見出し画像

仲間ログ#69:子どもの本委員会、三宅島で教える(233/1000)

朝、三宅島に着いた一行5人。
さあ、いよいよ三宅小学校での出張授業が始まるよ~。

と、その前に腹ごしらえをしなくては。
腹が減っては授業ができぬ。

画像1

我々が泊めていただいているドリアン家の庭には明日葉がわんさか自生しています。
朝いちばんの仕事は明日葉摘みとは風情がありますなあ。
そうして家主が作ってくれた摘みたて明日葉味噌汁。
画像2

5分前まで生きていた命をそのままいただいて、自然のパワーがチャージされました。新鮮だからか苦味はさほどではなく、葉も茎も瑞々しくておいしい一杯だったなあ。

4時間目の授業を依頼されているので、ゆるゆると小学校へ。
玄関に入ると、
おおっ!
こんな歓迎のパネルがありますよ!

画像3

これはうれしいなあ。
橘丸と天然記念物のアカコッコの色の対比がきれいだし、祝祭感と歓迎感が増幅されていますねー。

なんとシューズボックスまでもが歓迎してくれています。

画像4

校長室に招かれて朝のお迎えのお礼をしたり小学校の近況をうかがったりするうちに、子どもたちがお迎えにきました。
さっそく授業、ではなくて、まずは木遣り太鼓を聞かせてくれるとのこと。
ほう、それは楽しそう。

体育館に向かうと全校児童70人余りがお出迎えしてくれました。
大きな太鼓が2台。
まずは男の子がきれいな声で歌い始めます。それから左右に分かれて大きな太鼓を激しく叩く叩く。
太鼓は両面を叩いています。
片方はドンダドンダドンダドンダとリズムをキープし、片方はドン、ドン、ドン、ドドド、と異なるパターンで叩きます。ポリリズムというのか、二つの音が絡み合って複雑なリズムとなるわけですね。

画像5

スナップを効かした瞬発力のある低音が体育館に鳴り響く。
バチを握る手も、叩く際に腰を落とす姿も堂に入っています。小学校に入る前から練習していると聞き、ナルホドと納得。
演奏が進むにつれ、だんだんテンポが速くなってきて、聴いている私たちも高揚してきます。
いやあ素晴らしい演奏でした。
これに応えなきゃと思うと緊張するなあ。

一度校長室に戻り、待機。
ここからは担当学年に分かれてそれぞれの教室に向かいます。
ちなみになにをするのかというと、こんな感じです。
1・2年生は、ドリアンさんがボブ・ディランの絵本の読み聞かせを、
3年生は、M咲さんがオルガンで語りと歌を、
4年生は、私が本ができあがるまでとお話作りを、
5年生は、A石さんが俳句を、
6年生は、S藤さんがカナダのネイティブアメリカンの話を。

それぞれその学年の子どもたちがお迎えに来て、さあ、出張授業の始まり!

4年生は12人。一人お休みらしく、席に座っているのは11人です。
おお、見つめられている。
心地よくもあり、緊張もして。

話のテーマは、編集者の役割を知ってもらうこと。
そのため、まず本を作るとはどういうことかを説明し、それから実際に一緒にお話を作ってみるつもり。
持ち時間は45分。さあ、どうなることだろう。

まずは自己紹介をしましょうか。
「私が皆さんと同じ4年生だったのはだいたい50年前」と話したところで目をまん丸にする子もいたりして。まあ自分の両親よりも年上でしょうからね、そんなおじいさんがなにを話すのか、と思ったのかもしれません。

それはそれとして、話を続けましょう。
「出版社に入って、編集の仕事をしていました。
ところで本を作るってどういうことかわかるかな?
たとえばテレビを作るって聞いたら、工場でこのようなテレビ(教室の前にテレビがあったので、それを指して)を作るんだなって思いますよね?
でもこのテレビだけあっても、皆さんは楽しくなりません。なぜでしょう?」

「あっ、見るものがないと見られないんじゃない?」
「そう、そうですね、テレビは番組があるから面白いんですよね。テレビ局が作るのは、テレビの機械じゃなくて中身の番組でしょう?」
「本も同じように、(と、持参した青い鳥文庫を見せて)こういう本の形に作ることも本を作るっていいます。紙に印刷して、綴じて本にして、カバーを印刷して切って本にかけて。でも、それだけじゃ面白くないですよね?
なぜ?」

「お話がないとつまんないから!」
こんなにスムーズにやりとりがあったわけじゃなく、誘導したりなかば答えを言ったりしながらですが、概略こういうふうな話をしました。

「本にのせるお話は2種類あります。
テレビだとニュースがありますよね。本当の話。事件があったこととか、どこそこで花が咲いたとか。それとは別にドラマってあるでしょう? そこではお父さんが怪我をしたとしても、本当にあったことではなく、ドラマの中だけのことだってみんなわかって見てますよね。
それと同じように本も本当の話を書くノンフィクションと、お話を書くフィクションとがあります」

「編集者は、作家がお話を作るのをお手伝いする仕事です。こうすればいいんじゃない? ああしたらいいと思いますよ、というふうに」

と言ってから、お話は起承転結という形で作られていることが多いんですよということを、桃太郎を題材に説明します。

「さあ、これからみんなでお話を作ってみようか」

「ではまず『起』の部分。さあ、物語の最初はどういうのがいいかな? これまでにお話を作ってことがある人はいるかな?」
去年、そういう授業があったよと口々に言い、様々な冒頭のシーンを語ってくれます。
宝の地図を見つけた、という冒頭がなぜか多く、それを採用します。

「次は『承』。どういう風にお話は展開するのかな?」
「誰にも言わないで一人で探しに行く」
「クラスのみんなで探しに行く」
いくつかの意見が出たので、多数決で決めます。
「じゃあ、クラス全員、12人で探しに行くことにしよう」

「『転』はどうかな?」
「どこかの島に探しに行く」
「三宅島の中を探しに行く」
ここも多数決で決めましょう。
三宅島派が7人、どこかの島派が4人。
「では、三宅島の中で探そう」

「三宅島のどこがいいのかな?」
「雄山!」
「雄山!」
どうやら三宅島の真ん中に位置する火山が人気あるようです。
「では雄山に行こう!」

「最後の『結』はどうなるのかな?」
「雄山の真ん中に宝箱があって、それを開けると宿題が入ってる」と聞いたときは思わず笑っちゃいました。さすが小学生。
宝物を探したら、最後に出て来たのが宿題だとはね。しかもまだ続きがあります。
「そのあとにN山先生が両手を広げてぴょーんと飛び出す!」
わはは。
担任のN山先生、子どもたちに愛されてますねー。
しかもその発言があったとき、教室の後ろでやりとりを見ていた当のN山先生が両手をぴょーんとしていました。なるほど、こういうところを子どもは察知しているんだなあ。

と、ここまでで45分をちょっと越えています。
ちょっと見にくいけど、こんな感じで板書しました。

画像7

そして最後にまとめます。
「じゃあ皆さん目を閉じて聞いてください。みんなでこういうお話を作ったんだよ。
ある朝、教室で引き出しの中をみたら、見覚えのない紙が入っていて、よく見たら宝の地図でした。教室のみんなで相談して、一緒に宝探しをすることにして、本当は入っちゃいけないけどこのお話の中では入れる雄山に登りました。するとそのてっぺんに宝の箱があって、それを開けたら、なんと、宿題が入っていて、さらにその後からN山先生がぴょーんと飛び出てきたのです。めでたしめでたし。」
一同にこにこしながら話を聞いていました。

「こういう風にお話を作るお手伝いをするのが編集者なんですよ」
と締めくくって終了です。

その後、一緒に給食を食べることに。

画像6

ここにもアカコッコ!
給食をいただいている間に、子どもたちの有志が「さっき作ったお話をお芝居でやります!」と言ってくれて、即興でお芝居をしてくれました。
突然のことでびっくりするやらおかしいやら。子どもたちの芝居っぷりが面白くてね。

とまあこういう風に出張授業は終了したのでありました。
いやあ、楽しかった。満喫!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?