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ラジオ 全紹介歌

東京・墨田区のFM局で半年に一度のペースで過去に4回、「短歌のくせになまいきだ」という短歌を紹介する番組(USTREAMでも配信)をさせていただきました。

いったんの一区切りとして、今までにご紹介させていただいた歌と歌人さんをここにまとめさせていただきました。


2015.10

じゃんけんでいつも最初にパー出すの知っているからわたしもパーで
(須田千秋さん)


七月に君が眼鏡をかけて以後好きです以前は覚えてません
(鞄さん)


ぬいぐるみ越しに言われた「好きだよ」にあなたのひとみを見るのをわすれた
(いさごさん)


便座抱ききっとこのまま私死ぬ一緒に食べた君もどこかで
(りっこさん)


砂浜でふたり日本の輪郭のほんの一部をなぞるお散歩
(野崎アンさん)


雪をとかす雨ならそれはあたたかい明日はきみに会いにいきたい
(たきおとさん)


もうそろそろ私が屋根であることに気づいて傘をたたんでほしい
(笹井宏之さん)


価値観の相違を一つ乗り越えて餃子のしわはこれから四つ
(中牧正太さん)


くっつくと思わなかったとこにふとくっついたりして生きてきたんだ
(山中はぎ乃さん)


元気だよ君はおっちょこちょいだから雲の上からのぞかないでね
(西村湯呑さん)


また口をとがらせるきみそのまんま口笛吹いてみたらどうかな
(黒井いづみさん)


さよならをあなたの声で聞きたくてあなたと出会う必要がある
(枡野浩一さん)


2016.4

どこまでも続いていると知ってたらこの電車には乗らなかったよ
(ひなちい子さん)


ことことと積載超過のバスがきて紋白蝶をおろして行った
(しま・しましまさん)


ドラえもんだったらしいが片寄って夏の海辺となる昼ごはん
(有村桔梗さん)


まちがえて碧いうなぎを買ってきたひととうなぎと暮らしています
(西村湯呑さん)


変わらない日々ではあるが同じ々はないと気が付く手書きの々々だ
(きつねさん)


沈黙のなかに「虹だ」の声がありそれきり無言電話がこない
(まるやまさん)


入り込む君の悪夢に入り込むなんだ楽園じゃないか今日も
(ナイス害さん)


反対になった電池が光らない理由だなんて思えなかった
(加賀田優子さん)


ラジオから流れた君のごめんねも東京タワー経由の言葉
(HBリリーさん)


サーカスの寄らない町に春は来てじじいの香車がとにかく早い
(すみみさん)


森へ水ぶっかけるために降ってんだ、雨はかなしい、とかダブらすな
(はだしさん)


縦書きの国に生まれて雨降りは物語だと存じています
(飯田和馬さん)
ありがとう なんてことない人生をちゃんと物語にしてくれて
(檀可南子さん)


疑問符をはづせば答へになるやうな想ひを吹き込むしやぼんの玉に
(光森裕樹さん)


扇風機に五枚も羽根があるというきみに羽根無しのを見せたくて
(スコヲプさん)


舞い降りてきみはすぐに街灯と信号の違いに気づいたね
(戸田響子さん)


本当に好きだったから出来るだけ楽な姿勢で落ち込んでます
(ののさん)


2016.11

わかってる誰もが通る道なのはでもわたしには初めてなんだ
(菊池優花さん)


熱かった何かが冷めてぬくもりと呼ばれるのならそれはいらない
(ハナゾウさん)


くちづけるまぶたをすこし吸ってみる起きてもいいし起きなくてもいい
(飴町ゆゆきさん)


おっぱいと言うとき君のおっぱいを思っているよふたつだけだよ
(木村比呂さん)


これを子よ見よこんなにもこんなにも戦う前のオセロはみどり
(中牧正太さん)


書き込みの多い楽譜を恥じている君はむくげの花に似ている
(小宮子々さん)


ふるさとは醤油のような闇でした母の匂いもした気がします
(こたろうさん)


都会にはホームが十五もあるのです、ねえお母さん。ねえお母さん。
(蜜さん)


だーいすきとめいっぱいぱい手でえがくあの輪に詰まっています、隊長
(西村湯呑さん)


桃缶のからを一夜の灰皿にしていてあした月へと帰る
(朝倉洋さん)


ぼんやりとしているうちに天国を過ぎてやむなく宇宙で光る
(中本速さん)


絵かきうた途中で飽きて大喜利を始めてしまう君だからです
(雪間さとこさん)


2017.7

まだ暮らすことのできない僕たちがくぐるアーケードのひとつ屋根
(ナタカさん)


困らせてごめんね、困らせることが確認作業になってごめんね
(泡凪伊良佳さん)


オレだよオレ、みずうみだよとだみ声で言うのですぐに沼とわかった
(竹林ミ來さん)


白流す鯨だなんてあの空も君らが飛んだ跡であるかい
(古関 聰さん)


思い出しますか誰かの顔だとか息継ぎのない短距離泳で
(スコヲプさん)


たそがれない あかねささない ポエジイに甘えずほんとの日向を歩く
(安堂 霊さん)


コーヒーを残して帰る恋人とコントラバスが恋人のよう
(中牧正太さん)


あーん、ってされなかったらチャーハンにこれが合うって分からなかった
(伊舎堂 仁さん)


五ページの「君」があなたにそっくりでわたしは立ち止まったままでいる
(椋鳥さん)


(画面に映す都合上、作者の方の意図ではない部分で改行されている場合がございます。何卒ご容赦ください)


過去4回の放送で50首の歌を紹介させていただきました。

番組をやって気付いたのは、まだまだ紹介したい歌が山ほどあって、それでも時間が限られていること。そしてこの番組を何時間でもやれることでした。

紹介させていただいた全ての歌は、歌の巧拙や歌人さんの作歌歴など関係なく選びました。
この番組が出来たのも観てくださった方と素敵な歌を詠まれる歌人さんのおかげです。心から感謝いたします。
短歌やっぱりいいですね。楽しいですね。

余談ですが、番組タイトルを決めるにあたって、「〜のくせになまいきだ」の部分が某有名漫画のセリフをもじっているので、調べてみると漫画にはセリフ(そのセリフだけで何の漫画か分かる決めゼリフなど)に著作権がある場合があるらしく、このセリフの著作権の有無やら使用許可の可否やらを某漫画の出版社に伺って了承を得ました…
このセリフを使ったゲームソフトもあるとのことで、そちらのゲームの制作会社と販売元にも使用の了承を得たりもしました…
なので大手を振って安心してやってました。

最後にシロタアキラ氏、番組ロゴといろんな話と構成をありがとう。
ディレクターのさちさん、短歌良いじゃないですか、と言ってくれてありがとう。



#短歌 #ラジオ

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