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帝殺しの陰陽師〜幕間狂言 壱


 大蛇黒蟒おろちこくぼうを倒した後、
疲れ果てたマキビ達は三日三晩眠り続け、四日目にようやく目を覚ました。
一行は宿場で疲れを癒ししばらくの間この宿場町で路銀を稼ぐこととなった。

 童、蝦蟇蟲、合流した犬神と瑪蝗蠱ばこうこ、そして二見浦からサルタヒコとウズメの夫婦がチハヤを囲んで歓迎の夕食を取っていた・・・

「実はチハヤに壱年修練を受けてもらうことにしたよ」

 壱年修練、マキビのように練度の高い陰陽師が弟子たちを育成することを指す。
 弟子たちは重力や時間すら操作できる特別な空間に隔離され、1年の修練を凡そひと月で終わらせるのだが、負荷が高く修練を終えた弟子たちからは『十二単じゅうにひとえ』と揶揄されている。

「いきなり壱年修練は少々きついのではないか、と思うのだけど」
「そうだよ!アタイが受けた時だって師匠かかけてくる課題はハンパなかったんだから!」
「でも師匠がそう言っておられるのだから、なにか思う所があるのではなくて?」
 使役の中で年長である犬神の発言に童と蝦蟇蟲は考え込んでしまった。

「そうかな、私の考えでは千早と童はおない歳くらいだから、剣舞を二人で組ませたら賑やかでいいんじゃないかと思ってるんだけどね。それを見極める上でも修練は必要だと思うんだ」
「童は剣舞より殴り合いの方がむいてるとおもうんだけど」
「蝦蟇蟲ぉ、何を言いたいのかなぁ?」

 禁足地に関わった四人のうち、マキビを除く三人については陰陽寮により前後の記憶を書き換えられている。そのため童達にはチハヤの能力について知りえることがない。
そのためチハヤの一座での処遇についてはマキビの「なんとなく」で事が進んでいるのだ。

「僕はいい子だと思うけどなぁ、キラキラはしてないけどかわいいから僕は好きだよ!」
「瑪蝗蠱は素直でわかりやすいね、ありがとう」
「へへへ」

サルタヒコが大きな腕でチハヤの肩を組みながら会話に割って入る。
「呼び出されて修練を任されたのはいいとしてだ、そもそもこの少年がお前さんらの連れになった成り行きが判らん、確か童がぁ・・・連れてきたんだったっけか、蝦蟇蟲?」
「そう、童が先の宿場で変な男にさらわれそうになったところをこの少年が助けてくれて二人は恋に落ちた」
「全然ちがうだろ!話でっち上げてみんなを誤解させるような事言うなよエロガマ子!」
「まぁ!人間嫌いだった童ちゃんがそんな大胆な!ウズメお姉さん見直しちゃったわぁ」
「ウズメ姉さぁん・・・違うってば!」

「いやいや、実は私たちは街道で道に迷ってしまって・・・その時禁足地に・・・」
「なんだと!?」
「あなた、落ち着いて」

「禁足地に一歩足を踏み入れようとしたみたいで、結界に弾き飛ばされたらしくてね、気がついたら・・・」
「僕と皆さんがこの宿場近くで気を失っていたらしいんです」
「そう、この二人は仲良く手を繋いでいた。私はマキビに抱かれていた」
「だから!そういうことは言わなくていいから!」
「蝦蟇蟲、君は私を押しつぶすように乗っかっていたんだが・・・」
「マキビ、細かいところは気にしなくていい」
「でも童ちゃんはこの子の隣にすぐ座ったよね。他にも席が空いてたのにそこに座るのが当たり前のようにさ」

 瑪蝗蠱の鋭い指摘に童は言葉を窮した。
 チハヤはみんなのやり取りをただニコニコを眺めているだけなので、童としてはなおさら恥ずかしい。

「僕は・・・童さんが隣にいてくれると安心します」
 童は顔が赤くなってみんなの顔を見ることができなかった。
どうせにやけた顔をして自分を見ているに違いないのだ。

「『童』でいい・・・」
「え?」
「さん付けは・・・なんか、嫌だ。仲間って感じがしない」
「そう?じゃぁこれから童って呼ぶね」
「うん・・・」

「『童』・・・さん」
「『童』って呼んで!」
「『童』・・・」
「なに?『チハヤぁ』」
「今夜は君を離さないよ」
「うれしいワンっ!」
 蝦蟇蟲と犬神は楽しそうである。

 童は早くこの場が終わってほしいとそれだけを願っていたがこの様子では部屋に戻ってもこの二人は自分を揶揄うに決まっている。

「お前、身寄りの者はいないのか?」
 チハヤはサルタヒコの問いに首を振って答えた。
「わかりません。それより前の記憶が・・・」
「あぁ、悪かったな」
「いいえ・・・」

「童・・・チハヤ少年とはとても気が合っている様に見受けられるのだけれど、お二人はどこまで深いお付き合いをされてらっしゃるのかしら?『い』?『ろ』?『は』?・・・ぜひとも詳しく聞かせてほしいのですけれど・・・」
「ないよっ!」
「犬神・・・よだれ」
「はっ!私としたことがはしたない・・・ジュルっ」
「もうっ!犬神ちゃんは色恋沙汰に目がないからねぇ。
こっちおいで。僕がなでなでしてあげるよ」
「瑪蝗蠱ちゃん・・・そういう所好き!でも髑髏を触った手で撫でないでぇ~」
「犬神、聞いて驚くな。永遠の愛を誓ったこの二人は既に初めての共同作業も済ませている・・・かも知れない」
「そんなわけないよっ!もう黙ってろエロガマ子!」
「あぁっ!もうダメです。吠えるしかありませんワォ・・・」
「はいはい、僕が押さえつけるからねぇ・・・」
「フガフガ・・・」

「なんだ、もう酒がなくなったのかよ、ちょっと買ってくるわ」
「あなたってば、まだ飲むの?最近呑み過ぎよ」
「まぁ固いこと言うなって。マキビ、財布持って付き合え」
「やれやれ、これは酒屋の酒がなくなるのが先か私の財布が空になるのが先か・・・」
「気にするなって!いくぞ!」

咎悔きゅうかい

 マキビはサルタヒコに連れられて外に出た。

「仲がいいんだね、あの人たち」
「アタイ達が生まれる前からの腐れ縁だからねぇ」
「そうなんだ・・・」
「そう、サルタヒコはマキビの考えることはなんでもお見通しなのよ・・・」

 蝦蟇蟲は二人の背中を目で追っていた。

 宿を出た二人は酒屋に寄ることはせず、人通りのない裏道で話し込んでいた。

「アイツらの記憶を消したな」
「なんのことだ?」
 前を歩いていたサルタヒコはマキビに大きな背を向けながら話していた。
「チハヤとかいう小僧、人の姿をしてはいるがあれは間違いなく蟲毒、もしくは人であった時に蟲毒を植え付けられた者だ。もはや人間じゃねぇ」
 マキビはサルタヒコの話を黙って聞いている。
「例の禁足地には大蛇黒蟒がいたって話だ。
 それが夕べ、急に気配が消失した。帝都じゃ陰陽寮ウラノツカサが大騒ぎだ。そんな時にお前さんたちが足を踏み入れた。そしてあの小僧・・・俺じゃなくても何かあったと考えるのが常套じゃないのか?」

 マキビは笑ったまま表情を崩さない。

「すまんな、ハルアキラから口外することを禁じられているのだよ。君の問いには正しいとも間違っているとも答えることは出来ない」
「俺にもか?」
「そうだ。でも・・・これは私の独り言として聞いてもらいたいのだが、

仮に・・・仮にだ、弱まっていたとはいえ結界を破り禁足地に足を踏み入れたものがいたら、
陰陽寮の博士達が束になっても拘束すらできなかった黒蟒を、得体のしれぬ少年が倒したと知れたら、

こんなことは陰陽頭にとって表沙汰にするわけにはいかないだろうよ。自分たちの存在意義を問われるからな。
 私がその立場なら、迷わず今回の件に関わった者を捕らえて『六道の辻』に送るだろうね。
 ところがその中にひとり、いわくつきの陰陽師くずれがいるとすれば・・・皆の命と引き換えに記憶を書き換え、此度の咎の一切をその者に背負わせ・・・」

「ちょっと見せろ!」
 サルタヒコはマキビの腕をつかみ服の袖をまくり上げた。
体中に刻まれた疵のような無数の痣・・・禁忌の呪術を使う度に陰陽寮から穿たれる咎悔きゅうかいと呼ばれる咎である。

「お前・・・もうこんなに」
「奴らに言わせると『まだ刻むところがありますなぁ』らしい」
「だが此度はお前が倒さねばどうなっていたか・・・」

 マキビは痣を撫でながら話を続けた。
痣に刻まれた過去を思い起こす様に・・・

「その為に私はまた禁を犯した。
黒蟒を倒すためとはいえ神剣を現界させてしまったのだからな。あれは綻びたまま朽ちて伝承の中に埋もれさせなければならなかったものだ」

「ああ・・・」

「私は・・・永く生き過ぎた。我がはかりごとにて帝を呪い奉った。この咎に体が覆われるまで死ぬことを許されず、何世代もの間同胞はらからが年老い死んでいく様を見届け続けた。今はただ・・・いつか同じところに行けることを願うだけ・・・
それ故に私はあの子たちを失う訳にはいかないのだよサルタヒコ・・・

 そしてあのチハヤ・・・あの子は間違いなく私には叶わなかった高みへたどり着いてくれる・・・たどり着いてもらわねば困る。あれこそ神刀が選んだ者!」

「刀に選ばれたのか・・・あの小僧が」

「多くは語らぬ、だがお前があの場に立ち会っていたら胸の昂りを抑えることが出来なかっただろうよ・・・神代の物語を私は間近で見ることが出来たのだぞ!」

 天羽々斬が元の輝きを取り戻し、チハヤの元に厳戒した時のこと、
チハヤと童が天羽々斬を構えて大蛇を斬る様を思い起こし、マキビは全身で愉悦を感じていた・・・

「此度の一件で陰陽寮は私ひとりを召喚すると言ってきた。咎悔も穿たれることだろう、その間はこの宿場にみんな足止めになる。戻ってくるまでみんなの事を君に頼みたい。討伐も修練も任せることになるが・・・」

 サルタヒコは腕を掴んでいた手を放し、マキビの前に膝をついた。

「チハヤのことは俺に任せろ。壱年修練、俺が鍛えてやる。他の者も俺が守ってやる。だから・・・無事に帰ってこい!」
「そういってくれると思ったよ、ありがとうサルタヒコ・・・」

 サルタヒコは照れくさそうに頭を搔きながら話を続けた。

「まぁ、そのなんだ・・・とりあえず酒買って帰るか」
「そうだな」

 二人は酒とつまみを求めて大通りへ出た。

童、困惑する

 翌日
 路銀を稼ぐために童たちは大通りで散楽を披露していた。
まだ芸を身に着けていないチハヤも童に連れられて雑用を手伝っている。
 仕掛けの用意や投げ銭を集めることから始めたのだが
チハヤは童に言われたことをそつなくこなしているにも拘らず童はなぜか機嫌が悪い。

「だめだ~ッ!チハヤ~ッ!アンタが前に出ると女子衆が騒いでうるさくって芸に身が入らないってば!・・・」
「あぁ、ごめん・・・これ片づけたら下がるから」

 チハヤが声を出す度にキャー!という悲鳴とも歓声ともわからない声が聞こえてくる。

「ただ投げ銭を集めてるチハヤに負けるなんて童もまだまだねぇ」
「ムカッ!」
「仕方ないわよ、色白だし目鼻立ちは整ってるし・・・化粧けわいしたらもっと人気がでるかもね」
「犬神?何言ってんの??!」
「童ちゃーん、残念だけどチハヤ君はたった一日二日で町の噂になってるからね、ひとり占めしようたってダメダメ」
「嘘っ?!蝦蟇蟲、冗談だよね?」
「ほんと」

 童は周りを見てみる。確かに、チハヤが出し物の片付けをしているその先で少し歳上と思われる女の子達が彼を眺めている。
 すこしでもチハヤが彼女達の方に目線を送るとワーのキャーのと騒がしい。

 童は不機嫌な顔でチハヤと彼女達の間に立ちはだかってチハヤを稽古と称してその場から連れ去って行った。

蝦蟇蠱、犬神、瑪蝗蠱は目を合わせニヤニヤとしながら二人の後を追って行った。

「チハヤ!女の子にチヤホヤされるからって鼻の下伸ばしてるんじゃないわよ!」
「うーん、でもあの子達は遠目に観てるだけだから」
「よく言うわよ!アンタと目があったらキャーキャー言ってるじゃない!」
「それはね、向こうがこっちを観てるから軽く挨拶しただけで・・・」
「それで勘違いする子が出てきたらどうすんのよ?」
「勘違いって・・・何を?」
「何を?って・・・いろいろよ!いろいろ・・・」

 蝦蟇蟲たちは二人から見えないように隠れて一部始終を目に焼き付けている。特に春画好きの犬神は興奮を抑えきれなくなっているようで鼻息が荒くなっていた。

「ねぇ犬神、どう思う?」
「どう考えても極上の妬きもちとしか・・・ジュル」
「よだれ出てるよ?」
「犬神はこういうのが大好きだものね」
「そ、そんなことありませんわ・・・ただ男と女の愛の営みが私の五感を刺激するのですわ」
「瑪蝗蠱、犬神の口を塞いでおいて、そろそろ発情するから」
「はぁい!」
「ちょ、ちょっとお待ちになって!これでは私ただの変態ではありませんか!ゥ・・・ゥワオ・・・」
「発情期真っ最中の変態ね」
「犬神は変態さんだねぇよしよし」
「瑪蝗蠱さん・・・だから口を頭蓋骨で塞がないでぇぇぇ!」
「しっ!黙って!」

「わかった・・・気をつけるよ」
「わかったらいいんだけどさ」
「よく見てくれてるんだね、ありがとう」
「は?!そんな見てないし!騒がしいから気になっただけだし!」
「でも・・・心配してくれてるんだよね?」
「え?あ、まぁそうだけどさ」
「気にかけてくれる子がそばにいるだけでも僕は嬉しいよ」
「べ!別に気にかけてるとかそう言うんじゃないから!」
「でも、わからないことはすぐ教えてくれるし、食べる時も隣に座ってくれるし、寝る時だって」
「だから〜!あれはアタイが寝ぼけて間違えただけだし!」

「蝦蟇蠱?そうなのですか?」
「うむ、確かに夜中に部屋から出て行ったと思ったら朝まで帰って来なかった。つまりそう言うことね。」
「童ちゃんチハヤ君と深い仲ってこと?」
「ハァハァ・・・もう鼻血が止まりませんの!」
「瑪蝗蠱、この変態どうにかして。
これは・・・今晩二人を問い詰めなければ」
「わーい!ふたりを説教!」
「モゴモゴ・・・」

「昨夜ね、不安で眠れなかったんだ、なんで僕ひとりだったのかって。だから童が傍で寝てくれたから安心したんだよ」
「へ、へぇそう・・・それは良かったわね」
「だから、今晩も僕の隣で寝てくれないかな」
「なんで?!」
「うーん・・・童が隣にいてくれるといい匂いがして安心するからかな、ダメ?」
「は・・・はい、わかりましたぁ・・・」

童は顔を真っ赤にして、今にも全身から湯気が上がりそうでいたのだが、その後のチハヤの一言が童にトドメを刺した。

「よかった!童、大好きだよ」
「は?!すすすすすすぴぃーーーーー?!」

 童は目を回して気を失ってしまった。
「童?童大丈夫?!」

「きましたわよー!」
「だまれ変態!でも・・・あれは、堕ちたわね」
「こっちにもひとり失血死しそうな駄犬がいるけど」
「チハヤ少年、ただ者ではないとは思っていたけど・・・これは手ごわいわ」
「でもチハヤ君てさ、すごいこと言ってるっていう自覚ないよね」
「私も色々捗りますわぁ!」
「それは犬神だけだと思うけどぉ?」
「磨きがいのある子だわ。フフフ」

 その夜、童は女子組の寝床から追い出された。

古傷

「先輩!マキビ先輩!」
 宴の朝に遡る・・・
早朝にハルアキラから早耳が入る。
 目を開けると枕元に拳三つくらいの大きさの人の姿が立っている。白い装束に左右で白黒異なる髪の色、見覚えのある青年である。

「ハルアキラか・・・召喚の期日でも決まったのか?」
"それもありますけど、泰親がですねぇ・・・"
「中身は同じだろう、いつまで若者を気取っているつもりだい晴明?いや、泰親、それとも泰成と呼ぼうか?」
"先輩と違って僕はいろいろ使い分けておかないと大変なことになるんです!"
「それで?君の中の泰親がどうしたって?」
"『早く変われ・・・』とうるさいので、本人に伝えさせますので変わり・・・ますね"

 ハルアキラはそう言うと目を閉じ、なにやら小さい声で詠唱をしている。しばらくすると十代後半に見えた好青年の姿は三十代手前位の青年、それもマキビを睨みつける冷徹そうな顔に変わっていた。

"・・・キビィ・・・"
「ん?泰親くん?よく聞こえないんだけど」
"キビノマキビィッ!"
「なんだ、懐かしい名前で呼んでくれるじゃないか、久しいねぇ泰親君!」
"誰がテメェと仲良くお喋りしなきゃいけねぇんだよオイっ!聴いてんのか!"

 ハルアキラ・・・陰陽寮最強の陰陽師と言われる人物「安倍晴明」である。
今マキビと対しているのは5代後の子孫泰親。
見た目も性格も異なってはいるが元は同じハルアキラが内包している別の人格である。
 彼もまた何百年もの長きに渡り帝都を陰で支えてきた人物である。
 齢を重ねるとその子に成り変わること既に五代を経ているが、代替わりの度に性格が悪くなっているとマキビは思っている。

「そういえば泰親君、玉藻は息災かな?」
"な・・・なんでテメェに言わなきゃいけねぇんだよ?"
「ナリコ様が九尾の狐と入れ替わってるよって君に教えてあげたのは私だからね、君たちの行く末も気になって気になって・・・いつ上皇様にお伺いすれば、と気が気でなかったのだよ」
"内裏にバラしたら問答無用で滅するぞ"
「こわいこわい・・・で、私の事を嫌っている陰陽頭殿が私に何の用かな?」

泰親は小声で呪詛の言葉を吐きながら

"その上皇様のお命が危ない"
「ほぉ、」
"ほぉって呑気に構えてる場合じゃねーぞっ!上皇様はお前を呼べと仰せだ"
「今、上皇様がお隠れになられたら帝都が荒れそうだねぇ」
"もう荒れまくってんだよ!いつ戦になってもおかしくねぇ位にな・・・"
「いつ行けばいい?」
"今夜遣いを飛ばす。一人で来てくれ"
「今からではダメなのかねぇ」
”テメーを日中堂々内裏に連れていけるわけがねーだろ!それこそ騒ぎになるわ!”
「だろうね」
”他の者は今の場所で待機。修練でもさせて町から出させないようにしておけ”
「では、皆には壱年修練に張り切ってもらうことにしよう。ひと月はなんとかごまかせる」
"いいか、他言無用、随行は許さん。ちと面倒な事に巻き込むことになるからな"
「一度でいいから面倒ではない仕事を回してもらえないかね?」
"そう言うな、今回の件はテメェにも関係の無い話じゃねえ"

「どういう事だ?」
 マキビは起き上がって問いただした。
"上皇様の悪病、俺・・・ハルアキラが調べたんだが、憑いてるのは刀骸とうがいという『ものの怪』だ。知らぬわけでもあるまい?"
「まさ・・・か!あれは古に!」
"詳しいことは今夜話す"

 早耳が終わり、マキビは立ったまま呆然としていた。

「生きている?・・・いや、間違いなく私の腕の中で・・・」

幕間狂言 壱 了

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