企画の演出は読みにくい。

舞台が始まる。
冒頭の鴨川の河原のシーンからいきなり物語は動き出し、18人が繰り広げる舞台に魅入られて、あっという間に2時間が過ぎてしまった。

というだけじゃなにも伝わらないでしょうから、ちょっとだけ記すと。
「鴨川ホルモー」と「ホルモー六景」を換骨奪胎して、ひとつの物語に間然とするところなく再構成するヨーロッパ企画上田誠の剛腕ぶりがホントすごい。一人一人のキャラクターが魅力的で、どのシーンも目が離せないから、ダレる瞬間が無いもんなぁ。
またセリフが自然で、そのくせ凝っていてユーモラス。どれほどの回数笑ったことか。
俳優さんたちもこれまたいいんですわ。
ヨーロッパ企画でおなじみの方々の安定したおかしな雰囲気と、主人公たちの青春ぶりの交差が生み出す味わい深い空間は、舞台ならでは。生身の人間が醸し出すグルーヴは、小説よりも映画よりも直接カラダに染みる~。
オニの演出は、なるほど、こうするか、と。
これまた舞台という制限を逆手に取ったもので、うまいことやったなー!

そして、もちろんヨーロッパ企画ですから、時間が重要なファクターとなっている。観終わったあと、もう一度観直したくなる伏線が張り巡らされているので、複数回観る人も多そう。(ちなみに再度の観劇を「追いホルモー」というそうです)

見どころのシーンの一つは、原作でいうところの「吉田代替りの儀」。
男性陣の乱痴気ぶりもさることながら、女性陣のレナウン娘の舞が素晴らしく、可愛らしく、見惚れてしまうしかない~。

いやほんとに素晴らしい2時間だった。
終演後にはおまけトークショーなるものがあり、演者たちが舞台の裏側や表側を語ってくれる。演じる人の素顔と役の顔とが交差して、劇の厚みが増す仕組みが面白いね。観劇後の感激ってやつですか。

あと、パンフレットも素晴らしく。

池袋から湘南新宿ラインで帰る道中、ずっと読みふけっていられた充実の80ページ。劇の思い出にぜひどうぞ(ってすっかりあっち側な気分)。

東京での公演は4月29日まで。当日券もいくらかはあるみたいなので、ぜひご覧くださいな(ってすっかりあっち側な人)。

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