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三体

2015年3月6日、冬富士登山中に3個の太陽が現れました。『幻日』です。珍しい気象現象ですが、ほんとうに太陽が3個出たらと想像してみます。

それは温暖化なんてものでなく、灼熱の大地となり、溶鉱炉のような地表で人類は一瞬のうちに蒸発してしまう。

ところが、3個の太陽は不規則な軌道をたどり、太陽の出ない暗黒、極寒の気候が長く続く時期もある。

その世界では、3個の太陽は人類が解決できない物理法則の問題を抱えます。

宇宙空間で同質量の物体が等間隔に並んだ場合、その軌道はカオスとなる古典(ニュートン)力学の大問題。互いに重力相互作用する三質点系の運動がどのようなものなのかを問う『三体問題』。全世界のコンピュータを動員しても計算しきれないと予想される問題から「カオス」と表現するしかない。

前述『人類と気候の10万年史』中川毅著(講談社)の記事で「二重振り子」を例にとって予想できない厳しい気候変動を説明しています。そこでは寒冷な気候と温暖な気候とが不規則に入れ替わった歴史を、福井県水月湖の湖底をボーリング調査で10万年の記録の残された「年縞」を分析し過去10万年の気候変動を調査しています。

これまで全世界での発行部数2900万部(地球往事三部作)のSFベストセラー『三体』劉慈欣著(翻訳; 大森望、光吉さくら、ワン・チャイ)を読んでみました。

とにかく長いが、おもしろい。バラク・オバマやマーク・ザッカーバーグ、ジェームズ・キャメロン、新海誠(劉慈欣も新海作品を見ており、日本アニメのロマンチックで詩的な表現を評価している)等が絶賛していると報道されると、いったん読みかけて中断してしまった読者たちに再度読み続ける気持ちをもたせたとか。

登場人物に中国人名が多くおぼえにくいので、手元に登場人物表や相関図を置いて読むとわかりやすい。出版社側もそれを察してか「登場人物表」カードが付属する。

『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』の著者ユヴァル・ノア・ハラリ 氏の言う「ホモ・デウス(神のヒト)へと自らをアップグレードする。」に共通する想像力があるように思えた。


西洋のキリスト教文化のフィルターの影響を受けていない中国人の感性は興味深い。西洋では科学技術の急激な進歩に対するより戻しを主張する人も多いが、彼は科学技術のイノベーションは一瞬たりとも止めてはならないと信じている。また幼年期に文化大革命を経験した著者だが、近現代中国史上、最悪の人間不信の時代の空気も作品に取り込まれている。

太陽活動の変化、火山噴火による細粒火山灰による寒冷化、感染症、戦争等、様々な危機を乗り越えて、ホモサピエンスはようやく20万年を経て生存を続けていますが、太陽系、宇宙全体の(反物質)エネルギー放出による環境変化や、それが紛争に利用された場合は人類が乗り越えることが不可能であると容易に想像できます。

【地球往事三部作】 

『三体』

文化大革命で精華大学の物理学教授、葉哲泰(イエ・ジョータイ)は、過激化した紅衛兵の教え子や付属中学の女子生徒、さらに妻からも「反革命」批判を受け、娘の天体物理学専攻の女子大生葉文潔(イエ・ウェンジェ)は目前で父親の残酷な公開処刑を目撃するところから始まる。
天体物理学者になった葉文潔は巨大パラボラアンテナを備える軍事基地にスカウトされる。そこで人類の将来に絶望し、宇宙に向けてメッセージを発信したところ、ケンタウルス座4光年先に三つの太陽を持つ「三体世界」より人類にとって衝撃の返信が届く。それらの太陽に飲み込まれる運命にある三体文明。

実際に太陽系から最も近い恒星は約4.3光年のケンタウルス座α星系で三重連星(ケンタウルス座α星系A、B、暗く小さな赤色矮星のプロキシマ・ケンタウリから成る)が観測されています。

『三体Ⅱ 黒暗森林 上・下』

三体世界は、人類より文明が発達しているがその星の気候は厳しく恒紀と乱紀が交互に訪れ、乱期には「脱水」して次の恒紀を長期間待たなければならないという。三体星人は、穏やかな気候の地球へ移り住むために400年以上をかけ地球に侵略戦隊を送り込む。地球では国連惑星防衛理事会(PDC)が4世紀先の戦いの準備を始める。すでに三体世界より数千の偵察物質「智子」(ソフォン)が地球上に届いており、それは原子より小さい物質でできている。2世紀の間に物理学にブレークスルーがあって、三体文明より高度な文明を手に入れたと勘違いして慢心した人類はあっけなく侵略戦隊「水滴」にやられてしまい人類滅亡の危機が訪れる。。。

『三体Ⅲ 死神永生』 はやく読みたい!

深淵の夜を過ごしても希望の朝は必ず来る。どんなに寒い冬を過ごしてもやがて春の喜びを感じることができることを人類はあたりまえに思っています。

感染症の蔓延で不自由な生活を強いられているこんな時期だからこそ「日常」のありがたさを肌で感じることができます。

気候変動はもっと敏感に、注意深く観察する必要があり、2万年前の縄文時代(新石器時代)以降、ホモ・サピエンスが急速に文明を発達させることができたのは地球がおだやかな気候が続いたからともいえます。

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