コロナウイルス流行で試されている「あなたの心の弱さ」
※ おそらくこの記事のヘッダにもついていると思いますが、この記事は新型コロナウイルスに関連した話題を含んでいます。記事では当該の感染症そのものについての話題は取扱いませんが、感染症流行の動向については厚生労働省や首相官邸などの一次情報にあたることをおすすめめします。
英国占星術協会の会員になりました
まずは私事で恐縮なのですが、このたび私は英国占星術協会の会員になりました。
会費を払えば誰でも入会でき、入会審査や試験といった関門があるわけではないのでほとんどノリで入会したわけですが、肩書が一つ増えました(笑)。
会員になったからどうということでもないわけですが、みなさま今後ともよろしくお願いします。
新型コロナ流行に際し、加えて警戒しないといけないもの
そんな2020年、新型コロナウイルスによる感染症が世界で広まっています。流行の状況については厚生労働省や首相官邸などの一次情報にあたってもらうとして、オカルトや占いを嗜む立場として見過ごすことができないのは、デマ・流言といった類のものです。
まず見ていきたいのは各方面で繰り返し報じられている「マスクやトイレットペーパーなどの買い占め」です。これらの日用品の品薄現象は、紙製品がもつ物流の特性、ネットオークションやフリマアプリでの転売者の存在といった背景があるわけですが、私には売り手や買い手マスコミ問わず、騒動に参加している人は「心のウイルスに感染している」あるいは「呪われている」ように見えます。
社会不安を煽る行動をしている転売者や不安を煽るマスコミは論外ですが、インタビューなどでは「デマだとわかっているけれども買いだめした」という消費者の声が取り上げられています。これは「健康に悪いことはわかっているけれどもタバコをやめられない」というのとそれほど差はありません。感染への不安から逃れるための一種の行動嗜癖、ぶっちゃけていうと「トイレットペーパーを買いだめしないといけない呪い」にかかっているように見えます。端的に言うと
「トイレットペーパーを買いだめしているそこのあなた、呪われてますよ!」
ということなのです。マスクやトイレットペーパーの件は話題にあげている方が多いのでまだマシなのですが、この社会不安に乗じて看過できないのが、予言という皮をかぶったデマです。
「2020年3月20日に人類が滅亡する」というデマ
現代において終末論やアポカリプス的な話題は無責任なうえに誰も幸せにしないので個人的に嫌いな分野なのですが、以前から今年の3月20日に人類が滅亡するという話題があるようです。
大きなメディアに掲載されたところをあえて挙げてみると、
といったところがあります。そして昨今のコロナウイルスの騒動が重なってこの話題をあげているYoutuberやSNSアカウントがわんさか出てきて不安を煽っている状況です。オカルトリテラシーのない一般の方の中にはこういった話題に流される人が出てきてもおかしくない状況です。
こういった記事に共通しているところは、一次情報が示されておらず伝聞調の論調であるところですが(ついでに言えば tocana の記事でのタロットカードの解釈は底が浅すぎますね...)、共通しているのは
・ベテルギウスが超新星爆発を起こしその影響で地球環境が悪化する
・2020年3月20日にマヤ暦の終わりがくる
ということのようです。
オリオン座α星 ベテルギウス
ベテルギウスは地球から642.5光年離れたオリオン座の一等星で明るさが変化する変光星で、いつ超新星爆発が起きてもおかしくない天体として有名です。極端なことを言うと「今日超新星爆発が観測されてもおかしくない」状況で不規則に光量が変化する神秘的な一面があるので予言する側には都合のよい存在です。
また、2020年3月20日にベテルギウスの超新星爆発が観測されたとして、それは642年前の出来事で2020年3月20日と直接関係あるわけではありません。また、ガンマバーストにしても人類が滅亡するような影響が出ることには否定的で地震や台風といった自然災害のほうがよほど大きな脅威です。
天文学に素養があるか、多少興味を持って少し調べれば心配するようなことではないことがすぐにわかると思います。
2012年のマヤ暦人類滅亡説
マヤ暦といえば、2012年12月21日に人類が滅亡するとした言説がオカルト系のメディアで騒がれ、(もちろん)成就しませんでした。
このタイミングは、マヤ暦の長期暦で144,000日(約394年)周期のバクトゥン周期の区切りを迎える日です。具体的には 12.19.19.17.19 (2012年12月20日) の翌日が 13.0.0.0.0 (2012年12月21日) となり、単に 13 バクトゥンに入る日です。ちなみにバクトゥンの上位にピクトゥン、カラブトゥン、キンチルトゥン、アラウトゥンという単位が準備され、一番大きなアラウトゥンは約6300万年周期となっています。
2012年の終末論は言ってみれば「マヤ暦の大晦日を境に人類が滅亡する」と言っているだけです。
「2020年3月20日」とマヤ暦
そして目前に控えているらしい「2020年3月20日」ですが、今回のデマ予言を書いているものには「モーリス・シャトラン」という人名が出てきます。
この人は「フランスの科学ジャーナリスト」で「閏年を考慮していないという天文学上の計算ミス」があり「再計算した結果(13 バクトゥンに入る日は)2020年3月20日」であると主張しています。
前項でマヤ暦の長期暦について触れましたが、マヤ暦の長期暦は年は関係なく、日数を数えていくので閏年とは関係ありません。そして「フランスの科学ジャーナリスト」という割には署名記事らしきものが全く出てきません。この時点で、相当怪しいものと言わざるをえません。
しかし「モーリス・シャトラン(Maurice Chatelain)」という人物は存在していたようで、このようなバイオグラフィーを見つけました。
それによると、1909年フランスで生まれ(「フランスの科学ジャーナリスト」というふれこみの元ネタでしょうか)、1995年にアメリカにて没した宇宙・UFO系の人 ( NASA で働いたという記述もありますが、一方で「質の低いNASA下請けエンジニア」と批判されています) です。
シャトランのマヤ暦
そのシャトランですが「Our Cosmic Ancestors」という本の中でマヤ暦について書いています。
マヤ暦についての記述ですが( Google Books 該当章 )、20年周期のカトゥンを木星-土星の会合周期などいうふうに、西洋占星術のサイクルをもとにマヤ暦のサイクルや起点の年月日を修正するということを行ったようです。
該当部分のスクリーンショットを以下に掲載しますが、12バクトゥン 20カトゥン(ママ)のところに 2020 の記載があります(確かに 2020年には木星-土星の会合が12月に発生します)。表ではカトゥンがなぜか 0〜20 の21行あり、それぞれの20カトゥンは次のバクトゥンの0カトゥンと同じ年が記されています。
2020年にマヤ暦13バクトゥン入りするという終末論の元ネタはこれだと思いますが、シャトランは年レベルの修正は行っても、日単位までは定めていないようです。最初に今回の終末論を仕掛けた輩は、日単位までの考慮を行うことを放棄して、西洋占星術の区切りの春分を採用したように思えます。木星-土星の会合(コンジャクション)が発生する日を滅亡の日とすることもできたのでしょうけれども、それをやるとデマのからくりがバレる(マヤ暦と西洋占星術関係ないじゃん!)のを恐れたのかもしれません。結局のところ、今回の終末論は
マヤ暦と西洋占星術を雑に組み合わせたデマ
といえるのではないでしょうか。
デマに負けない「心の武装」を
社会不安が起きているときにはどうしても心が不安になり、人は予言・迷信に流されてしまいがちになります。
たとえオカルトの分野であったとしても、最初に言い出した人やその人が主張を行うに至った根拠というものがあるはずです(場合によっては理解しがたい理由なのかもしれませんが)。主張をそのまま受け入れるのではなく、その背景を調べること、理解を深めようとする活動は、あなたの心を強くする武器であり防具だと考えています。
インターネット上で相当広いところまで調べられる今日、皆さん自身で武装を固めるのはそれほど難しくはないと信じています。仮に2020年3月20日に破滅的な出来事がおきたとしてもデマとは無関係であるという強い心で未来に希望を求めていく姿勢が大事なのではないでしょうか。
この文章が、みなさんを蝕む今回の終末論の「呪い」を解くための助けになったとしたら書き手として幸いです。
サマリー
・デマに踊らされているのは「心の伝染病」あるいは「呪い」に蝕まれている状態
・2020年3月20日の人類滅亡論はマヤ暦と西洋占星術を雑に組み合わせたデマ
・オカルトリテラシーを育んでいかないと社会不安時のデマに弱くなる。根拠は何であるのか探求する行動を
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