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取捨選択

つづきです。

薬に対する考え方は人それぞれで。
「あの子、病院行くように言われて薬飲まされてるらしいわよ」って、問題行動が多くて有名な近所のお子さんのことを、とても理解のない差別的な言い方で教えてくれる奥さんもいらっしゃるし、
医療系の専門家で、お子さんの状態が悪くても、「薬は飲ませない方がいい」という方針の方もいるし、
子どもの状態が悪くなる一方で、本人も家族も疲弊した末に、薬を飲ませることに抵抗を感じながら飲ませた方も。

差別的な奥さんは、うちの事情なんて全く知らなくて、ただの噂話としてたまたまわたしに話したみたいで悪気はないんだろうけれども、こちらに心当たりがあるものだから、得体のしれないものを口に含まされたような~いやな気分になった。
うちも、たぶん似たような薬飲んでるんだよな、外に漏れる問題行動はないから、違うタイプに見えるだろうけど、ふたを開けたら似たような診断名だったりするんじゃないかな、なんて。
あーもしこの人に知られたら、そんな顔をされてそんな風に言われるんだな、そういうもんなんだな、こわいな、と。

専門家で薬反対派の親は、わたしの親しい友達でもあるんだけど、そちらの子とうちのもう一人の子、やらかしてきたことの経歴がかなり近くて、今も類似点が多くて。それでも薬に関しては反対を貫いていて、うちは違う方針をとったから、何も言わないけれど、「アブナイ」って思われているかもな~と、これまた別の意味で苦くて複雑だった。

後ろめたさを感じながらの親(も友達)はお子さんに重めの障害もあって、傍から見ていると共倒れしかねなかったので、薬の力を借りてでも落ち着いた状態に持っていけてよかったんじゃないかな~と思うけれど、それでも薬に頼ってしまったことへの罪悪感のような思いは消えないみたいで、簡単に割りきれるもんじゃない。

かくいうわたしだって。
いろいろ考慮して苦渋の決断で薬を飲む道を選んだけれども、これが絶対正しいという保証はないし、将来的に影響が出るかもしれないし、飲まなくていいならどんなにいいかと思うし。
なにかを得ている一方で、確実になにかを失っているのだと、時折ひしひしと感じてしまう。
日々の生活が立ち行かないからだとか、本人の望むことを継続するためとか、なにを優先するかとか、QOLとか、その時にいろんなことを天秤にかけて答えを出したわけなんだけど。

このたび、薬を飲んでいないということが発覚して、あぁそうかーと。

家を出るときに、親としてできる限りの準備はしていた。
具体的には朝起きるための便利グッズをいくつも買いそろえたり、薬を飲み忘れたり面倒くさくなりにくいような収納や配置を検討したり、部屋の事情であきらめたけれど、起床時間に体を起こしてくれるベッドも欲しかった。考えうる限りのできることはやっていた。

今思えば薬を飲んでいないのだから当然なんだけど、やっぱり朝も起きられなくなってきており、重要な日に寝過ごしたりしたから、少し前から毎朝夫が連絡をしまくる、夫のタイムリミットが来たら、わたしが電話をかけ続ける、ということを続けている。それでも起きないこともある。その延長線上に、学業の危機的綱渡りもあるわけで。

家を出て一人暮らしをしていて管理が行き届かない現状で、本業が順調ではなく、このままいけばまず間違いなく破綻を迎えることが予想され・・・

それでもなのか、君…っていう。

薬を飲まないのであれば、今のままではいられない、早晩なにかを捨てる決心をしないといけないんだろうな。それを告げないといけないんだなって、親であり大人だから思う。

さーて、どうしたもんかな。

病院にはながらく本人だけが行っていたんだけれど、ちょっと任せておけない。次回は一緒に行って今一度きちんと現状を説明し、薬の残数も報告して、今後のことを相談しましょう、ということになった。

薬を飲むことが絶対、唯一の正解ってわけでもないので、もうこれだけお膳立てして無理ならやめてもいいか、と思った。
薬を飲み続けることは、デメリットもたくさんある。
人に知られたくないことを抱えて生きていくことでもあるし、制約や負担は避けられないし、将来的に悪影響がないわけでもないだろうし。

今は毎朝必死で起こしているけれど、手を放した途端、崩れていって破綻するのは目に見えているし、卒業も危ういってことになるだろうし、親も永遠に面倒見られるわけでもないので、そういう風にしか生きられなくても、自分のしたいことが叶わなくても、どうにかやって行ってもらわねばならない未来が来るのだろうし。

どっちでもいいけど、飲まないなら飲まないでいいんだけど、そっちに流れたことで起こることを見極めた上で選んでほしかった。

病院へ行く道すがら、「君はどうしたいの?」と聞いた。
「薬は飲もうとしているけれど無理で、もうやめてもいいかなと思っている」
「で、やっていけるのかって話なんだけど?」と返すと、
「そうだとしても、家に戻るつもりはないし、学業も危機だけど以前から希望していた通りの年数を続けたいんだ」と。

って無茶なことを言う。コドモじゃないんだから。
こちらもなんでもいいというわけではない。

「飲まないで続けるなら、せめてあの配慮の件、実家に住んで薬も管理してもらって飲めている状況下でのものだから、現状にふさわしいものに変更する手続きをしてもらいたい。
学業については、こちらが提示している条件(年数とか上限とか)を変えるつもりはないので、そこからはみ出した分はご自分でなんとかしてもらうか、あきらめてもらいたい」

ここだけは譲れないーということを言った。
応援したい気持ちはあっても、永遠でも無尽蔵でもないから仕方ない。

腹積もりを確認しあっているうちに、病院についてしまった。

とりあえず、先生に相談してみて、だな。
やめてもいい覚悟なら、怖いものはない。


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