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古米の話

毎年、実家から新米が届く。特に米農家でもないのだが、毎年どこかから送られてくるらしい。詳しいことは興味ないので知らない。いずれにせよ私は白米をこよなく愛する日本人なので、毎年目の前に新米があるということに感謝をし、幸せなひと時を味わう。

しかし、今年は何かが違った。

一昨年、私は嫁いだのだが、どうやら私がいなくなりお米の消費量が激減してしまったらしい。どんだけ食べてるんだ、自分。それでお米が余ってしまってほとほと困っているという話を実母より聞いた。どうやら実家にお米が30Kg余っているらしい。どうしたらそんな量余るんだろう。とりあえず、白米を愛する私はあれば食べるので、送ってほしいとお願いした。

これがすべての始まりだったのだ。

送られてきた段ボールをあけて確認した。そうするとなんとも言い難い、なんか古い家の台所近くの納戸のような香りがした。段ボールとは時に荷物を詰めた場所の空気も運んでくる。そこで、「実家ってこんな匂いだったかな、いや、でも私これ詰めてるところに居合わせたけど、そんなことなかった気がするんだけどな」と思いを巡らせつつ、さほど気にしなかった。すると、さまざまなお菓子などに混ざって、ビニール袋1枚に入れられたお米が入っていた。よく見ると穴があいており、下に入れられたお菓子の箱の上に見事な山が出来上がっている。仕方なく、私は新米がすでに入っている米びつの中に、そのお米を入れた。

翌朝、炊かれたご飯を食べようと炊飯器を開けた瞬間、段ボールをあけたときと同じ類のにおいが鼻をついた。

そう、送られてきたヤツ、実家で余っていた30Kgのお米は古米だったのである。それに気づいた際にハッとした。そういわれてみれば、実家に帰ったとき茶色くてまずい白米がでてきたことがあった。白米のなかでも、新米、かつ炊き立ての真っ白で粒が立っているご飯が大好きな私は(ちなみに炊かれてから時間のたったご飯は食べられない)、断固食べるのを拒否した。両親に怒られた。贅沢言うなと。嫁に行った後どうすんだと。夫に食べさせるわ!と。夫をなんだと思ってるんだ!と。この後、当時まだ見ぬ夫への扱いをめぐって親子喧嘩に発展したことは想像に難くないだろう。ちなみに実際は夫婦2人ともお米大好きすぎて一瞬でお米がなくなるので、古くなるなんてことはなかった。夫、なんかごめん。ありがとう。

さて、我が家に送られてきてしまったものは仕方ない。夫も捨てたいと言っていたが、今や新米と古米が仲良く米びつのなかで「こんにちは」しているのである。捨てるわけにはいかない。そこで、お米大好きな我々夫婦は古米研究を始めた。何かあるはずだ。おいしく食べる方法があるはずなんだ。だって彼らだって輝いていた時間がちょっとすぎてしまっただけの白米なんだもの!!!!!!

1日目。戦いのゴングは鳴り響いた。

理系の夫はまず、炊き方をググり、お酢と蜂蜜を入れて炊いてみた。結果、においは消せないし、なんとも言えない香りがした。ごめん。まずい。敗北。

お茶漬けでごまかし、どうにか食べて出勤した。

私は、どうにか味をごまかせないか、お米料理の方向で頑張ってみた。だってお茶漬けでごまかせるならほかにもあるでしょ。こんなの私は食べられませんわ!ということで、炒飯にしてみた。いや、お茶漬けは好きだよ。実家からもらったお高いハムもキャベツも余ってたし。そしたら炒飯が普通の炒飯になった。つまり、芳醇な香りは一切しなかった。勝利。

勝因:夫と油でコーティングするのがいいのではないかという話になった。

2日目。頭脳戦。

理系の夫は次に、お酢と蜂蜜と日本酒を入れてみた。結果、昨日の香りがさらによく分からない芳醇な香りになった。ごめん。うってなる。敗北。

お茶漬けでごまかし、どうにか食べて出勤した。(再)

私は昨日の勝因を参考に今度はビビンバを作ってみようとした。だが、体調を崩し、それどころではなくなったので、夫が作った。ありがとう。においもせず、とても美味しかった。勝利。

勝因:やはり、油では…?

3日目。体力戦。

理系の夫、この戦いに飽きたため、敗北。私の疑問はなぜここまで油いけるって結果にたどり着いたのに、炊く時点で頑なに油を入れたがらないのか。

私は本当に油なのか比較対象がほしいため、研究を続行。基本的にお米には油を使わないリゾットにしてみた。チーズとブロッコリーとハムとにんにくを入れた。これが、味はおいしいが、口に入れた後の風味にはヤツの気配が消し切れていなかった。しかも本来美味しそうな香りになるはずのチーズの香りがヤツと混ざって最悪な状態になっていた。夫はこれでもかっていうくらいに胡椒をかけていた。敗北。

結論:古米はやはり油でコーティングしないと勝てない。

逆を言えば、油でコーティングしてしまえば、美味しかった。特に炒飯などパラパラさせたいものは本来古米のほうがもともと水が少ないため合うという人もネット上にはいた。私は料理上手ではないので分からない。

今回に関しては、古米さんが新米さんと混ざったからこそ、ここまで研究したのであって、大変有意義であったと思う。敬意を表してさん付けをする。これからは古米さんも無駄にせず食べられる。ただ、たまには普通の美味しい白米を食べたいので、古米さんを今後食べる際は別保管にして食べていきたい。

というわけで、父、母、私は楽しくやってるので、安心してください。

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