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Don't Be Silent #わきまえない女 たちによる選書

東京五輪・パラ組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言をうけ、ChooseLifeProjectでは2月6日、総勢25人の「わきまえない女たち」による生配信番組「Don't be silent #わきまえない女 たち」を行いました。

この森発言の問題の根は、どの組織にもあります。だからこそ、わたしたちは無意識の偏見に気づき、未来のために共に学び、間違いを正しながら歩まねばなりません。そのためには、先人たちの言葉に耳を傾け多くの知見を得ること、そして彼ら / 彼女らの呼びかけに応答することも必要です。

このnoteでは、番組中わきまえない女たちが紹介した本を含めた選書をお届けします。

1.  イ・ミンギョン『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』タバブックス

声を上げるのは勇気がいる。それはあまりに「危険」だから。この本は声を上げるため、もしくはその場から立ち去ることができるための日常会話のマニュアル書。基礎編の「セクシストに出会ったら」と実践編「セクシストにダメ出しする」で構成されていて最高に便利。いつも鞄にしのばせていたい。

2. ジョアン・C・トロント『ケアするのは誰か? : 新しい民主主義のかたちへ』白澤社

誰もが赤ちゃんだったし、誰もが病気になるし、誰もが老いる。つまり、誰もがケアを受ける。にもかかわらず、ケアするということも、ケアする人も、ずっとずっと軽視されてきた。民主主義のことを本気で考えるなら、今まで目をつぶってきたケアのことをしっかりと見つめなければならない。共に、ケアから民主主義を考えよう。

3. 清田隆之『よかれと思ってやったのにー男たちの「失敗学」入門』晶文社

1200人以上の女性の声に耳を傾け、男性に共通する問題点をまとめた「失敗学」の入門書。「あるある」とうなずくだろうあなたにも、「うそ、これ失敗だったの?」と焦るだろうあなたにも読んでほしい。

4. 尹雄大『さよなら、男社会』亜紀書房

「いかにして男はマッチョになるのか」「どうすれば男性性を脱ぎ去ることができるのか」という問いにつらぬかれた切実な書。迷いながら、ゆらぎながら、決して歩みを止めない力強い筆致。彼の体験を通して、わたしたちは自己の中に「男社会」を発見するはず。

5. キャロライン・クリアド=ペレス『存在しない女たち』河出新書房新社

医療、税金、災害現場、公衆トイレ…。公平に見え、なおかつ公平でなければならない場にも、男女の格差はある。個人の問題として矮小化するのではなく、システムの問題として世界を捉え返す大きなきっかけになる。ブレイディみかこさんの「データのハサミで切り刻まれる「気のせいでしょう」という欺瞞」という帯文が光る。

6. ケイト・マン『ひれふせ、女たち ミソジニーの論理』慶應義塾出版会

女性嫌悪、女性憎悪と訳されるミソジニー。社会生活だけでなく、政治の中にもミソジニーは機能している。トランプ前大統領が、いかにしてヒラリー・クリントンをおさえつけたのか。なぜ性犯罪を犯した男は免責される傾向にあるのか。400ページを超える大著だけど、分析哲学の明快なアプローチで、頭の中がバサバサと整理されていく。

7.  チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』河出書房新社

思わず、そのとおり!と叫びたくなるタイトルと、手に収まりやすい本のサイズ。2012年にTEDxEustonで行ったトークが元になっているから、作者の呼びかける言葉がダイレクトに心に響く。スウェーデンでは16歳の子ども全員にこの本を配ったらしい(うらやましい!)。「わたしのフェミニストの定義は、男性であれ女性であれ、「そうジェンダーについては今日だって問題があるよね、だから改善しなきゃね、もっと良くしなきゃ」という人です」。

8.  小川たまか『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』タバブックス

配信に出演された小川たまかさんの名著。性犯罪やそれにまつわる世論、性犯罪系法改正、ジェンダー炎上案件などを取り上げている。エッセイのような語り口で、小川さんの言葉が綴られている。その静かな筆致と共に、「ほとんどないことにされている」出来事の脚注解説が生々しい。

9. グレイソン・ペリー『男らしさの終焉』フィルムアート社

ターナー賞アーティストであり異性装者としても知られる「男性」筆者による軽妙なジェンダー論。ページをひらくと「真実はあなたを自由にする。でも最初はムカつく」と書かれていて、笑ってしまう。風刺を交えた分析を読み進めていくと、未来のための「男性の権利」が描かれている。ぜひ本書で確認してほしい。

10. シンジア・アルッザ他『99%のためのフェミニズム宣言』人文書院

フェミニズムといっても色々ある。だからこそ改めて宣言しなければならない。この本は「反資本主義のフェミニズム」である。たった1%の富裕層ではなく「99%の私たち」のための、連帯を呼びかける力強い書。みんなつらい。それならば、なぜこうなったかを、これからは問おう。

11. 上西充子『呪いの言葉の解きかた』晶文社

「母親なんだからしっかりしなさい」「君だって「山川家」の一員なんだし」。著者はこうした私たちの思考を縛る言葉を「呪いの言葉」と名付ける。ジェンダーだけでなく、労働をめぐる呪いの言葉、政治をめぐる呪いの言葉もまとめられているのがうれしい。この本は、これは呪いだったのかと気づき、そこから「灯火の言葉」「湧き水の言葉」に至るまで、伴走してくれるだろう。

12.  太田啓子『これからの男の子たちへ : 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』大月書店

配信に出演された太田啓子さんの名著。子どもの頃からわたしたちは性差別的な価値観に影響を受けてしまう。男の子2人を育てる太田さんは、子どもたちに意図せずインストールされる「男らしさ」を、この本を通して慎重に拒もうとしている。子どもだからといって放置せず、将来彼らを性差別・暴力、そして本人の苦しみにつなげないための真剣な子育て。高校生にもぜひ読んでほしい。

13. レイチェル・ギーザ『ボーイズ 男の子はなぜ「男らしく」育つのか』DU BOOKS

小さいながらも不思議と「男らしさ」を身につけていく子どもたち。男らしさと聞いて「最高!」と思うあなたはちょっと待ってほしい。ジェンダー研究者でありながら、女親ふたりで男の子を育てる著者は「身体的な攻撃性、性的な支配性、感情的にストイックで、タフで、自己制御力がある」など「有害な男らしさ」があることを挙げている。誰もがしんどい「有害さ」から脱出するため、この本は助けになってくれる。

14. 上野千鶴子『家父長制と資本制―マルクス主義フェミニズムの地平』岩波書店

エッセイや入門書ではなく、もう少し専門的な書を読んでみたいと思ったら。初版は1990年と30年以上前でありながら、今もなお切れ味鋭くこの本は存在している。Sexy Zoneマリウス葉さんが「lol patriarchy(家父長制 笑)」というTシャツを着ていたことが話題になったが、筆者は女性の抑圧がまさにその家父長制と資本制の結託にあると喝破する。永遠の名著。

15. 前田健太郎『女性のいない民主主義』岩波新書

民主主義は大事ってみんな言うけれど、そこに女性がいない歴史の方が長かった。とりわけ日本では、女性議員の数は驚くほど少ない。知ってた?女性議員比率は世界165位(2020年)。政治理論を学ぶとき、政治を語るとき、そこにいるのは「男性」だけじゃなかっただろうか。政治学の入門書としても最高の一冊。

16. レベッカ・ソルニハット『説教したがる男たち』左右社

「マンスプレイニング」(男manと説明explainの合成語)の語を広めたエッセイ。これは、女性は自分より知識がないとか、理解力がないという前提のもとに、男性が女性に向けて偉そうに「説教」してしまうことである。言葉は世界を分節化してくれる。もやもやとしていたことが明確になって、意識化される。共通の言葉をもち、それに共に反対していく力を感じられる一冊。

17. シルヴィア・フェデリーチ『キャリバンと魔女ー資本主義に抗する女性の身体』以文社

専門書かつ大著。魔女狩りと資本主義がどうつながるの?と好奇心が刺激されたのならば、ぜひ手にとってみよう。イタリア出身のマルクス主義フェミニストの筆者は、魔女狩りを基点として資本主義が加えてきた女性への暴力を見出す。女性たちは、資本主義システムによってどんどん家庭に押し込められてきた。圧巻の一冊。

※これからも、追加していきます!

書評:永井玲衣 @nagainagainagai

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