眼福耳福#13:古田足日のぼうけん(1860/1000)
古田足日といえば「宿題ひきうけ株式会社」。
小学校低学年の頃、夢中になって読んだ記憶がある。
なにしろタイトルがいいよね。
宿題を組織的にひきうけてくれるなんて、魅力的~。
単純な小学生は単純に喜んで単純に本を手にしたのでありました。
そんな懐かしい古田足日の企画展が、神奈川近代文学館で「没後10年 古田足日のぼうけん」と題して行われていると知り、行ってみた~。
というのも。
8月、児童文学評論家の西山利佳さんに「読みたいラジオ」にご登場いただくことになっており、取り上げる本が、古田足日全集の第12巻「コロンブス物語/豊臣秀吉物語」なんですね。
と書くと、え、なぜ? と世の読みたいラジオ通は訝しむことでしょう。
「自作を朗読するのがウリなのに、他の作家の本でいいのか!」と。
へへへ、それが大丈夫なんですよ。
なぜかというと、その巻の解説の執筆者は西山さんだから。
ご理解いただけたかね、ワトソンくん。
解説のタイトルは、「"秀吉”と"コロンブス”は古田作品の基本です」。
そこで「コロンブス物語」の冒頭を読むと、古田足日はこう記している。
コロンブスは
アメリカを「発見した」といわれる。
しかし、「発見」というのはおかしい、
と、ぼくは思う。
きみは、どう思うか?
という出だしを1964年、今から60年も前に書いたのだから凄くないですか?
「意欲に燃える」とか、「いよ~国が見える」とか、年号の覚え方だって、コロンブスがアメリカ大陸を「発見した」という文脈で成立しているのに。
西山さんはそのような作家的態度を足掛かりにして、古田足日を語るわけです。なるほど。そういう補助線を引いてもらうと、理解が進みますね~。
企画展にはラジオの収録の下調べのつもりで出かけたのだけれど、展示に圧倒されました。ワタクシの子どものときの出会いから、なんとなくユーモア作家みたいに思っていたのだけれど、いやいやそれだけではありません。
足跡をたどると、とても真摯に愚直に児童文学に向き合っていることがよく分かります。幼稚園に赴き子どもたちと交流し、他の作家たちと意見を交わし、家族が住む街を観察し、作品に活かす。
その原点が昭和20年8月15日の敗戦体験にあることを知ると、凄みすら感じられる。
うーむ、もう一度読み直してみようか。
かなぶん(というのだよ、神奈川近代文学館を)では、思い出の「宿題ひきうけ株式会社」の新版も販売されていた。絵は長野ヒデ子さんだから、これは買わずばなるまい。
家に帰ってあとがき「新版あとがき-なぜ新版を出すのか」を読んだら、古田足日という作家がどれほど真剣に創作に臨んでいたかがわかって、改めて感嘆いたしました。
ところで。
かなぶんで本を買うと、名作「おしいれのぼうけん」ポストカードをもらえますぞ。
ご興味ある方はかなぶんへ急げ~。
といっても会期は9月29日(日)まであるのでご安心を!
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