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BANANA FISH全部見たけどきもちの整理がつかない(ネタバレ)

 『BANANA FISH』を24話全部見た。見たことがある人はわかると思うけど、どうしようもなさと悲しさがあふれすぎて、気持ちに整理がつかない。なので、何が悲しかったかを全部書いて、少しでも整理をつけようと思う

 ※注意 
あまりにも多分すぎるネタバレを含むので
まだ見てない人は今すぐ全部見てから出直してください。
アマプラとネトフリで見放題です。

お願いだからネタバレを先に見ないでくれ…………。ありのままのフレッシュな状態で見てくれ………。











一期で悲しくなって逃げた3年前

 『BANANA FISH』は2018年に放送したが、私は当時録画して途中まで観ていた。でも一期が終わる頃になって、この先どうやっても辛い未来しかない気がして見るのが億劫になった。
 母も毎週見ていたので、家でその音声を聴きながらも避けていた。でも最終回の日、母に「バナナフィッシュ最終回だよ」と呼ばれてなんとなく見に行った。そしたら英二が日本に帰る日で、アッシュは英二からもらった手紙を読んで空港に向かおうと駆け出したところで、よく分からないやつに刺されて死んでた。

アッシュが死んだ理由がどうしようもなくて辛い

 その当時は刺した奴が全く誰だかわからないし、途中から見ていなかったからあまり感情移入出来なくて、「悲しいなあ……」と思いながらしばらく落ち込むくらいしかしなかった。昨日見て全部分かったのだが、刺した犯人はアッシュと決闘する予定の(アッシュは激つよなので男にとって死を意味する)男の兄だった。
 その男は、アッシュを刺した後すぐに銃で反撃され、死の間際に「弟が殺されないためだ」というような事を言っていた。なのでそういうことかと理解した。しかし実は最終回の中頃で、その決闘はもうなしにしようという話になっていた。アッシュが「俺たち(街のギャング)が殺し合ったって、誰かがせいぜい10ドルそこら儲けるだけだ」と、決闘予定だった男に話しかけていた。
 (「俺たちが殺し合ったって…」というセリフも実は色々これまでの経緯を思うとしんみりする話だ。今までアッシュやその他のアメリカギャングは、マフィアだとか裏社会のボスだとか、そういう存在にいいように駒として扱われてきていたので、みんな嫌気がさしていた。そういう感情を表したのがこのセリフだった。)

   兄は弟と連絡を絶っていたので、決闘が無しになったなどとはつゆも知らず、アッシュを殺しに行ったのだった。
 弟とくらい大事な用事の連絡くらい取っとけと思ったし、アッシュは英二からの手紙で感動しすぎて油断したせいで刺されるし、どうしようもないのが悲しすぎてまずここで泣いた。

唯一の希望で弱点なのが英二なのが本当に悲しい

 この作品で一番悲しかったのが、英二がアッシュの生きる希望であると同時に、一番の弱みだった事だ。アッシュは今までも英二がいると思うように動けなくなった。

 12話くらいで、鉄橋で因縁の相手と決闘するときも、英二がやってきて、名前を大声で呼ぶと、アッシュは固まって隙ができた。アッシュは人殺しをしている自分を英二に見られたくないと思っていた。血に塗れ、穢れた自分を英二に見せたくなかった。だから英二がいると分かって固まったのだった。 

 また、その時アッシュは英二を日本に送り返し、自分は因縁の相手と決着をつけに行くという予定になっていた。だから英二が空港ではなく自分の決闘場所にいることにも驚いたのだろう。

 他にも、英二がグループ内の裏切り者に撃たれた時、アッシュは英二に日本語を教わっているところだった。アッシュは英二といるときにだけ、年齢相応の少年に戻ることができた。普段は誰にも隙を見せない孤高の人であり、凄腕の銃の使い手で、頭が切れるボスでもあった。   
 だから、その安心している隙をつかれた。英二が打たれたのは18歳の時だった。

 英二がいると、アッシュは唯一安心していられた。でもアッシュがいる世界は年齢相応の状態じゃ生きていけない。だからこそアッシュは年齢にそぐわない能力と精神状態で、常にいなきゃいけなかった。でもそんなのはあまりにも酷だと思った。
 ずっと心に傷を抱えながらも、誰にもそれを見せず生きてきたアッシュがようやく見つけた、自分が命をかけてでも愛せる相手といて、心が休まらない筈がない。

 そんな二律背反な状態が、アッシュの死の一因だと思うとまた悲しくなった。でも英二は生きる希望なんだ。アッシュは英二がいない場所だと拒食症になるくらいには希望がなくなるのだ。どうしてそんな大事な相手に最後会えないまま終わっちゃうんだ、と思って泣いた。
  2人の生きる世界が違う、これがアッシュと英二を引き離した一番の原因だったのが本当にやるせなかった。

 英二が撃たれた後、病院から遠く離れたアパートで、アッシュは英二の無事を祈っていた。自分が代わりになってもいいと言っていたが、まさかこんな形で現実にならなくてもいいじゃないかと思った。

どこまでも英二だけが大切だった

 2人が一緒に追手から隠れながら暮らしている時期があった。
 その時、悪夢にうなされて起きるアッシュに、英二が寄り添う場面がある。アッシュは「今まで何人殺したのか、わからない。殺した時に何の感情も湧かないんだ」と英二に震える声で話していた。英二は「君の心は深く傷ついている。僕にはわかる」、「世界中が君の敵に回っても、僕は君の味方だってことさ」といって励ました。アッシュはそれを聞くと、「ずっとじゃなくていい、今だけでいいから…そばにいてくれ」と言って隣に座る英二のひざに腕を乗せ、顔を埋めながら泣いていた。英二はアッシュの背中に手を乗せ、静かにそばにいた。
 アッシュが側に望む人間が英二だけなことも、英二にだけ触れたり近寄ったりするのを許していることも、英二がいなきゃアッシュは生きていけないことも、作品の中で何度も何度も出てきたけれど、この場面はそれを静かに描いていると思う。

 他にも、師匠かつ殺し屋かつ英二を対象にしていたブランカと言う人に、「あいつがいなきゃ俺はダメなんだ」「英二を殺さないでくれ」と頼んでいた場面も、アッシュが縋っているただ一つの存在が英二なんだと実感させてくれる。

 アッシュが22話あたりで捕まって、軍人にレ◯プされたことがあった。ちなみにアッシュはその手のことをされる過去をいくつも持っていて、一番初めは8歳の時だった。脱出後、グループの仲間に大丈夫か、と肩に触れられそうになると、アッシュはその手を思わず払い除けた。理由は言わずもがなだが、英二だけはそっと触れて抱きしめることができた。どれだけ英二が信頼され、心を許されているのかが身に沁みてわかる。
  だからこそ、英二はアッシュの唯一の弱点足り得るんだと思うとまた視界がぼやけた。

あったかもしれない日々を思うと泣く

 アッシュに体やその他の見返りを求めず、助けてくれたのは英二が初めてだと言っていた。マフィアの後継者として育てられていたアッシュには、英二を諦めてマフィアとして生きる道もあったが、それを捨て、英二を心から愛して滅びる道を選んだ。一番やりたいことを選んだ結果が滅びる道しかないということがどこまでも悲しかった。

 2人で一緒に穏やかに過ごしていた時期を思い返すと涙がぼろぼろ落ちてくる。この先にも、こんな世界もあったかもしれなかったのに。
 2人がアパートに暮らす様子を想像する。英二に納豆を出されたアッシュは「うえ、またこれ?こんなの食べられないよ」とか言うだろうが、それでも文句を垂らしつつも食べるんだろうな。
 作中にアッシュが初めて納豆と干物を見るシーンがある。その時にも臭い臭いと言いながらも、英二に味の感想を聞かれると「美味しすぎて反吐が出そう」と青い顔をしながら答え、完食していた。
 絶対にちゃんと食べるんだろう。英二の用意したものは。

 アッシュは寝起きが壊滅的に悪く、起こされると暴れるのに、英二が起こしたときだけ暴れずに言う事を聞く。何か頼むときには英二を「お兄ちゃん」だとか「お兄様」とか、茶化して呼びながらすこし芝居がかった動きでお願いする。
 アッシュが色々生き残るために悪事を働きながらも、その合間に、英二と過ごす時にだけ見せていたあの穏やかな表情が、ずっと続けられる生活があったかもしれなかったのに。
 英二からの手紙をそばに、西日がさす図書館の中で、まるで眠っているように穏やかな笑顔で死んだアッシュが。生きながらそんな表情ができる未来があったかもしれないのに。

 そんな未来がもう無くなったんだと思うたびに涙が出る。英二の手紙に「僕の魂はいつも君のそばにある」という一文がある。死ぬ間際のアッシュが、その事をものすごく幸福に思えたから、あんなに穏やかな顔ができたんだろう。今まで悪夢しか見てこなかったアッシュが、最期にいい夢が見れるくらいに。

でも見たのが今でよかった

 今まで、アニメに感情移入しても、どこか他人事だった。たしかに自分にはこんなことは起こらないが、そういうことではなく、あくまでシナリオとして、話の流れとして悲しいか、そうでないか、で泣いていた気がする。
 それはたぶん、少し前まで自分が高校生だったからだと思う。高校と大学には大きな隔たりがある。自分の人生における、自分の裁量権が効く範囲が大きく変わる。高校は、すでに何となく決まった道を歩くような感覚だった。感情も、水槽の中でみんなと同じ方向に向く感じがした。自分のやる事がある程度決まっていると、何も考えなくても暮らしていられる。だから、自分の想いや心の向く方向にものすごく鈍感だった。
 それに対して、大学はどこまでも広がる森のような場所で、道もなく歩いてこいと言われているような感覚だ。歩いていけば何かに出会えるが、誰も道案内はしてくれない。看板くらいはあるかもしれないが、それに従わなくてもいい。
 大学に入ってすぐは、今まで自分で考えなくてよかった事を、いきなり自分で決めなきゃいけないんだと思うと責任が重くて、眠れなくなった。自分のことを自分で考えなくてはいけないということが、身にあまる事柄だった。
 でも半年くらい経つと、自分の選んだ一歩で、自分の生活が変わり、この一歩でこの先の未来が変わるかもしれない、変えられるんだと思うとすごく胸が躍るようになった。
 それは高い場所から足を滑らせるかもしれない不安も一緒だったが、自分がたくさんの選択肢の中から、自分の意思で選ぶ一歩を、すごく大切に思うようになった。英二も、人間は運命を変えられると言っていたが、こういうことなのかと初めて実感した。

 だからこそ、作品の中で、あの選択を一つずつ進んできたアッシュや英二たちが、ものすごく尊く見える。その選択一つ一つで、2人は出会って、心を許して、お互いがたった1人の大切な人になった事が、何にも変えがたく、貴重だと思った。
 生きるために、自分で最善だと思う道を探して、作って、選んで、一歩一歩進んでいった結果が、もう2人が再び会えない世界だということが、ものすごく悲しかった。
 でも、この作品を見たのが、こんなにも心が揺さぶれる今でよかった。



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