いざ、シュールと理不尽に満ちた冒険へ「ファイナルソード」

 どうもこんにちは 。

 今回もゲームの話になるのですが、実は少し前に世間(SNS)で話題になった「ある作品」に触れる機会がありました。いや、意を決して自ら飛び込んでしまいました。
今回はその作品をよりにもよって完走してしまったので、魅力を余すところなくレビューにまとめさせて頂きます。
その作品の名は…

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それは彗星の如く現れた

 ファイナルソードは2020年7月にNintendo Switchに登場したアクションRPG。
もともとスマートフォン/タブレット向けとして2019年にモバイル版が先行で出ていたそうです。
モバイル版のみだった頃に話題にした人はほとんど見かけませんでした。それがSwitchで出た途端、瞬く間に大きな話題をかっさらっていったのです。

 いったい何故そんな話題になったのか?
まず現行の最新ハードであるSwitchで出たとは思えない、20年以上前までさかのぼった様なグラフィック。そして海外制作特有の何とも言えない翻訳センスにあふれた日本語テキスト。
そして後ほど詳しく触れますが、ツッコミどころの多いゲーム性と謎仕様。極めつけは1890円というかなり気合の入った価格設定まで、とにかくSwitchのストアの中で異様な存在感を誇っていたのです。

 ところが、制作側が使用したアセット(商業利用できる有料の制作素材)の中に著作権侵害のおそれがある物が混じっていた事が判明。SNSでも多くの指摘があり、わずか4日で販売中止となってしまったのです。

 かくしてファイナルソードはそんな騒動からたちまち知名度が急上昇し、問題のアセットを使用していなかったため販売中止を免れたポケット版を買う人が続出。
そしてわずかな販売期間の間に運良く(?)購入した人の中からRTAに挑戦する猛者まで現れ、さらにそこから生まれた強烈なバグの数々がこれまた多くの人を笑いの渦に叩き込み、2020年の人々の記憶に深く刻まれる一作となったのです。

 そんな伝説も落ち着きつつあった2021年。長い間音沙汰が無かったSwitch版がついに販売を再開しました。ただ復活するのではなく、"Definitive Edition(決定版)"という肩書を引っさげて…

基本は至ってオーソドックス

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 というわけでここからより突っ込んでご紹介。自分はDefinitive Edition(以下DE版)を買ったので基本的に内容はDE版に準拠します、ご了承下さいませ。

 グラフィックやバグに何かと目が行きがちな本作ですが、実際の内容はどんな感じかといえば極めてオーソドックスな造りのアクションRPGとなっています。
剣での攻撃とローリングによる回避、あと冒険を進める中でスキルや魔法も覚えられます。
そんなアクションを駆使して敵を倒し、経験値を稼ぎ、レベルアップして強くなり、さらに強い敵を倒してストーリーを進めていく…

 このように、良くも悪くも捻りは一切ありません。清々しいまでに直球です。
魔法はフィールドやダンジョン内の宝箱から拾いますし、スキルは何故かお金を払って開放。複雑なパラメータも、凝った育成要素も無いです。もはやその辺のソシャゲの方がよっぽど複雑です。

 もちろんストーリーも王道中の王道。
小さな村で暮らす青年の主人公が、病気の母を助けるために剣を取り、やがて世界を救う冒険に繋がっていく…
近年なかなか無いほど潔くストレートなシナリオです。一応ネタバレに配慮しますが、次第に強大な悪に立ち向かっていく流れも王道。
昨今のRPGよろしくミッション(クエスト)をこなしていく事でシナリオを進めていく形なので、何をしたらいいか迷う心配もほぼ無いです。

 ここまで聞くといかにも「古き良き時代のアクションRPG」という印象になるのですが…いざプレイすると待ち受けていたのは、想像の斜め上を行く過酷な冒険でした…

レベルを上げて、剣の鍔で殴る

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 既に多くの方が語ってはいますが、まずこのゲーム、普通の感覚で攻撃しても敵に当たりません。
大体のアクションゲームでは武器のリーチについて念入りに調整されているものですが、この作品においてリーチというものは皆無に等しいです。
剣の切っ先どころか中腹まで敵に食い込ませても当たらない(もはや日本語が変)。敵に寸分の隙間なく密着して剣を振ることでようやく当たるのです。
自分にはその姿が剣の刃ではなく、根元にある鍔(つば)で殴りつけているようにしか見えませんでした。ひょっとすると刃なんて幻なのかもしれません。

 そしてこっちは攻撃を当てるだけでも一苦労なのに敵の攻撃判定は妙にデカい。そんでもって振りも異様に速い。
特に攻撃の速さは本当に容赦が無く、予備動作一切無しでいきなり猛スピードの攻撃をかましてくる輩のなんとまあ多いこと!
おかげで密着しなきゃ当たらないのに密着すると剛速球のカウンターが飛んでくる始末。この時点で泣けてきます。

 さらにいうとダウンから立ち上がった後の無敵時間もほぼ無いため、集団で襲われた際にダウンしようものなら延々と起き攻めをされて死…というのもよくあること。なのにもの凄い数の軍勢と強制的に戦わされるボス戦があります。
おまけにゲーム後半で延々と苦しめられるのが「氷漬け」という状態異常。ひとたび受けると一定時間動けなくなり、その間1回は必ず敵の攻撃を受けさせられます。
これだけでも十分酷いのですが、これと起き攻めの相性がすこぶる酷く、氷漬け解除から立ち上がった直後にまた氷漬け…という最悪のループがこれまた頻繁に起きます。後半で心が折れる理由の大半はこれです。

 敵に関する理不尽さは挙げればキリがなく、倒すためにも前半からレベル上げが必須です。が、このレベル上げもまた一苦労。各ミッションに載っている推奨レベルではまず足りず、なのにそこからさらに上げようとするとなぜかいきなり上がりにくくなる…
それもそのはずこの作品、主人公とモンスターのレベル差がある程度開くと取得経験値が減ります。ただでさえレベル上げが大変なのになぜこんな仕様にしたのか…

 ダンジョンは入り組んでこそいるものの単調なので、このゲームの肝はいかにモンスターと上手く立ち回るかどうか。レベルを上げ、使える・使えないの差が激しいスキルと魔法を駆使してリトライを繰り返す。ファイナルソードとはそんなスパルタンな作品なのです。
幸いなのかどうかわかりませんが、シンプルな育成要素やどこでもセーブ機能のおかげで、トライ&エラーを繰り返してアクションに集中しやすい環境ではあります。
逆をいうとあのグラフィックの中でひたすらアクションを要求されるのが辛い人にはどこまでも苦行です。

それでも見捨てられない味がある

 上で散々言った上に言い尽くせないぐらい問題点は山ほど存在するのですが、それでもこの作品にはどうにも駄作とは切り捨てられない味わいがあります。
おそらくそれはこのクオリティがとても狙って作られたものではなく、至って真剣に作っている事は確かに感じられるからなんだと思います。

 作り手側がやりたい事はすごく伝わるんです。敵との息詰まる戦闘や、広大な世界とダンジョンでの冒険など、「ファンタジー世界を舞台としたRPGならこれはやっておきたい!」というシチュエーションがたっぷり詰まっています。ただ悲しいかな、そこに技術力が追いついていないのがどこまでも惜しいのです。そしてツッコミ所満載の完成度だったからこそこれだけ話題になった節もまぁあります。

 そんなこともありネット上では「完成度が低くても話題になれば売れてしまうなんて…」と嘆く声も見かけますが、それでもこの作品が小さく無名のスタジオなりに全力投球をした結果生まれた「珍プレー的な作品」であることは間違いなく、様々な人が挑む姿を通して笑いと感動を届けた事も事実。
なので個人的には「売れたのはおかしい」とは全く思っていません。やる気は十分に感じられる作品だからこそ引き寄せたクリーンヒット(もしくは怪我の功名)だったのではないかと思っています。
決して楽ではないですが、時間をかけてやり込めばエンディングにはちゃんとたどり着ける造りであることも評価できる所です。

 …まあ自分はこういう作品に耐性があるのでいくらでも擁護できちゃう所もありますが、なんだかんだ気に入ってしまったんだから仕方ない。言葉にするのは難しいけど(レビュアーにあるまじき発言)、どこか憎めない。そんなオーラが出ている作品だと思っています。

おまけがイージーモード

 さて、Definitive Editionと銘打った本作ではクリア後に追加要素が待っています。
それはなんと主人公が女性キャラに差し替わるモード。これで本編を最初から遊ぶことが出来ます。

 ただ見た目が中途半端に露出度のある鎧を着たねーちゃんになるだけかと思いきや、無駄に男主人公とあちこち違う箇所が。
実は移動速度が男より少し速く、レベルアップ時の成長も攻撃力が上がりやすく、おまけにどれだけレベルアップしても敵から得られる経験値が変わりません。
つまり一言でまとめると「女主人公の方がはるかに遊びやすい」。なぜ最初からこのバランスにしなかったんだ…

 ちなみに性別上どうしても不都合が起きるシーンは強引にカットして対処していますが、セリフのほとんどは男の時から変更されていないため、見た目の浮きっぷりも相まってシナリオはかなりシュールになります。これはこれでまた面白いので気になる方は是非。


 評価については人によって様々だと思いますし否定もしませんが、少なくとも自分は最後まで遊んで楽しかった作品です。
難易度が高いだけに達成感もあり、もしあなたがボスや難所を乗り越えた時にいつの間にか喜んでいたら、それはもうファイナルソードを楽しんでいる証拠です。観念しましょう。

 シュールと理不尽と王道が混ざり合う、ある意味奇跡の一作。チャレンジしたい方は今すぐストアへどうぞ。

 それではまた。


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