自分のためか、他人のためか。

 自分のために生きるのと、他人のために生きるのでは、どちらのほうが幸せになれるでしょうか。もっとも、自分のため、他人のためという言葉はあいまいです。幸せという言葉もそうです。何をもって自分のため、あるいは他人のためというのか。幸せとはそもそも何なのか。

 情けは人のためならず、という言葉があります。人のためにしたことは、まわりまわって自分にかえってくるという考えです。これを言い換えれば、人のためという体裁をとっていても、結局は自分のためなんだろうというシニカルな見方にもつながるわけですが…。

 実は、続きがあります。情けは人のためならず、おのが心の慰めと知れ。人にかけし恵みは忘れても、人の恩をば長く忘るな。…人のためにする行為は、自分の心の慰めにしていることを理解し、人にしてもらった恩は、長く心にとどめて忘れないようにしようというわけです。

 これ結構、好きな言葉です。そこには、人に対する過剰な期待がありません。きっと、誰かへの情けが報われなくても、その人を憎むことはないでしょう。それでいて、人からの情けに対しては素直な感謝があります。幸せとは何かということは、今まで生きてきて、まだつかみかねています。しかしながら、こうした姿勢は、なんとなく幸せにつながっているような気がしています。

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