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映画「Monday このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」の感想

*わーにんぐ*
この感想はややネタバレを含みますが、映画を見てほしいので核心には触れてません。


「タイムループ=謎メイン」じゃなくておもしろかった

タイムループって聞くと何故かミステリーかSF感があるのは私だけだろうか。まあそれは人それぞれだと思うが、この作品はその思い込みをぶち壊してくれました。センキュー。
この映画はブラックデザイン会社で社畜してる主人公が、後輩2人に「この1週間、ずっと繰り返してます」と言われてループに気づくことから始まる。そこから上の人間へ一人ずつ気づかせていき、残るはループの原因らしい上司へ…となっていく。
この過程で面白いのが、普通じゃあり得ない「タイムループ」を信じてもらうために、相手の心を開く必要があるところ。相手の1週間の行動や嗜好を把握して説得する。つまりだんだん職場の人間と仲良くなっていく。この辺りでミステリーじゃなくて人間関係をメインで描いてるんだなというのがわかってきてワクワクした。

1週間の始まる月曜の朝、ハトが事務所の窓にバァン!!となるのがループを象徴していて、クソデカ衝突音と共に、見てる側に強い印象が残る。
作中の人たちもそれが強く記憶に残ることを利用していた。手で鳩のマークを作り、それをテーブルに勢いよくバァン!!!とぶつけ、「鳩です。」とクソまじめな顔で相手に印象付け、「月曜朝のハトがバァン!!」でリセット前の記憶がフラッシュバックするように仕向けていた。これを職場の人間ほぼ全員にやるので超シュールでカルト的な場面を何度も見させられる。ジワジワわらえてくる。おかしなことを相手に信じさせようとする、というカルトみたいなことを不気味な演出で真面目に話す雰囲気はまさにスルメである。ちょっとくさいけどずっと噛んでると美味い、みたいな。

ループ内の成長がおもろい

主人公は仕事に生きる女性で、ループ内で繰り返される仕事の無茶振りをうまく処理するようになっていく。
この1週間でおそらくもっとも散々な目に遭うのもこの人だったが、ループを繰り返すうちに全ての災難を回避する。事故、資料不備、停電でデータ喪失、そして仕事優先だからと彼氏に振られ…などなどその他あらゆる全ての不運と災難を回避する優秀な主人公の手際の良さはあまりにも爽快。
上の人間を説得するための試行錯誤も面白く、上になればなるほど一筋縄ではいかないあたりは、RPGでだんだん敵のレベルが上がっていくのと似ていて、成功した時の達成感がすごかった。またループ回を重ねるうちに、だんだん感情表現が豊かになって成長する主人公や、スキルアップしたり雰囲気が良くなっていく職場の人々を見るのも楽しめるのだ。

ループで凝縮された伏線の回収があつい。

1週間が繰り返されるため、映画内での最初のループからして伏線があるのだが、ループ回数が増えるごとにその伏線が回収されていくのが面白い。
同じようなシーンを何回も見ることで、「1周目のこの人の行動ははそういう意味だったのか!」と気づくことがある。しかしこれは普通なら映画を2回以上見ないと得られない感覚である。一回の映画で何十粒も味わえる点が美味しいのだ。私の一番お気に入りは事務員さんの行動なのだが、詳しくいうと全部ネタバレすることになるので控えたい。
全員の演技力が高いおかげで、どのループで誰を見ても細かい表現がされているので、映画自体を繰り返してもきっと面白い発見があるだろう。
映画を見ている私たちもループの中でキャラに愛着が湧いてくるので、同じ行動でも見方が変わるという視点の変化も楽しい。
時間は何も進んでいないのに状況と人間関係が進んでいくという矛盾した状況や、ループものの映画の中でループする作品が出てきたりと、ループを最大限活かした表現が出てくるのも面白かった。
人生って何のためなんだろう、という普遍的テーマとタイムループ、ギャグを煮詰めた濃い映画だった。82分と短いのに満足感があった。
最近日光が少なくて落ち込んでいたのにだいぶ持ち直したくらいには面白かったので是非見てほしい。

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