転生したら膝枕だった件~ドラマ編

はじめに

原作プロットを公開してくださった今井雅子先生
ボイスドラマにするための脚色をお許しくださったかわい いねこさんに、改めてお礼を申し上げます。

注意事項


配信された音声、文章や画像などの無断転載、自作発言は絶対にやめてください

多少のアドリブや語尾を変える程度の変更は許容出来ますが、作品の世界観を大きく変えての上演などはご遠慮ください。
台本を使用してのボイスドラマの作成は事前に相談してください。
誹謗中傷などは絶対にしないでください。

原本は脚本家の今井雅子様による創作「膝枕」を二次利用させていただいております。
本作を三次使用される場合は
私へのご連絡、及び
原本作者、二次創作者(さんがつ亭しょこら)の名前を提示してください。
内容が特に公序良俗的に問題ない限り
ご連絡いただきさえすればお断りすることはありません

複数劇を行う際には
すべての演者が明確に参加を了承している事を確認してください。

特にclubhouseでの上演をされる場合には次の手順をお守りください。

私の他に今井雅子様への上演ご連絡
clubhouse内膝枕リレーへの加入
(ルーム被りを防ぐため)
なるべくスケジュールからルームを開くこと
その際、ホストクラブに「膝枕リレー」を選択すること(クラブメンバーにも通知が届き、ルームへの訪問者が増えます。)
ルーム内で本作の(note等)直接のリンクを提示していただくこと。

その他のプラットフォームなどで上演する際にも作者名・二次創作者名、台本名、URLのリンク提示をよろしくお願いいたします。

「転生したら膝枕だった件」ボイスドラマ編

原作:今井雅子
二次創作「ウエストサイドストーリー」:やまねたけし
三次創作:かわい いねこ
脚色:nonkyuru、さんがつ亭しょこら、立花遥奈
「転生したら膝枕だった件」

ナレーション
俺は暗闇の中で目覚めた。
狭い箱の中に閉じ込められているのか体の自由が利かない。
小刻みな振動、馬のひづめの音、
これだけの情報ではここがどこなのか俺にはわからない。
やがてひずめの音が止み、俺は箱ごと人の手でどこかへ運ばれていく。
従者「お願いいたします」
従者「かしこまりました」
ナレ
箱の蓋が開いて、眩しい光が入ってくる。
2本の手がぬっと俺の脇を通っていく。
俺は箱からゆっくり持ち上げられ、今度はゆっくりと降ろされた。
眩しさで周りが見えていなかったが暫くすると目が明るさに慣れて・・・
なんだこの姿は!?・・・
腰から下だけしかない!、しかも正座した姿勢で固定されている。
テレビや写真でしか見たことのないヨーロッパ風のお城の大広間の真ん中にポツンと置かれている俺、そして
目の前にはトランプの王様、いや、リアルに王様だろう。
周りには偉そうな大臣らしき人物が数名、
等間隔に直立不動の姿勢で立っている護衛の兵士たち。
周囲の視線は俺に集中している。まるで見世物だな、俺は・・・

だんだんと冷静になってきた頭が動き始めた。
転生だ、これはラノベ界の王道、異世界転生だ!
だが、なぜ下半身だけの姿になってる??
スライムや蜘蛛に転生した話なら知っているが、
これでは定番の冒険や魔物を倒したり美女と結ばれる展開は期待できない!俺を召喚した奴に小一時間説教したい気分だ。
俺を恭しく箱から取り出した男は王の前に進み出た。
長いサラサラの銀髪に菫色の瞳。
背の高い痩身に丈の長いローブを身に着けている。
こんな美しい人間は見たことがない。
いや、人間ではないのかもしれない。
見た目は男性だが女性的でも中性的でもあり不思議な存在感だ。
王様
魔導士シュブールよ、ご苦労であった。
シュブール
ははっ!
王様、こちらが異世界から召喚いたしました膝枕でございます。
ナレ
シュブールという魔導士は厳かに、だが自信に満ちた声でのたまった。
王様
さすが我が国筆頭の魔導士、召喚は見事に成功したようだな。
シュブール
恐れ入ります
王様
では膝枕を姫に謁見させよう、ヒサコをこちらへ!
ナレ
広間の入り口の隅で不安げにこちらを見ている少女がいる。
異世界!美少女!王道展開じゃないか!
・・・いや、まてよ、彼女の様子が変だ。
きれいな女の子なのに腰が引けているし目がキョドっている。
広間に入ってくるように促されてもなかなか入ろうとしない。
王様はやれやれと言った感じで魔導士の方に目配せをした。
シュブール
姫様、ご安心くださいませ、私がそばにおります。
ナレ
落ち着きなくあちこちを見回していた彼女がとうとう口を開いた。
ヒサコ姫
シュ・・シュブール、お、お、お勤めご苦労であった。
い、今そちらに行きまぁぁっ!
ナレ
一歩踏み出した足にドレスの裾が引っかかり、
姫は壮大に広間の床に突っ伏した
ヒサコ姫
やらかした、やらかしましたわ私・・・
皆の前でこの醜態!死をもって全てを闇に葬り去りましょう!
・・・闇の力よ、我が杖に集え、その力をもってこの場から・・・
ナレ
約一名を除いた広間の全員が「また闇落ちかよ」といった表情で
困惑していたのだが・・・
シュブール
姫、姫はまだ闇の魔法を何一つ会得しておられません。詠唱をなさっても杖から煙がでるだけですからおやめください
ナレ
魔導士が言うが早いか姫の杖の先から小さい火花がポンと音を立てて
ピンク色の煙を漂わせた。
シュブール
ヒサコ姫、こちらに持参致しましたものが、姫のために異世界より召喚いたしました膝枕でございます。この膝枕、きっと姫のお心をお慰めいたしましょう
ナレ
ようやく俺は理解した。
俺はメンヘラコミュ症美少女姫のためだけに膝枕として転生したのだ。
おそらくこのイケメン魔導士の手によって・・・
ヒサコ姫
シュブール、あ、ありがとう。一応礼は言っておきますが私、別に膝枕が欲しくて欲しくてたまらなかったわけではありませんのよ!
ナレ
それにしてもこの姫ツンデレである
シュブール
わかっております、では姫と膝枕をお部屋に・・・

ナレ
部屋で二人きりになったとたん姫は広間の時と打って変わって俺に向かっていかにも興味津々な態度を取り始めた。
ヒサコ姫
ああ!シュブール!ようやく私の望みを叶えてくれましたわ!
見てこの脚線美!運んでいる間に傷の一つでもつけていないわよね!
もし傷がついたりしていたら許さないわ。
ええ、ええ大丈夫、問題ないわ!でも触れることが怖ろしい!
私の心の中をこの膝枕に見られているようで怖ろしい!
だって、こんなにうつくしいんだもの!!
まさに運命的な出会いね!!
この足の前では私も美しくいなければ。
例えどんなことがあろうともね。
もし先ほどのような醜態をさらしてしまったら・・・
今度こそ私は闇の魔法で・・・
ナレ
またもや中二病が発動するかしないかのタイミングで
侍女たちが部屋に入ってきた。
俺の着るものを姫に選んでもらいたいらしい。
ヒサコ姫
そ、そうですわね……着るものなのですが、
殿方の服ってよくわからなくて…
今はピチピチのショートパンツをお召しになってらっしゃるのですが、
正直なことを申しますと、私の好みではありませんわ。
私的にはこれなんかどうかと思うのですが・・・
ナレ
やめろwバーゲンセールでも間違いなく売れ残りそうな服ばかり選ぶな。
そもそもだれが持ってきた。作ったやつのセンスを疑うレベルだぞ。
見ろ、侍女が笑いをこらえて目線を逸らせてるじゃないか。
まだピチピチのショートパンツの方が65535倍マシだ
とりあえず全力で拒否を示すため俺は微動だにしなかった。
あ、動けなかったんだ俺
ヒサ子姫
戸惑われるのも致し方ありませんよね。どうせ私のファッションセンスは最低最悪この世に生まれてきたことを後悔するレベルですもの。闇に葬り去りますかどうしますかそうしましょうか・・・
ナレ
何勝手に闇堕ちしてるんだコイツ
俺はどうにかこの場を納めなくてはと
考えを巡らせたが自分で動けるわけもなく・・・
そうだ侍女に選んでもらえばいいじゃないか!
俺は膝をパチパチと鳴らせて侍女の方を指し、
またパチパチとして侍女を指す仕草を何度も繰り返した。
ヒサ子
あ、ああ!侍女たちに選んでもらいましょう
(最初から選んでもらえばこんなことにブチブチ・・・
ナレ
次の日も、そのまた次の日もヒサコ姫は俺に頭を預けるでもなく
近づいてきては触れようとしてまた離れる。
走って逃げて躓いて闇落ちして出来もしない暗黒呪文を詠唱して
杖から煙か花が飛び出るという日が何日か続いた。
少し変わってきたことといえば
ヒサコ姫は少しずつ俺に話しかけるようになったことだ。
ヒサコ姫
シュブールが水晶玉の向こうに貴方の姿を見せてくれた時から
私は貴方の膝が愛おしく思えてたまりませんでしたの。
でも姫という立場の私が人間の殿方に憧れるのではなく
膝に惹かれてしまうなど・・・知られるわけにはいきませんでした。
ナレ
いや姫、カミングアウトみたいに言ってますけどお城中バレバレですが?メンヘラコミュ障膝フェチってみんな知ってますよ口にしないだけで
ヒサ子姫
でも、貴方がここに来てから私素敵な夢を見るようになりましたの!
どんな夢か聞きたいですか?そうですかどうしても話してほしいですか
ナレ
いえ、俺は別にどうでもいいですけど
ヒサ子姫
そこまでおっしゃるならお話ししましょう
私、今朝、柔らかなマシュマロにうずもれる夢を見ましたの
とてもふわふわなマシュマロに頭を預けて・・・幸せでしたわ!
昨日はタンポポの綿毛、その前の日は巨大なぬいぐるみ!
どの夢も私はそれを枕にして夢の中でまた夢を見るのです!
人の姿をした貴方に膝枕をしてもらう夢を・・・
ナレ
姫・・・そんなに俺のことを・・・
かわいいじゃないか!闇落ちさえしなければ
ヒサコ姫
そこで私決めましたの!今日は貴方の服を選びに町へ出かけませんこと?!きっと貴方にお似合いの服を選んで差し上げますわ!
ナレ
姫が俺のために服を選んでくれる・・・
普通ならうれしいとか、なんという僥倖とでもいうべきなのだろうが
変なフラグが立つことしか想像できない。
俺と姫だけで行くと絶対にろくなことが起きそうにない
侍女たちはあわただしく動き回っていて一緒に随行してくれそうにない
たぶん巻き込まれたくないから逃げ回っているんだろう。
せめてあの魔導士のシュブールがついてきてくれたら・・・
ヒサ子姫
そうですわ!シュブールならきっと殿方にふさわしい素敵な服を選んでくれますわ。(拍手二回)シュブールをここへ!
ナレ
え?通じた?いや同じ結論に至っただけだろうがとりあえずは助かった
これで町の平和も保たれる。

俺と姫、そしてシュブールは町へ出かけた。町には活気があり姫が通ると人々は自然にお辞儀をしている。
正しく統治された平和な国であることは俺にもわかる。
ヒサコ姫 
どのお店がいいかしら?どこも私の行きつけのお店なんですよ。
こちらのブティックは特にお気に入り。
これなんかいかが?
ふふふ、かわいいでしょ♡
ナレ 
なるほど、見たこともないようなデザインだ。
姫には俺がフランス人形か何かに見えているのか?
シュブールがにやけ顔で、姫に渡されたエプロン付きのミニスカートを俺に履かせてきた。
ピンクのフリフリの…たしかに可愛らしいスカートだ。履くのが俺でさえなければ・・・
ヒサコ姫
わぁあ!!すてき!ピンク色がよく
似合いますわ!!!
ナレ
裾から俺の膝小僧が覗いているのが死にそうなくらい恥ずかしいぞ。
シュブール
結構似合ってますよ
ナレ
近寄ってくる気配も感じさせずにシュブールが俺のそばに来て
姫には聞こえない様に囁いてきた。サラサラの銀髪が俺の膝をくすぐる。悪くない、いや、待て男だぞこいつは・・・
ヒサコ姫
こういうのも似合いそうですね。いかがです?
ナレ
また別の可愛らしい服。ひらひらが膝頭にあたって変な感じだ。
女物を着せることで俺をからかっているのだろうか・・・
と最初は思ったのだが、姫の瞳はキラキラと輝いていて、
表情はいたって真剣だ。
姫なりに一生懸命考えてくれているのだろうが、ファッションに興味のない俺でもわかるくらい姫のセンスは壊滅的だ。これでは店に来た意味がない・・・
彼女とにやけ顔のシュブールにされるがままの状況に、膝頭が震える。
シュブール
姫、膝枕の膝の様子が!
ナレ
膝枕の膝ってwただの膝枕でいいだろ常考
ヒサコ姫
まあ、どうして震えているの?
シュブール、私はもしかして彼に似合う服を選べていないのかしら!?
そんな…将来の伴侶となるであろう方にもピッタリな服を選ぶこともできないなんて…ああ、私はダメな女だわ!!!
ダメダメだわ、センスがないことが恥ずかしい…消えてしまいたい!
私なんて、私なんて私なんて私なんて私なんて…!!!
ナレ
またか・・・でも、将来の伴侶…???ってどういうことだ?
シュブール
姫!落ち着いてください!大丈夫!!プッ、姫のセンスは抜群です!!
ナレ
シュブールは笑いを堪えながら姫をフォローするが、もはやその感情はダダ漏れである。
ヒサコ姫
私なんて私なんて私なんて私なんて私なんて私なんて私なんて私なんて私なんて私なんて私なんて私なんて
ナレ
どうしたものか…俺はとても残念そうにしている姫の様子が見ていられずに、とっさに膝を使って嬉しそうなステップを踏んだ。
少し膝が痛いが姫を慰めるためなら仕方がない。
ヒサコ姫
あ、、もしかしてやっぱり気に入ってくれたの?そうでしょ?いいでしょう?あなたの美しい脚にはこのスカートがよく似合うと思ってたのよ。私ったら天才!!!
ナレ
姫の表情が急に明るくなり、その場で一緒にステップを踏んでくれた。
感情の起伏が激しい子なんだろう。
ヒサコ姫
嬉しいわ!!そんなに気に入ってくれたならお城まで履いていきましょう!!!
ショッキングピンクがとってもよく似合っていますわ!
ナレ
ショッキングピンクのスカートは…というか女物の服は落ち着かないが、姫が喜んでいるし、
中世ヨーロッパの世界観ならこれもありなのかと自分を納得させた。
兎にも角にも、新しい衣装を着た俺を姫はとても褒めてくれた。

ヒサコ姫
いいですね。すごく似合っています。もう我慢できません。
恥ずかしいけれど、あなたの膝に頭をのせてもいいですか・・・
ナレ
突然のことで驚きつつ、俺は姫の頭を受け入れた。
これこそが膝枕の本懐なのかもしれない。
スカートの裾から飛び出した膝を、姫はやさしくなでながら呟いた。
ヒサコ姫
この膝があればもう何もいりません
ナレ
そして姫は膝を枕にしたまま眠りについた。
膝枕として初めての夜・・・誰かが一緒にいてくれることがこんなに幸せな事とは!もう暗い箱の中にひとり閉じ込められたくない!!
もうあんな孤独な世界に戻るのはいやだ!
どれだけ時間がたったのか。俺はうとうとと眠りについていたようだ
俺の目の前には姫が眠って・・・いや確かに姫が眠っているのだが何かが違う。
俺が姫を見下ろしている?俺は姫を見上げているはずだが?
腰から上の体も腕もある。手で顔のあたりを触ることができる。
元の体に戻ったのか?
明かりをつけて確かめてみたい!でも姫が眠っているので動けない。
アタフタしていると姫が目を覚ました、いや寝ぼけているだけのようだが、姫は俺の方をずっと見ている。
ヒサコ姫
私、また貴方の膝で眠っている夢を見ているのですね・・・
ずっとこの夢が覚めなければいいのに・・・
ナレ
天にも昇る気持ちだ、俺は姫のためにこの膝を捧げることを誓った。
ふと部屋の隅で誰かの視線を感じた。だが気配は一瞬で消えてしまった。
俺は再び眠りに落ちて、朝になるとまた膝枕の姿に戻っていた。
俺も夢を見ていたのか、それとも何かの魔法なのか。

姫は家庭教師の下で勉強したり、公務があったりと、あの性格の割には毎日真面目に激務をこなしていた。
だが、部屋に戻ってくると姫は俺の膝に飛び込んできてくれた。
俺も姫が戻ってくることを心待ちにするようになった。
膝を少しずつなら動かせることに気付いた俺は部屋の前に移動して姫を待つことにした。
ヒサコ姫
ただいま!
ナレ
姫は俺の膝に飛び込んできた。
ヒサコ姫 
聞いてください。今日はとても忙しかったのです。従者たちだけではなくお客様にまで、作り笑いを浮かべるのに疲れてしまったわ。
でも、あなたの前でなら心から笑える。
今日も一日中あなたのことを考えていたわ。だいすきな運命の人♡
ナレ
俺に膝枕をされながら、姫はその日の出来事を鬱々と、
しかし俺への愛情を込めながら話してくれた。
まあ、必ずしもおもしろいとは思わないが、一生懸命さは伝わってきた。
俺は膝の動かし方、震わせ方を微妙に変えることで
姫にリアクションした。
そうすると姫もどんどん話してくれるようになった
ヒサコ姫
私なんかの話、面白いかしら?
ナレ
俺は膝頭を合わせて拍手した。
私なんか、なんて言わないでくれという気持ちを込めて。
ヒサコ姫
ありがとう。あなたといるおかげで私、本来の自分を取り戻せている気がする。
ナレ
姫のコミュ症&メンヘラ感はいつの間にかどこかに行ってしまい、
声にも表情にも自信があふれるようになった。
そしてもともと美しい姫なので、その美しさは一層輝きを増していった。
こんな毎日がずっと続けばいいのにとおもっていたが、
、俺たちの幸せな時間は長くは続かなかった。

その日は隣国に姫とシュブールが外交のために
朝から出かけていたのだが、帰りがいつもより遅かった。
ヒサコ姫
ただいまぁ
ナレ
姫は俺の膝に頭を乗せると言った。
ヒサコ姫
今日は隣国の王子に会ってきたの。
とても疲れたけれど、王子はとてもいい人。
まるであなたみたいに優しくて素敵。
けれど・・・やっぱりあなたの膝枕がいちばんですわ。
ナレ
「やっぱり」とはどういうことだ?
俺は膝をこわばらせた。。
姫も俺の変化に気づいたようだ。目を逸らせてよそよそしい
その時、女官が鳴らすベルの音が聞こえた。
姫は驚いて飛び起きた。反動が膝に伝わり、脛に痛みが走った。
女官たちが入ってくると、姫の身支度をはじめた。
姫は完璧にドレスアップすると、女官たちと出て行った。
俺は嫌な予感がした。
膝を小刻みに動かして、姫の後を追おうと、少し開いたドアから外に出た。
しかし広い城の中はどこがどこだかわからない。
俺は懸命に膝を動かした。
動くたびにすねが擦れ、前に進めば膝頭が打ち身になった。
俺はとうとう力尽き、意識を失った。
気が付くと俺は姫の部屋で姫と女官たちが俺の傷ついた膝や
脛に薬を塗ったり包帯を巻いたりしていた。
俺は膝をこすりあわせていじけて見せた。
ヒサコ姫
焼きもちを・・・焼いてくれているのですか?
ナレ
姫は俺を抱き寄せ、傷だらけの膝をそっと指で撫でてくれた。
俺は左右の膝頭をぎゅっと合わせた。それから膝をこすり合わせて姫を誘った。 
ヒサコ姫
いいのですか? こんなに傷だらけなのに
ナレ
「いいよ」と言いたいのに、声を出せないことが
これほどくやしいことだとは。姫には想像がつかないだろう。
代わりに俺は左右の膝をかわるがわる動かした。
姫は打ち身と擦り傷を避けて、俺の膝にそっと頭を預けた。
ヒサコ姫
やっぱり、あなたの膝がいちばんです・・・
ナレ
その夜、姫は俺の膝の上で一晩中泣き続けた

数日後、なんと、国王からヒサコ姫と隣国の王子との婚姻が決まったと正式に発表された。そして俺の元にもシュブールを通して知らせが届いた。
シュブール
残念です…お気の毒に。あなたと姫のやりとりを見るのが、
私は好きでした。
王様
膝枕よ、姫とお前の関係は今日までとする。
あの子は隣国の王子と結婚することになった。
ワシが決めたのではない。ヒサコ自身が決断したことだ。
これまでご苦労であった。
ヒサコ姫
ごめんなさい。これ以上一緒にはいられないのです。
今まで本当にありがとう。あなたの膝は私の心の支えでした。
ただ、いつまでもそばにはいられないのです。
王様
ヒサコ、別れを。
ヒサコ姫
はい、お父様。

さようなら、愛しい人。
あなたの幸せを心から願っています。
ナレ
姫は俺の膝頭に口づけをすると、俺の体を持ち上げた。
俺は姫の手によって元の箱に戻された。

俺は絶望に打ちひしがれた中、城にやってきたときの様に馬車に乗せられ何処かへと運ばれていく。
そしてごみでも捨てるかのように放り投げられ。馬車は走り去っていった。

幾時間が経っただろう。
真っ暗闇の中、雨が降ってきた。俺の代わりに空が泣いている気がした。
箱の隙間から入った雫がスカートの裾を濡らす。
俺は雨の寒さと、捨てられた悔しさと情けなさで膝を震わせた。
すると遠くからやってきた馬車が目の前で止まる音が聞こえた。
シュブール
間に合いましたね。ああ、何と可哀そうに。
ナレ
俺を探してくれているのか?
俺は自分の存在をアピールするために膝頭で箱を蹴った。
俺は箱ごと馬車に載せられ再びどこかへ運ばれていく。
シュブール
うわっ!
ナレ
という驚きの声と同時に光が差し込んだ。
男が蓋を開けたのだ。
驚くのも無理もない。
俺の膝は暴れたせいで血まみれになっていたのだ。
シュブール
だ、大丈夫ですか?
ナレ
男の声が聞こえた。
心配してくれているようだ。
魔導士のシュブールだった。
シュブール
早く手当てしないと!

ナレ
彼は俺をやさしく抱き上げ、奥の部屋へ連れて行った。
膝から滴り落ちた血が床に落ちないようローブで受け止めてくれた。
俺の膝に傷薬を塗りながら、彼は申し訳なさそうに言った。
シュブール
大丈夫ですか? しみていませんか?ごめんなさい
やはり、あなたにはすべてをお話ししなければなりませんね。
実はヒサコ姫は王家によくありがちなことなのですが、
隣国の王子と結婚することが以前より決まっておりました。
ところが貴方もご存じの通り同世代の男性とうまくコミュニケーションを取れない性格のため
姫御本人にも嫁ぎ先にも辛い結果になることは目に見えていました。
そこで王は私にヒサコ姫のコミュ症をどうにかするよう命じられました。
ナレ
俺は理解した、いや、理解したつもりだった。
だが、シュブールが次に発した言葉は、俺を混乱させるには十分すぎた。
シュブール
私は以前から脚線の美しい異世界に住む貴方をどうしてもこの世界に召喚したいと思っていました。召喚術は魔力を大きく消費する上に悪意を伴う召還を防ぐため、国王の承諾なしには執り行うことが許されない術式とされています。
そのため、私的な目的のために行うことなど許されるはずもなくひとり悶々としていたのですが・・・
「ヒサコ姫の婚儀のために」という大義名分を手に入れた私は、堂々と貴方を膝枕として召喚できた、という訳です。
ナレ
いや、コイツは何を言っている?
それなら俺は元の姿のまま召喚してくれても良かったんじゃないか?膝枕くらいいくらでもしてやるぞ?
いや、今からでもそうしてくれ!
そもそも、姫が俺を手放さなかったらどうするつもりだったんだ?
シュブール
ヒサコ姫が膝枕をお気に召してくださるかどうかは正直私にとっても
賭けでした。
あのメンヘラコミュ障の姫が膝枕をひと目見て
自分はまともな扱いをされていないと闇落ちでもしないか、
かと言って、元の姿のまま貴方を召喚して姫が貴方のことを
一人の男性として好意を持ってしまい婚約が破棄にでもなろうものなら
私は王から処罰されることは間違いありません。
ですが、姫が男性への拒否反応さえ克服すれば、
容姿は問題ないのですから・・・
そこで初めて姫が貴方の膝で眠りについた夜、
私は貴方を元の姿に戻してみたのです。
あの時姫は間違いなく貴方に恋をしておられました。
恋・・・あのメンヘラコミュ障の姫が人間の男性に恋をされたのです。
ナレ
そうか、姫は本当に俺に恋心を抱いてくれていたのか、
あの時、元の姿で姫と逃げていればこんなことには・・・
いや、そんなにうまくいくはずがない。
今となってはもうどうでもいいことだ・・・
シュブール
姫は膝枕を大変お気に召され、コミ症も克服、
自分に自信を持たれるようになりました。
あとはどうやって姫と貴方を遠ざけるか、答えは簡単です。
隣国の王子に姫が理想とする男性になって頂くことです。
私は何度も隣国に赴き、容姿、言葉遣い、しぐさなどあらゆる面から姫の理想の男性になっていただくよう努力しました。
姫は膝枕の貴方より目の前の、理想とする姿をした王子との婚約を選ばれた。予想以上の結果です。
そして役目を終えた貴方は私のもとに帰ってきた、という訳です。
おかえり。これでもう貴方は私のものだ。
ナレ
魔導士は長い指で俺の太ももをいとおし気に愛撫しはじめた。
突然!彼は光に包まれた。
シュブールの姿は消え、銀色の長毛も美しい菫色の瞳の猫が現れた。
「こいつ、やっぱり人間じゃなかった!!」
猫はおもむろに俺の膝に乗ってくると、ゆっくりと丸くなった。
絹のような毛の感触と暖かい重みがヒサコ姫の頭とは違った癒しを俺に与えてくれた。
シュブール(フェイリスたんぽく)
思った以上の乗り心地だニャ。君の膝はやはり長さも太さも僕の理想通りだニャ。
ナレ
俺の心の中に猫の姿となったシュブールの声が響いた。
シュブール
まぁそんなに落ち込むことは無いのニャ、
この国は国力も豊かで婚姻によって隣国と敵対する心配もなくなった。
もし君の身に何かあれば僕が持てる力の全てを使ってでも君を守るニャ!
それに僕の言う通りにしてさえいれば君を元の姿に戻してあげない事もないのニャ。
だってあちらの世界での君は・・・僕の理想とする少年だったからニャ!
僕は君を絶対に離さないのニャ!
さぁせいぜいその美しい膝で僕を満足させてくれたまえ!
ナレ
やはり、あの夜感じた気配はお前だったのか
あぁ、わかったよ。満足させてやる。俺は元の姿を取り戻すために・・・
まずはこうだ!
おらおらおらおら・・・
シュブール
おぉぉぉぉこれはなかなか効くのニャ!
ではこれではどうニャ!
ナレ
うほほぉぉぉ!なんという攻撃だ!
ならばホレ、ホレホレホレ!
2人で・・・
ウニャニャァァァ!
うぉぉぉぉ!(繰り返してマイクから離れるw
・・・
ナレ
こうして、モンスターとの戦いもなく、目くるめくような恋愛もない、美しい猫と俺とのまったり異世界ライフが始まった。

あとがき

ヒサコ姫・・・強気な女の子だけどメンヘラコミュ障なので田村ゆかりさんでお願いします。できればSTEINS;GATEのバイト戦士阿万音鈴羽が「失敗した」連呼で壊れていくところを入れられたら・・・

シュブール・・・若くて威厳のある(というよりどや顔の)たぶん超イケメン、これを同じくSTEINS;GATE020話でレジスタンス戦士となっている漆原るか(cv小林ゆう)

猫シュブール・・・どう考えたって猫はSTEINS;GATEのフェイリス・ニャンニャンしか考えられないので桃井はるこさんの思い切りフェイリスたんでやってください。猫の声はこのシナリオの肝なので思い切り弾けてください。とお願いしたらドはまりしたのでただ膝の上で寝るだけではなく見事に二人だけの変態レベルの世界を作ることになってしまいました。かわいさん、ごめんなさいw1stハガレン並みの改変ですw

ナレーション(俺)・・・ダンまちのベル・クラネル君か幻想精霊記のリオ(cv.松岡禎丞)で行きたい。男膝枕目線でヒサコ姫にツッコミという毒を吐きたい。結局ベル君は毒なんか吐かないということでリオ君ぽく

王様・ゴールデンカムイの土方歳三(cv.中田譲二)
やってみたら「50%土方20%中田さん30%ダルだ」と言われながら大笑いされました。オンエアーで笑うとすれば特に唐突に出てくる後半なので要注意。
もしかしたら茶風林さんぽい声が適役かもしれませんね。

みなさんはどんなイメージを持たれたでしょうか

とりあえずこれでお話は終わり、という形にはせず、主人公が元の姿を取り戻せるかもしれないという余韻を持たせましたので,

我こそは!という方がおられましたら、第二話を書いてくださることを願いつつ

また、どこかの異世界でお逢いできますように・・・

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