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続きのない話#559:SNS探偵2選(1858/1000)

アメリカの若い女性はSNSを駆使して探偵活動に勤しんでいる、らしい。
なぜって、本も映画もそういう物語がヒットしているのだから。

「自由研究には向かない殺人」(ホリー・ジャクソン)が日本で刊行されたのは、3年前の8月。ずっと気にしていたのだけれど、ついに買ったのが昨年の8月。そのまま積ん読していたものを手にしたのが今年の8月。
特に夏をテーマにした話ではないけれど、なんとなく8月の本なんですね、ワタシの中では。

主人公は女子高生のピップ。
元気で溌剌としたピップが過去の事件を再調査して、驚くべき結果を解き明かしてしまうという内容は、まさに巻を措く能わずな1冊。主人公の造形も自由研究のスタイルを模した本文デザインもよく出来ていて、2022年の本屋大賞翻訳小説部門第2位というのがよくわかる。

第2作の「優等生は探偵に向かない」でのピップは、ポッドキャストで捜査の進展を配信するという現代っ子(とは言いませんか、現代では?)ぶり。こちらでも驚愕の真相とそれ以上にショッキングなエンディングの物語で、まことに興趣に尽きない展開。こちらは2022年週刊文春ミステリーベスト10で第3位だったそうで、それもまたむべなるかな。

「卒業生には向かない真実」は三部作の完結編。
これまでの捜査が、なんとも理不尽なことにピップの重い枷となる。その重圧と闘う前半は息苦しく重く沈鬱なトーンで話が進み、後半はディテクティブならぬクライムストーリーとなる。それでも相変わらず主人公ピップからは目が離せない。
苦虫を嚙み潰し続けていたら、最後に一匹甘虫がいた、というような(よくわからない比喩ですが)ラストシーンは、読み手によって正反対の読後感を呼ぶのではないかという深みと苦みのあるもの。
うわぁ、ピップ、ここまで来てしまうのか。
作者の振り切り方の凄さにも驚くエンディングでしたね~。

そして食後ならぬ読後のデザートのような「受験生は謎解きに向かない」は三部作の前日譚。
3作に登場するピップの友人たちと、架空の殺人事件の犯人当てゲームが行われる。オフビートな〝思わぬエンディング”は、愉快でもあり、後のピップを予感させるものでもある。

本の解説によると、近年欧米では、実際に起こった犯罪や事件を扱った「トゥルークライム」というジャンルのポッドキャストが圧倒的な人気を得ているという。なるほどその影響を受けているのだな、なるほどなるほど。

過日、ムスメに勧められて映画館へ行った。

タイトルだけ教えてもらい、内容はまったく知らずに足を運んだ「#スージー・サーチ」もまた、主人公スージーがポッドキャストで犯罪捜査をする物語。これはホリー・ジャクソンの三部作にも似た苦みと甘みがある。
物語が始まって早々にネタバレがあり、こちらはどーんと重いものを託されたまま観続けることになる。これがどういう解決を迎えるのかと思案しながら。そしてハッピービターエンドとなる。
練り上げられたストーリーだけに、これ以上の前情報を得ないで観るべき。

本も映画も「今」の息吹を感じられて興味深くも面白いものでした。
夏休みに読んだり観たりするといいのではないかな~。


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