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【窯まつり・絵付】の道行

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窯まつりに向けた若い絵付師達と上出惠悟とのやりとり。キーワードは「伝えること」、「歴史と繋がること」、「長右衛門窯らしさ」、そしてラストには「なぜ手で作るのか」という大きな問いに…
本マガジンは「上出長右衛門窯の道行」からの抜粋です。月額500円/初月無料の「上出長右衛門窯の道行…
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#窯まつり

【窯まつり・絵付】の道行#8「犬も恐れる20代」

こんにちは。上出惠悟です。 現代の「働く」という感覚からは随分ズレているかもしれませんが、職人の仕事は生きることの延長線にあって欲しいと私は考えています。それを教えてくれたのは昨年亡くなった轆轤(ろくろ)師の河田の姿です。河田は何十年も長右衛門窯の敷地内で畑を耕して野菜を育てていました。轆轤仕事を終えれば暗くなるまで畑仕事をし、休日も窯に来てはよく土を触っていました。腕に技術を持っている職人という生き方は、全てがその人の営為の中にあるようで、それはとても理想的で誇り高く見え

【窯まつり・絵付】の道行#6「基本と応用」

こんにちは。上出惠悟です。 私の住む石川県は日本で最も多く雷が発生する地域だそうです。雷の研究者にとっては非常に良い環境だというような事を以前に耳にしたことがあります。しかし雷を嫌う犬にとっては最悪な環境だと言えるかもしれません。私が飼っている二匹の小さな犬達も異常に雷を怖がっていつもぶるぶると震えて可哀想です。特に兄のかめちよは雷が鳴ると恐れおののき、我を失ったかのように高いところへ登りたがるので、四国のブリーダーさんから引き取って石川に連れて来たことを何だか気の毒に感じ

【窯まつり・絵付】の道行#4「伝えること」

こんにちは。上出惠悟です。 金沢に上出長右衛門窯のお店(その名も金沢長右衛門)ができたことで、これまで以上に私達のことを多くの方に知ってもらう機会が増えました。また外国の方も驚く程に多く旅行されているので、コミニュケーションの仕方も今後変わって来ることを実感しています。これまで日本の方に対しては「九谷焼のことを知っている」もしくは「聞いたことがある」という大きな前提がありましたが、外国の方にはそれがありません。オーセンティックなものを作り続けて来たのであれば然に非ずかもしれ

【窯まつり・絵付】の道行#3「窯まつり限定品のデザイン」

こんにちは。上出惠悟です。 ちょろちょろと田圃に水が張られるといよいよ窯まつりがやって来ます。毎日寒暖の差が激しく気候がいつもと違う感じがしますが、まつりが開催される5月2日から5日は過ごしやすいお天気が続くようにと願うばかりです。 窯まつりの企画や運営は窯まつり実行委員が進めますが、直前にもなれば窯のスタッフ総動員で、お客様を窯へお迎えする準備をします。大変な作業ですが、職人たちはどこかわくわくと楽しそうな雰囲気です。春のおまつりは夏や秋とは違う喜びがある気がします。今

【窯まつり・絵付】の道行#2「なぜ人の手で作るのか」

こんにちは。上出惠悟です。 2019年の夏にEN TEAの丸若裕俊さんに「楽しい会」だと連れて行かれたお店で私は2人と出会いました。場所は白金にあるお店。 1人は千葉麻里絵さん、GEM by motoというお店で長年お店に立ちながら、全国の日本酒の蔵元を巡り日本酒にまつわるプロデュースや書籍の出版などを精力的に行っている方です。最近、独立されてEUREKA!という素敵なお店を西麻布に昨年の11月にオープンされました。 そしてもう1人が山下貴嗣さんです。2010年頃より世

【窯まつり・絵付】の道行#1「心の絵」

こんにちは。上出惠悟です。 2018年のパリ、ポンピドゥーセンター(国立近代美術館)で私は1枚の油絵に目を奪われました。それは「La quai de Paris in Rouen」という絵で作者はアルベール・マルケ(1875年-1947年)。大きな橋のかかった埠頭を描いた風景画でした。日頃絵を見て、巧いと思うことはあっても、好きだと感じる絵に出会うことはあまり多くありません。私は何と良い絵だろうとしばらく動けなくなりました。 日本での知名度はそれ程大きくなく、この時初めて