ルームクリーナー 解説2

ルームクリーナー解説1から長らくお待たせしました。流石にここまで来ると観た方も忘れているかもしれません。大変申し訳ございません。
だからと言ってここで終了!とはしません。書くと言ったからには最後までやりますよ!
というわけで、ルームクリーナーの解説第2弾です!
この記事を読む前に、ルームクリーナーをお忘れになっている方・本編をご覧になってない方・解説の存在に気づかなかった方などなどはこちら(解説1)の記事をご覧になってからでお願い致します。

目次

1.おさらい。ルームクリーナーとは
2.主人公・清掃員について
3.田上と麻帆の仲直りについて
4.シーン間の清掃員と社長の会話について
5.清掃員の後輩・菱野について
6.飯塚麻帆の正体
7.この作品のテーマ・メッセージ
8.余談

※本記事では5からですが、念のため全て掲載しております。

前回では4までで終わってしまいましたので、その続きの5から記載します。おさらいも交えて解説します。

5.清掃員の後輩・菱野について
ルームクリーナーにてコミカルポジションである清掃員の後輩、菱野。フルネームは「菱野充明(ひしのみつあき)」といいます。彼は幽霊である田上の家が初現場の新人清掃アルバイトです。
菱野が特殊清掃のアルバイトを始めた理由は、バンド活動続けるためのお金が必要という理由で始めました。……………が、しかし!彼は大の怖がりなのです。
特殊清掃とは、主に曰く付き物件を清掃するのですが、菱野は幽霊が大の苦手なのにこの仕事をやっているから可笑しな話です。いやあ、お金のための力ってすごいですねー(棒)。
そんな菱野のプロフィールをざっくり説明しますと、年齢は23歳。大学に入っていたが、バンド活動に専念するため3年で中退。バンドでは「Sexy Baby」というメロディックハードコアバンドでボーカルを担当。大学時代から付き合い始めた2コ下の恋人がおり、彼女が大学を卒業した後同棲する予定。そして喫煙者。
更に何より一番の特徴であるチャラい性格。バンドマン的なノリだと思います。菱野充明という人物はこういうキャラクターです。
作者の私からして、菱野の役回りって所々おいしいところを持っていくなと思います。冒頭シーンでは落ち着いてる清掃員に対し、ビビりでヤル気なく何処か騒がしいと2人の温度差を出してくれ、幽霊・田上との絡みがあるシーンでは菱野のビビりが生き生きしシーンを明るくさせてくれます。
、、、、、ところが!後半(麻帆のシーン)では、清掃員の秘密を麻帆がいる傍でバラしてしまいます(本編の「あのぉ、こんなこと聞いちゃったんスけど、先輩って社長と寝たって本当なんスか?」より)。しかもその根源が社長です。お前またか。菱野のこの一言で清掃員の心を大きく傷つけてしまいます。菱野はどういうつもりで言ってしまったのか。
菱野は過去のアルバイトでパワハラを受けたことがありました。このような経験から菱野は、次の仕事では直属の先輩若しくは上司の弱みを握り、予めパワハラをさせないようにするという(菱野なりの)対策をとっていたのです。とは言っても、清掃員への言動は別に菱野は怨恨や嫌がらせの意思があって言ったわけではありません。その当時は興味本位で面白半分という気持ちでした。菱野は清掃員から一度も嫌がらせを受けていませんので…。でも、麻帆の前で堂々と訊いてしまったのがタチ悪いですね。空気を読めてなかったです。
そのような行動をしたばかりに菱野は麻帆に叱られ、麻帆からの第一印象は悪くなり、菱野は肩身が狭くなります。まあ自業自得ですね。そんなこんなで、菱野は結局清掃員により田上の部屋(クライマックスシーンに繋がる)へ連れて行かれます。
、、、のですが、何故清掃員は菱野を連れて行く必要があったのか。と、これは疑問に思うシーンなのですが、これは清掃員の錯乱によるものなのです。一部菱野に認めて貰いたい感情もあったかもしれませんが、ここに深く理由や意味を求めてはいけません。
もし自分自身がパニックに陥ってしまった場合、誰しも何かと血迷った行動をとると思います。清掃員の場合は尚更です。自分自身で平穏を保ち、常に冷静でいた彼女ですが、予期せぬ事態で混乱としてしまい、感情がむき出しとなり、これまで装っていた自分自身としての在り方が壊されてしまいます。しかも、内容が触れて欲しくなかった内容だけにそのダメージは大きいものです。何せ清掃員は既婚者ですから…。
、、、あれ?ちょっと話が清掃員寄りになってしまいましたね。菱野に戻します。
話がシリアス寄りになってしまいましたので、菱野の(物語において)良いところを。菱野が清掃員の触れて欲しくないところをついたことで、菱野はその後初対面の麻帆にこっぴどく叱られるわけです。更には清掃員(本編ではお姉さんと呼んでいる)に謝れとまで言います。麻帆ちゃん強し…。そこから菱野はどんどんヘタレキャラになっていきます。ヘタレキャラになるその憎めなさがイイ。そんなこんなで気まずくなった菱野くん。結局田上の部屋へ行くことに。
田上の家であまりにビビる菱野はその都度麻帆に怒られます。田上の家にいる菱野は勿論クライマックスシーンも巻き込まれるわけで、、、。が、しかしいつの間にか舞台からいなくなります。途中で帰ったのか?と思いきや幽霊が怖くて部屋の何処かで隠れていました。そこでまた麻帆に馬鹿にされる菱野。菱野またしても肩身狭し。
ところが菱野、どういう風の吹き回しか清掃員の仕事っぷりを見て、清掃員のことを認め社長から聞いた清掃員の弱みも聞かなかったことにするとまで言います。実はイイ奴だった。しかも、麻帆のお礼に躊躇う清掃員の背中を押したりとまた地味に良いことするんですわ。
そしてエピローグ(最後の清掃員と社長の会話)のラストでは、清掃員と社長が和解?しそうなとこで割って入ってその場を明るくするというまた面白いをするんだわこれが。(作者の自分が言うのもなんですが…)
これらがですね、先述で述べた役回りが所々おいしいところを持っていくというところに繋がるのです。

この物語を明るくさせる為には菱野の存在が欠かせないと、この記事を書いて改めて思いました。

6.飯塚麻帆の正体
物語の後半にてメインで活躍する女の子・飯塚麻帆(いいづかまほ)。アンケートでは意外と人気だったようで。役者さんが良かったのでしょう。
さて、田上の大学生活を良い方向へ変えてくれた麻帆ちゃんですが、この娘は後に大きなキーパーソンにもなります。その詳しい活躍は後述にて…。
始めに裏話になりますがこのキャラクター、ただの幽霊のお友達ってだけだったらホントつまらないキャラクターです。キャスト少ないし、キャラクターの個性を大事にしたい私にとってはそれは気持ちの悪いことです。ですので、麻帆はわがままで正義感のある気の強さなキャラクターにしました。実はというと、麻帆の設定作りが一番大変でした(笑)
ではストーリーの方を触れていきます。清掃員の提案で、田上と麻帆を直接会わして仲直りしようということで、田上の記憶を頼りに電話番号を聞き清掃員が麻帆に電話します。この時清掃員は、田上のいとこのふりをして電話していました。
麻帆の最初の登場は電話のやりとりで、客席から登場して後ろ向きで電話していました。このような演出にした理由はお互いが初対面ということ、田上の大事な友達は一体どんな娘なのだろうかというお楽しみにしたかったからです。しかし、同じ舞台だと違和感あるし、舞台の構造上別の場所からの登場は難しいものでした。ですので、この演出は色々大変でした…。
あ、失礼しました。清掃員との電話のやりとりにて、麻帆は田上のことをどう思っていたか。怒っているか、根に持っているか。答えはNO
麻帆ちゃん、実は田上と喧嘩別れをしたことに後悔していました。田上のことは大事な友達と思っているし、田上が生きているうちに仲直りしたかったのです。しかも、田上は悪くなく全部自分が悪いとまで言います。なんていい娘だ。
そんなこんなで意外と話がスムーズにいきます。これ幸いと清掃員は「(田上)亮祐くんと仲直り出来ますよ!霊感があって幽霊と話せますよ!(セリフアレンジ)」と話を持ち掛けます。麻帆は最初「え?そんなこと有り得るの?(セリフアレンジ)」となりましたが、結局OKしてくれました。普通こんなん怪しいと思うのによく受け入れたな。まあ余程後悔していたのでしょう。
清掃員との待ち合わせシーンにて。ここから麻帆ちゃん本領発揮します。菱野のやらかしで清掃員が弱っているところを、麻帆が庇います。初対面の人をよくここまで擁護したなと思いますが、もしここで麻帆が止めに入らなければ清掃員は仲直りさせるどころじゃなかったでしょう。麻帆大手柄なり。
クライマックスである仲直りの話は散々しましたので割愛します。1つ言うなら麻帆には霊感がありませんので、清掃員が田上の代わりになって会話をしていました。(というかここの説明を忘れていました。すみません。)
長い前振りでしたが、お待たせ致しました(?)。ここから記事タイトルである飯塚麻帆の正体についてです。田上と仲直り出来た麻帆は、躊躇いながらも清掃員に「社長から握られている弱み、是非解決させて下さい!(セリフアレンジ)」と持ち掛けます。この飯塚麻帆、実はお父さんがとんでもなく凄いお方で、ある業界では有名とのこと。そのこともあって麻帆は父からの教育上、父のことを一切口外しないようにと教え込まれたのですが、清掃員のためにとそれを破ってしまいます。その結果、社長は父の権力によって心も体もボコボコにされてしまいます。お父さん、麻帆の思いに応えたのでしょう。

さて、この麻帆の父親。一体何者なのか

ご覧になった方の話では、暴力団や反社会的団体の家系なのではないかというイメージだったそうです。
この場を使って述べます。私のイメージでは、日本の企業を裏で動かす組織です。その規模は全国レベルに達し、国家に近いといったものです。フ◯ーメ◯ソンやイ◯ミ◯ティをイメージして頂けたらと思います。
反社会的ものよりかは、秘密結社に近いです。まあ強いて言うなら、社長の怪我は麻帆パパの用心棒らにやられた怪我です
スケールの規模の大きさを表現するために、あとの情報はご想像にお任せ致します。そんな暇ないか。

7.この作品のテーマ・メッセージ
このルームクリーナー~空き室清掃員~という作品を作ったきっかけは、ある当時若者の突然死のニュースをよく聞いたことからです。若いから体力ある、若いから健康なんてものは100%確実ではありません。人間若しくは生き物全て死は付き物ですし、いつ死ぬかも分かりません。
そしてもし死んだ場合、周りはどう思うか。悲しみ?驚き?怒り?喜び? 様々な感情がその人の死を中心に飛び交います。決して1人で終わりになることはありません。もし誰かと繋がれば、その誰かからの感情を受けるわけです。家族、恋人、友達、仕事仲間、恩師、クラスメイト、知り合い、嫌いな人、ペット…、人間誰しも生きていれば必ず誰かと繋がります。生涯誰とも一切関わらない本当の独りなんて有り得るのだろうか。
私は死というものを重く捉え、物語を作る上で人物の死がある場合は、その遺された者の思いを触れて死の重さを伝えたいと思っております。
ですので、今作のテーマは「突然死というもの、その遺された人の思い」です。清掃員が主役ですが、田上と麻帆の関係をメインに描いてます。

続いて、この物語のメッセージについて。
初期の段階では1つのみでしたが、稽古を重ねていくうちに新たな発見もあったことで、この作品のメッセージは3種あります。それは、「清掃員視点」「田上視点」「清掃員・田上視点」の3つです。役作りでは「清掃員・田上視点」にフォーカスを当てて作りましたが、他2つにあっては作者の自己満足のようなものです。
では、その3種のメッセージについて触れていきます。
まず役作りでフォーカス当てた「清掃員・田上視点」についてです。つまり2人に共通する内容です。それは「どんなにやりきれなかったこと、後悔したことがあっても必ずどこかにチャンスはある。だから悲観するな。」です。清掃員の場合は社長からの弱みに関すること、田上の場合は麻帆と喧嘩別れをしたまま亡くなったことを表しています。ここでいうやりきれなかったこと・後悔したことは、清掃員は社長の誘いに断ればあのようなことは起きなかっただろうし、田上は生きているうちに仲直りすれば霊になって後悔することもなかったということに当たります。
人生、困難な壁は付き物です。また、それに準じてチャンスも付き物です。チャンスは自分で取るもので、何かきっかけがあればそれに乗っかっていかないと後悔します。しかし、正解がないものだからどれがチャンスか分かりにくいと思います。ある意味ギャンブルだと私は思っています。清掃員は麻帆きっかけで、田上は清掃員きっかけでチャンスがありましたね。ちなみに、麻帆にもこのメッセージは繋がります。清掃員きっかけで。
次に物語のメインである「田上視点」です。田上の場合は「伝えたいことは伝えるべき。」です。何かしら思いがあっても、それを言葉として伝えるのは勇気が要ります。愛の告白、仲直りとかは特にそうです。
ですが、言わないままはもっと良くないことです。時が経てば変化も付き物です。例えば「告白を躊躇っていたら、好きな人に恋人が出来た」「喧嘩別れした友達が交通事故死した」とかですかね……。
もし何か思いがある人は、必ずそれを言葉にして伝えてスッキリしましょう。やった後悔よりもやらなかった後悔の方が残りますので。ちなみに私は後悔だらけです。私みたいにならないようにしましょう。
最後に「清掃員視点」です。てか最初と順番逆じゃね?いいえ、仕様です。さて、清掃員の場合は「人のために善い行いをすれば、良いことが返ってくる。」です。つまり因果応報です。良い行いか悪い行いか、それにふさわしい報いが現れるということです。
清掃員は仕事のために全うしたことが、偶然弱みの解決に繋がったということに当たります。でも清掃員の良いところは、このようなことを意識して狙ってやってないんですよ。1回断っちゃうし、見返り目当てさもない。
つまり何が言いたいのかというと、人として良いことを当たり前のようにやることが大事ということです。どうでもいいが、私にとっての正義はこれだと思ってます。勝者が正義なんてくそくらえです。
ちなみに清掃員とは対に、社長は清掃員に悪行をやったばかりに麻帆の父親から痛い目に遭いました。麻帆ちゃんは閻魔大王か。

メインとなる解説はここまでです。項目8は裏話やおまけです。

8.余談
解説を長々と書いてしまい申し訳ありません。言いたいことは全てこの解説にて伝えきったつもりです。お付き合いありがとうございました。
これより以下の内容はこんな裏があったのかと軽~く読んで下されば幸いです。お時間に余裕があれば、もう少々お付き合い下さい。

・脚本を作る前の初期構想は清掃員、田上、麻帆、社長の4人。そこでオフィス内での清掃員と社長のシーン↔️清掃員と田上関係のシーンを交互に見せる予定だった。
田上の、麻帆ちゃんの電話番号思い出しシーンで1日経過挟むというクソテンポだった。

・菱野を投入した理由は、オフィスシーンを無くすため、物語のコメディ色を強めテンポを良くするため、清掃員の弱みを明らかにしてくれる人物が欲しかったことから。つまり、私にとっての菱野の一番の見せ処は「清掃員の弱みを明らかにするシーン」。(菱野役の方気に障ったらゴメンね!)

・脚本の第一稿では、社長の出番は冒頭のシーンと清掃員との電話のみ。ラストはややもやもやするものだった。

・フライヤーの写真はレンタルスペースで撮ったもので、表面の防護服姿は清掃員役の人の掃除姿を撮ったもの。キャスト紹介が集合写真なのは「アー写っぽくやりたかった」ことから。

・元々は2019年の11月に公演する予定だったが、諸事情により3月に延期となった。

・本格的に稽古を始めたのが2月初旬。15回までを予定していたが、何だかんだで20回以上稽古をしてた。例のウイルスの影響で稽古場が使える使えない事態で、公演の中止が危ぶまれた。

・オープニング曲は井上苑子の「点描の唄」、エンディング曲はPassCodeの「it's you」

・公演の際に使わせて頂いた劇場はめっちゃ安価。オススメ!

・チケット代は映画に近い値段にしたいことから2000円以下に抑えた(S席を除く)。学生料金は値段設定した私のミス(1500円→予約で-200円)。お得になりすぎた(笑)

・1日のみの公演にした理由は、たった1日の伝説にしたいという謎のこだわりから。再上演はしないつもり。

ここまでにします。これ以上オープンはまずい気がしてきました…。
最後におまけですが、公演のアンケートを実施したところ、「シリーズ化希望」と大変嬉しいコメントを頂きました。元々このルームクリーナーは今作で終わりにする予定でしたので、いい意味で驚きました。


そこで!

もしルームクリーナーに続編があるとするならば、こんなストーリーになるだろうという軽い設定を考えました!ただ上演するかどうかは全くの未定です…。

それでは考えた設定をちょっとご紹介、、、、、、

・物語の設定は前回の半年後。菱野は場数を踏んでいき、幽霊に段々耐性が身に付いていく。

・清掃員は「清掃員」のまま。本名公開はなし。
ただ役割が変わり、「清掃員を軸に周りが動く」→「清掃員が周りをカバーする」にシフトする。

・菱野に後輩が出来る。
軽くキャラ設定を…
○菱野より年上で社会人経験者。
◯霊感はあるが、幽霊が苦手。見ると気絶してしまう。
◯元出版社社員。前職ではいじめを苦に辞めた。
◯特殊清掃と知らずにクリーンアップ・クリーン・クリーナーに入社。社長も隠してた。
◯人との関わりを避け、黙々と作業に打ち込める仕事がしたいことから、清掃の仕事を始めた。
◯菱野とは兄妹のように仲が良い。
◯しかし清掃員の雰囲気が苦手で、清掃員とは仲が悪い。
◯名前は「三倉愛唯(みくらめい)」。女性。

・清掃員と社長の立場が逆転する。けれども清掃員は権力を振りかざすことはなく、会社の体裁維持のため、上下関係はそのまま。変わったところは、社長への当たりが強くなっていること。

・対象となる幽霊は、「自殺した女性の霊」。会社の労働環境の悪さを苦に、自宅のバスタブでリストカットによる失血死。この世への怨念が強い厄介な霊。

と、ここまでにします。あまり書きすぎるとネタバレになりそう…。ちなみにタイトルも決めていますが、これはもし上演するとなった時のお楽しみに。

これにてルームクリーナー~空き室清掃員~の解説を終了致します。最後まで拝読して頂きありがとうございました。今後もクリーンアップ・クリーン・クリーナーの従業員一同は、何処かの現場でお仕事していることでしょう。

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