【レビュー】「WIN BACK」不器用な男の過酷な奪還作戦

 どうもこんにちは。

 最近Nintendo Switch Onlineの追加パックに加入しまして、ゲームボーイアドバンスやニンテンドー64の様々な作品に触れていたんです。

 特にニンテンドー64については、スーパーマリオ64やゼルダの伝説といった今でも語り継がれる名作が数多くラインナップされており、これだけで延々と遊べてしまう人も多いのではないでしょうか。

 そんな64のラインナップを漁るなかで、自分は非常にホットな作品を見つけてしまいました。先日エンディングまで完走できたので、この熱さを皆さんに共有させて下さい。

コーエー渾身のTPS

 「WIN BACK(ウィンバック)」は1999年にコーエーから発売された作品。ジャンルは公式では「3Dガンアクション」となっていますが、現在の定義で言い換えるとTPSに分類されます。まだTPSという概念が浸透していなかった当時らしいネーミングですね。

 本編の紹介前に特筆すべき点として、今作を制作されたのは「ω-Force(オメガフォース)」。そう、無双シリーズのファンにはおなじみと言えるあの制作チームです。「真・三國無双」が発売されたのが2000年なので、無双シリーズ誕生前の作品という点では、ある意味貴重かもしれません。

 ストーリーの概要ですが、攻撃用軍事衛星ガルフとその制御管理システムをテロ組織が占拠。それを奪還すべく対テロ実力部隊S.C.A.Tが出動した…というもの。プレイヤーは隊員の一人であるジャンとなってテロリストに立ち向かいます。部隊というだけあって他の隊員も作中登場します。


 というわけでストーリーの通り、テロリストを撃って蹴散らし突き進んでいくのが大まかな流れです。というか最初から最後までやる事はずっと変わらずそれです。

 フィールドを進む→敵と遭遇する→敵の銃撃は隠れて回避→隙を見て反撃→全て倒したらまた進む…という展開を基本繰り返す感じです。敵の銃弾を目視で避けるのはかなり困難なので、近くにあるコンテナや木箱に隠れつつ撃ち合うのが基本。

 隠れて撃つというと1996年にアーケードで稼働した「タイムクライシス」を連想しますね。ただあちらは撃つ・隠れるに操作が特化していますが、こちらでは接敵時の位置取りも隠れる場所も自分で判断し、操作しなくてはなりません。この点は本作の醍醐味でもあり難しい点でもあります。

 「撃つだけのゲームは、もういらない」という当時の(結構攻めた)キャッチコピー通り、3Dを活かした豊富なアクションが用意されているのも特徴。しゃがみながら移動したり、壁に張り付いたり、前転したりと、今のTPSに通ずるアクションが多く用意されています。そしてこれら全て攻略に必須です。

 ちなみに武器は最初からハンドガン、サブマシンガン、ショットガンを持っており、道中でサプレッサー付きハンドガンとロケットランチャーも入手できます。これらを上手く使い分け、様々なアクションを駆使し、軍事衛星の奪還に挑むわけですが…

背中で魅せられない男

 さてこのゲーム、先にフォローを入れておくと、当時としては相当に頑張っていると思います。TPSも発展途上だった中、(左右だけですが)カメラを自由に動かしたり、自在に隠れて戦ったり、プレイヤーごとに様々な戦術で攻略できる点は現在のTPSにも通じており、時代を鑑みると感心します。

 …が、それだけに今の時代から見るとかなりしんどい、厳しい、辛い点も数多く、かくいう自分もエンディングを拝むまでにドえらい苦労しました。

 まず昨今のTPSと比べた時に、今なら当たり前にできる「ある重要なアクション」が出来ません。

 それは何か?ずばり「武器を構えながらの移動」

 これが出来ないためにジャンは敵が突然出てきてもとっさの対応が難しく、なんなら鉢合わせた瞬間は無防備、当然撃ちながら移動も出来ません。これが昨今の作品に慣れていると非常にもどかしく、操作で苦労する点の一つです。たしかに当時の作品としては珍しい操作ではないのですが、今から遊ぶという方にとって難しく感じやすい点なのは間違いありません。

 もう一つ操作面でクセがあるのが「キャプチャーシステム」。これは今風に言うとロックオン機能の事で、ボタン操作でこれをセットすると自動で敵を狙い、カメラも自動で追いかけてくれます。(自動照準だけなら敵の近くで構えても自動で発動します)

 このゲームは照準の移動を構えてから行うので、自動で狙ってくれるのは大変便利というかこれが無いとどうしようもないレベルですが、これも完璧ではありません。

 ロックオンは基本的に敵の胸あたりを狙うのですが、そのため射線上に障害物があると当たりません。隠れる場所を変えるか、手動で照準を補正する必要があります。そして手動で狙っている間にだいたい撃たれます。おまけに撃たれると照準がリセットされます。これで延々撃たれる事数知れず。

 さらに言うと自動照準の動きもクセがあり、まず自分の正面に構えてから相手を追うんです。つまり正面から離れた敵は狙うのに時間がかかります。そして時間がかかっている間に撃たれます。なんでこんな不器用なんだこの男。

 こんな仕様もあってこの作品でもっとも効率が良い撃ち方は、

  1. 低めの隠れられる物の後ろに位置取る。

  2. 張り付かずにそのまましゃがんで構える。

  3. 構えたまま立って、撃って、しゃがむ(以後繰り返し)。

 というせっかくの張り付きアクション全否定のスタイルです。

仕様に牙を剥かれる男

(プレイ中散々見る事になるゲームオーバー画面)

 特殊部隊の隊員でありながらこの不器用っぷりに不安が募る所ですが、ダメ押しするかのようにシステム面も容赦ない点が多々あります。

 この作品では撃った体の部位に応じてダメージ量が変化します。手先や足先ならダメージは少なく、胸ならダメージは大きく、そして頭部ならザコであれば一撃で倒せます。また後ろを向いている相手へのダメージ量も非常に大きく、背中を狙っても敵によっては一撃で仕留める事が出来るのです。

 そしてこのシステムは主人公にも例外なく適用されます。頭部や背中に当たれば大幅にライフが減り、特に殺傷力の高いショットガンがこういう部位に当たろうものなら一発で致命傷です。おまけに敵の中にはナイフを持って突っ込んでくる奴がいるのですが、このナイフの火力が異様に高い。うっかり背中を刺されようものならライフが半分あっても死にます。

 それでも彼は不器用なので、相手から距離を取りたい時は背中を見せて走るしかありません(後ずさりが出来ない)。操作の都合で背中を隠せないのはかなりつらい…

 ステージについても容赦はありません。前半はオフィスビルが舞台になるのですが、(尺を延ばす都合なのか)同じ場所を行ったり来たりする事が多いです。そしてゲームが進行する事に同じ場所でも頻繁にレイアウトが変わります。木箱が積み上げられる程度なら優しい方で、触れたら一発即死のレーザートラップが突然あちこちに設置されたりします。リフォームの速さが半端なさすぎる。

 このレーザートラップもまた大層にめんどくさく、タイミングを合わせてローリングでくぐり抜ける場面が何度も出てきます。当然タイミングがシビアなので、連続でやらされるシーンは緊張とストレスがえげつないです。

 あと武器についても愛されていない点があって、その最たる例がロケットランチャー。一応最も火力が高い武器のはずなのですが、爆発範囲が非常に狭い。どれぐらい狭いかというと密集した敵に撃っても爆発した場所が悪いと複数人に当たらない。あと何故かは不明ですが一部の床に向かって撃つと床をすり抜けます。不良品かこの武器??

 それでも爆風には障害物や壁をすり抜ける性質があり、これを利用して特定の敵を倒すのに重宝するのですが、悲しい事にこの性質は敵の爆発物にも例外なく適用されます。そうです、距離が近い爆発物は隠れてもダメージを受けます。このため一部の敵は隠れながら戦う意味が全くありません。つらい。

雑に死んでいく男達

 不器用で優遇されない主人公ジャンの道のりは長く険しいです。

 この作品はステージ制で、ステージごとに目的地を目指して行くのですが、全部で31ステージもあります。そして1ステージごとの尺も平均すると結構長いです。

 参考ですが、自分がエンディングまで到着した時のタイムがゲーム内時間で6時間ちょっと。ただし、コンティニューしてやり直すとタイマーも戻るので、実際のプレイ時間はこの倍以上かかってます。それだけ死にます(真顔)。

 最初のステージからショットガン持ちもレーザートラップも登場し、操作に慣れないプレイヤーを容赦なく殺しに来ます。この容赦ない敵とトラップの配置が終盤までずっと続きます。

 また途中でボス戦も出てきますが、これも最初のうちはともかく後半は動き回りながらガンガンに攻めてくる連中ばかりで、攻略方が掴みにくくめちゃくちゃ死にまくります。これで戦車やヘリコプターといった兵器が出てこないのは不幸中の幸いだったかもしれません。

 ストーリーはB級アクション映画のベタを地で行く感じで進んでいき、それ自体はゲームと相性が良いので構わないのですが、仲間は突拍子も重みも無く次々と死んでいきます。敵もどんどん死んでいきます。雑に死んでいく奴しかいません。

 これどうもマルチエンディングらしいのですが、一番良いエンディングですら重苦しいBGMをバックにポリゴン越しでも伝わる疲れ切った顔をして帰還する隊員達という、達成感もへったくれもない締め方です。

 個人的にはこれがある意味一番がっかりポイントでした。だってあれだけ死にまくって何度もやり直して、困難に次ぐ困難を経てようやく拝んだエンディングが何の達成感も感動も無いお通夜ムードって何なのよと。頑張っても報われた感じがしないと、ただただ疲労感だけ残っちゃいますね…


 かなり長々と書いてしまいましたが、これだけ難易度の高いTPSは自分も初めてでした。軽い気持ちで初めてしまい、気がつけば引くに引けない所までやってしまった自分を褒めたいような責めたいような複雑な心境です。

 一応難易度は3種類から選べるのですが、昨今のゲームのように途中で難易度を変えることはできません。自分は軽い気持ちでずるずるやってしまったのでノーマルで走り切りましたが、皆さんは絶対にイージーを選びましょう。ただしイージーでも大概難しいです。

 ちなみに実機ではコントローラーパックにゲーム進捗をセーブするのですが、Switch Onlineは現状コントローラーパックに対応しておらず、どこでもセーブだけが頼りです。クリア後の追加要素も無駄にいろいろあるので、気になる方はクリア後もセーブを残してみて下さい。

 ここまで全く触れませんでしたがローカルで対戦もできます。お互い同じ条件下なのでもしかするとこっちの方が盛り上がるかも…?

 ではまた。

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