東京
銀杏BOYZのライブを観た。
いままで観た中で1番良かったように思えた。
特に「東京」という曲が良かった。
コロナ禍になってから全然ライブに行かなくなって、配信ライブのチケットはかなり買っている気がするけど、こういうライブに足を運んだのは久々だった。
全く行かなかったというわけではないけど、今回みたいな大きな会場(Zepp DiverCity)に来るのは本当に久々だったし、このライブに行くことになってから銀杏BOYZの2年ぶりのライブだと聞いてもあまりピンとは来なかった。
だってこの2年はライブ自体に行ってなかったのだから。あ、そのあいだ銀杏もライブやってなかったのか。と思うくらいだった。
ただこの2年の間に大きな事件はあった。
aimaiというブランドを一緒にやっている苺谷ことりという女の子が、銀杏BOYZの新曲のジャケットモデルになった。
びっくりした。
ぼくの夢だった「銀杏のジャケットの女の子になる」は、ぼくには叶えられなくて、どこかの誰かが叶えるものだとばかり思っていたのに。
急に隣にいる人が叶えてしまった。
悔しかった。
多分、同性だったらめちゃくちゃ嫌いになってたと思う。悔しすぎて。
最初はそんな感じだったけど、
いまは素直に嬉しい気持ちになった。
それと、少しずつ時間をかけて、
ぼくは苺谷ことりという人間を嫌いになったとき銀杏BOYZも嫌いになってしまうのかもしれない。という覚悟をした。
そのくらいに、新たな強い結びつきが出来てしまったようにぼくは思った。
そんな出来事があってはじめてのライブだった。
アコースティックライブと銘打っているものの、いつものライブとあまり変わらない。
というより、この編成だからこそ良かった気がした。
途中、あまりにライブが良かったので、
ステージ上にいるのがたまたま大きなライブに出てきた新人バンドだと仮定して見てみたりした。ロッキンとか、サマソニのコンテストで優勝してオープニングアクトに出てるみたいな。
ぼくは普段から、すごい人に会っても「この人中学生のときどんな人だったんだろう」とか、肩書きとかのフィルターをなしにして見る癖がある。ちょっとひねくれてるけど。
そうして観ても、やはりいいバンドだ。
でもやっぱり、これまでのストーリーがあるからこそ銀杏BOYZはいいのだろう。
そう思ったのは、「駆け抜けて性春」「骨」で
ドラムの岡山健二くん(ex.andymori/classicus)が歌っていたからだ。
ぼくはめちゃくちゃ嬉しかった。
そう思えば、いまの銀杏BOYZのサポートは歌えるメンバーで溢れている。
藤原寛(ex.andymori/AL)はandymoriでもコーラスをしていたし、
加藤綾太(ex.ポニーテールスクライム/THE 2)はポニーテールスクライム時代はボーカルとして、THE 2ではいまコーラスを歌ってる。
そんな歌える人材が豊富な中でも、岡山健二くんが歌ってくれたのはすごく嬉しかった。
andymoriの「ひまわり」も大好きだ。
こういう歴史がぼくの中にもあるからこそ、今日の銀杏BOYZがよく見えるのは必然だったし、フィルターは付いていて当たり前なのだと思う。
話は変わってだいぶ前の話だけど、銀杏BOYZがずっとライブをしてなかった頃。
本当に久々のライブで、それを観に行った。
ぼくがはじめて銀杏を観た日だと思う。
その頃メンバーは全員脱退して、峯田が1人で銀杏BOYZを背負っていた時期だった。
ライブが始まる前、ものすごい緊張感が漂っていた。多分みんな緊張してた。
あの感じはTK from 凛として時雨が「flowering」をリリースしてはじめて渋谷公会堂でライブをするときか、このときくらいしか味わったことがない。
峯田がステージから客席に唾を吐いて、
向かい風で全然飛ばなかったんだけど、
ステージの前に立ってた警備員(多分、大学でラグビーとかアメフトやってそうな屈強な学生バイト)にその唾が少しかかったのか、ステージのほうを振り向いて峯田を睨みつけてたのとかすごい覚えてる。
その場にいる全員が峯田の唾かかっても全然いいよって感じのキラキラした目線なのに、警備員の人はそりゃ嫌だよね。って思った。
その日、1曲目に演奏したのが「東京」
ぼくはこのとき悲しかった。
というのも、この日この曲を一緒に聴けると思って連れてきていた、その当時「この人と結婚したりずっと一緒にいたりするのかもしれないな」と思っていた人が隣にいなかったからだった。
連れて行って、直前にトイレに並ぶというので「時間ないから先に行くけど、必ず隣に来てね」と言ったまま戻ってこなかった。
ライブが終わって合流したら「楽しかった?」と聞かれたけれど、ぼくは完全に拗ねていた。
「結婚するって決めた人と銀杏BOYZの「東京」を手を繋いで一緒に聴くのが夢だった。だから君とは結婚しない」
ぼくはそう言った。
当然喧嘩になった。
「そんなの聞いてない」と言われ「前もって言うのはなんか違うだろ、、」とぼくは心の中で思ったが、今考えるとそりゃそうなるわ。という感じだ。
今思えば、ぼくの悪いところをちゃんと指摘してくれたんだと思うけど、ぼくがいまも独身なのはそういうところをどうしても変えたくなかったからだと思う。
そんな日のことを思い出してしまった。
ぼくは今日、知らないおじさん2人に囲まれながら
「東京」を聴いた。
周りには著名な人が沢山座っていた。左隣の席は音楽ライターさんなのか、事前にもらったのであろうセットリストが書いてある紙の裏にメモを取りながらライブを見ていた。
右隣の席は大根仁監督に似たおじさんだった。
どうやらぼくの夢は何ひとつ叶わないらしい。
でも今日ひとつだけ分かったことがある。
それでもぼくはいま幸せだ。