2023/10/12 ②

思考は一旦負の道にいくと抑えることができず、あることないことを勝手に組み合わせ歪んだ真実を作り上げてしまいます。

俺は完全に冷静さを失いました。

さて、ご周知のとおり、俺は離婚を経験しています。その件でもAと話し合わなければならないこともあったのですがそれは置いておいて。

結婚生活におけるある種の後遺症みたいなものがいくつかあります。
・相手の機嫌に敏感になる
・とてつもなく我慢強くなる
・女の子は皆、感情がすべてを支配していて理不尽に扱われるのではないか? という疑念を抱く。

だいたいこんな感じですが、我慢強さはどこに行ってしまったのか、とにかく不安と焦りが増幅しつづけ気が気ではありませんでした。

その夜は眠ることができずずっと彼女からの返事を待つべくスマホにかじりついて過ごしていました。特に興味をわかせるような話題もなく彼女のツイートを話題にして会話をしようとしました。しかし彼女は以前その行為は嫌だ俺に告げていて、俺は禁を破ってしまったのでした。Aはより窮屈さを感じ、連絡はより疎遠になってしまいました。

出張2日目になり、俺はどんどんおかしな方向に精神が向いていき、理由のわからない心の距離の遠さに理不尽すら感じるようになっていきます。

情報がないため彼女のツイートを眺めて推測するしかありませんでした。相手の機嫌に敏感になる、という後遺症も手伝い、数時間に1回の返信は鮮度が落ちパサついた無味無臭になっていき、完全に我を失っていたように思います。

その夜、話があると切り出しました。
やんわりと聞き出せばよいものをこういう時だけ言葉を選ばずに単刀直入に切り出すのもなかなか自我の崩壊を感じます。

会う約束をした14日は会えるのかという質問をしました。

会えるという返事でした。

俺は安堵し、急に事の終息を図ろうとしました。会える、会いたいという言葉のなんて素敵なことでしょうか。麻薬のように数グラムでも天にも昇れるのだと感じます。

話って?

人の気持ちを推測するのはとても難しいことですが、おそらく彼女もハッキリと意見したかったことがあるのでしょう。俺が切り上げようとした話題に食い下がります。俺は少し不安になったと話しました。

彼女は嫌だということをされた。会いたいと言われ続けるのも含め窮屈だ、と。そして、彼女なりに悩んで出した結論が返信のペースを下げる、だったのでした。

俺は大きな勘違いをここでします。返信のペースを下げる。とても我慢していたことを爆発させて、俺に理由も聞かせず理不尽な対応をしてきた、と考えてしまったのです。

冷静になれば簡単に気がつくロジックでした。なんと愚かな、と思いますが当時の俺は、Aの優しさに気がつきませんでした。彼女は関係を壊さずに自分で解決できる道を模索し、俺の傲慢になっている部分に警鐘を鳴らしてくれていたのです。

それに気づかず、まぁ俺を思っての部分もあるのかな、とは思いながらも正直に溜め込まずに言ってほしかったと相手にどうしてほしいかを促してしまいました。相手に期待するのはおかしな話です。欲は身を滅ぼすと常々自分に言い聞かせていましたが、精神錯乱で横暴になっている俺は突っ走りました。

電話で一通りの話を聞き、謝罪をしました。今になるとまったく冷静さを欠いていておかしな謝罪だったと思います。自分の言いたいことを言って形だけの謝罪をし、相手の意見を聞いて納得しつつも具体のない、改善するという言葉で謝罪をしました。

本当に思い出しただけで顔から火が出ますが頭のネジが外れてしまうと人間は制御できなくなるものだなと感じます。

翌日、昨日言いすぎたという部分もあったのでしょう、少し柔らかくなった彼女の返事がきました。何か悩んでいるものもありました。厳しさと優しさの狭間で苦しんでいました。俺はそこでも彼女がアドバイスを求めていると思い、歳上として何かせねばという感情から物言いをしました。

その傲慢な態度からさらに彼女の感情はそっぽを向き収拾がつかない事態にまで発展したのです。

連日連夜、理不尽にさらされ(たと思っている)、何が根本の原因なのかイマイチ理解できない俺。不安とストレスはピークに達し吐き気を催しながら仕事をしていました。仕事では笑顔で対応しくだらない冗談に笑っていました。笑わなければならないことの辛さを味わいながら。

支離滅裂な返答を繰り返し謝罪を繰り返しました。女神像にすがる狂信者のように。そこにロジックはなく、言い知れぬ不安を取り除いてくれ、と。それだけでした。

そこに女神の微笑みはありません。

今となっては恥ずかしいのと笑ってしまうような状況でしたが、当時の、いや数時間前の俺はオロオロするばかりで、その辺のカメムシのほうがよっぽどロジカルに行動できているのではないかと感じます。

一度離れた男女がもう戻ることはない、とあきらめにも似たような心境ではありますが、この期間に俺の中でどう思いが変わるのか。遠くにいる自分を見つめてみようと思います。

ではまた。

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