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MIU404 第6話

 
「志摩(星野源)は、相棒殺し」という噂話を聞いた伊吹(綾野剛)は、志摩から真相を聞き出そうとする。しかし、志摩は一向に話そうとしない。堪り兼ねた伊吹は、九重(岡田健史)から志摩のかつての相棒である香坂(村上虹郎)が不審な死を遂げていた事を聞き出す。
 
伊吹は九重を引き連れ、香坂の死の真相、そして、同日に起きた連続毒殺事件について調べ始めるが…(公式HPから)
 

 再びスイッチの話。かつての相棒を救えなかった後悔にずっと苛まれている志摩。「チャンスはいくらでもあった」と、自分に言い聞かせるように吐露する。例えば香坂が待つ屋上で、背中を丸めて辞表を書いていた倉庫で、彼を救うスイッチはあったはずなのに。倉庫と屋上には同じ電球が灯り、回想シーンではパチパチと点滅する(スイッチ?)。
 でも実際には救えなかった。2話で志摩が叫んでいたように、「時は戻らない」。電球の落ちるイメージが、3話の転がり落ちていくパチンコ玉と重なる。リフレイン。

 伊吹は事件を洗い直し、真相を突き止めようとする。なぜ香坂は死ななければならなかったのか。話を渋る桔梗隊長に伊吹が持ち出してきたのもまた、スイッチの話。九重が来たために志摩のバディが空き、自分が配属されてきたこと。一緒に事件を解決してきたこと。それらの「一つ一つがスイッチ」なんだと熱弁する。3話で志摩が語ってたスイッチの話、誰と出会うか出会わないかのくだり、寝たふりしてがっつり聞いてんじゃん。

 そして真相が見えてくる。彼は自殺なんかしていなかったし、ましてや志摩が殺したわけでもなかったこと。警察官として人を救い、途中で不運な事故に遭ったこと。階段で足を滑らせ、弾みで転落死に繋がる様子は、たちの悪いピタゴラスイッチを思わせる。そこに志摩がいれば、きちんとその手を掴むことができたのかもしれない。そう考えると、3話で転げ落ちそうになった伊吹の手を志摩が掴んだシーンが、また少し違った意味合いで見えてくる。今度は間に合った、そう思えてしまう。

 真相がわかり、改めて事故現場に戻る志摩。相棒は絶望して自殺したわけじゃなかった。自分は相棒を救えなかったわけじゃなかった。香坂は最後に女の子を救うスイッチになり、助けてもらった女の子は引っ越し直前のタイミングで恩人の正体を知ることができた。間に合った。

 ここで流れる米津玄師の「感電」。毎回絶妙なタイミングで流れるな、と思う。死は防げなかったけれど、それでも小さな救いは残った。毎回こんな終わり方をする。事件は起きてしまったけれど、曲がりなりにも誰かが救われた、何かしら間に合った、そんな瞬間。
 このドラマでは社会的なテーマを扱っている。社会派に寄ればシリアスで憂鬱なエンディング、エンタメに徹すればリアリティのないハッピーエンドになってしまいがちなところ、このやり方でなんとかバランスをとっているのかもしれないと思った。
 にしても死因が分かることで遺された人間が救われる話、まさにアンナチュラルと同じじゃないか。

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