見出し画像

#69 SPFマウスってどんなマウス?GFマウスやノトバイオートマウスとの違いは?

現役の腸内細菌研究者がお届けする腸内細菌相談室。
室長の鈴木大輔がお届けします。

本日は、論文で度々登場するSPFマウスとはどんなマウスか説明していきます。混同しやすいマウスとしては、GFマウスやノトバイオートマウスも存在していることから、これらについても併せてご紹介していきます!

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

実験動物を使用する理由

そもそも、実験動物を使用する目的は何でしょうか?腸内細菌の研究に限った話をすると、腸内細菌が与える代謝への影響を評価することが該当します。人間に対して行うことができる実験は、倫理的な問題をはらんでいるため厳しく制限されています。したがって、私達人間の代わりに、実験動物の助けを借りて、知見を得るのです。

例えば、細菌の存在自体が与える宿主の免疫機能への影響を調査したいとします。このとき、細菌の存在自体の生体への影響を調べるには、細菌が存在しない実験動物が必要になります。別の例として、特定の細菌が与える生体への影響を調査したい状況を考えます。すると、特定の細菌が存在しない実験動物が必要になるのです。このような実験を人で行うことは難しいです。

実験動物の種類

実験動物の種類は、SPF動物について(田嶋, 1964)にまとめられているので、これに準拠してお話をしてきます1*。ここで登場するのは、無菌動物、ノトバイオート、SPF動物、Conventional動物の4種類です。順を追って説明します。

無菌動物(Germ Free Animal)は、無菌環境にて生み出された、全ての微生物や寄生虫を持たない動物です。無菌動物に該当するマウスを無菌マウスといます。無菌動物から派生して、ノトバイオートを考えることができます。

ノトバイオート(Gnotobiote)は、無菌ではないものの、保有している微生物が明確に知られている動物です。ギリシャ語でGnotoはKnown、biosはlifeを意味しており、直訳すると知られた命という意味になります。ノトバイオートに該当するマウスがノトバイオートマウスです。

続いて、SPF動物(Specific Pathogen Free Animal)は、特定の病原性微生物が存在しない動物です。つまり、特定の病原性微生物に該当しない微生物であれば、動物に存在しても問題ないのです。したがって、ノトバイオートと比較して、厳密な制御を必要としない点が異なります。通常、SPF動物は帝王切開、子宮切除により無菌的に取り出した胎児を、Barrierシステムと呼ばれる物質や生物交換が厳格に管理された環境下で飼育されることで管理されます2*。SPF動物に該当するマウスがSPFマウスになります。

最後に、Conventional動物です。普通の動物と表現しても良いかもしれません。無菌動物、ノトバイオート、SPF動物以外の動物であり、無菌環境のような特定の環境においての管理がされていません。

実験用途に合った動物

最後に、今回のエピソードでご紹介したマウスをまとめます。無菌マウス、ノトバイオートマウス、SPFマウス、従来マウスの順に、厳密に微生物が管理されています。無菌マウスを始めとしたマウスの管理は、一切の微生物の混入が許されない点、多大な労力、時間、技術を必要とします。

実験計画に合わせたマウスの使用が重要といえます。

腸内細菌の分からないに答えるために、腸内細菌相談室は存在します!わからないこと、難しいこと、紹介してほしいことがあれば、TwitterやInstagram、Noteコメント欄にてメッセージお待ちしております。読んでほしい論文リクエストも待っています!

こちらがTwitterです!

インスタグラムはこちらです!

https://www.instagram.com/chonai_saikin

それでは、本日も一日、お疲れさまでした。

参考文献

1* 田嶋 嘉雄, SPF動物について, 実験動物, 1964, 13 巻, 4 号, p. 133-138.

2* 伊藤喜久治, 用語集, SPFマウス(specific-pathogen-free mice), 公益財団法人腸内細菌学会, Access: 2022/10/30.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?