帰ってきたミラノダービー
ついにこの日がやってきた。
シーズン数試合ある最大のライバルミランとの対決、この試合の前はいつもよりもワクワクした感覚になる。
少し前のミラノダービーは両者とも所謂「暗黒期」真っ只中のダービーであり、その時はビッグマッチと呼ぶには些か寂しいという雰囲気だった。
だが今は違う、ミランは現時点で1位、開幕から無敗をキープし好調を維持しているクラブ、今シーズンは久しぶりにCLにも復帰し、欧州の舞台でも存在感を発揮している。
対するインテルは現状3位ながら昨シーズン、実に11年振りにスクデットを奪還し、イタリア王者として挑むミラノダービー今シーズンも新監督政権下で堅実な強さを見せている。
お互いに全く引けを取らないまさに上位対決、かつての華やかなミラノダービーが戻ってきた事が個人的に嬉しい。ミラノダービーはやはり特別であり、カルチョの魅力を構成するものの1つなのだと改めて感じた試合前だった。
帰ってきたコレオ
ミラノダービーの魅力の一つにそれぞれのサポーターのコレオにある。それぞれのサポーターが相手を煽るためにかなり力の入ったコレオを見せ合う伝統の行事である。しかしここ数年は無観客試合の影響により観客をスタジアムに入れることが出来ず、なかなかこういったコレオを見ることができなかった。しかしついに制限が緩和され、今回多くのサポーターがスタジアムに集まった。
まずはインテルのコレオを紹介したい
インテル側のコレオはイタリアチャンピオンとしてミラノダービーに堂々と挑む、煽りとしてはこれ以上ないほどのものだった。
対するミランは
今も戦い続けている医療従事者に向けて賛辞を示すコレオを掲げていた。これは正直いって見事だった。こういったコレオを掲げられるのは医療従事者の力があっての事、そしてサポーターの努力、みんなの努力が重なってのことだと思う。
ミラノダービーは選手だけでなく、サポーターやそれ以外の人たちも含めて作っていってるのだなとこのコレオを見て改めて感じた瞬間だった。
ミランは今回、インテルを煽るのでは無く、医療従事者を賛辞するという、いつものミラノダービーではあまり見られない、所謂変化球なコレオを作ってきたのだが、こういうのも偶には悪くないなと思ったインテリスタ目線(私個人)からの感想。
双方の戦略
まずはミラン側のスタメン
ブラヒムがトップ下ではなくサイドに配置され、トップ下にクルニッチが置かれた、このクルニッチがインテルのブロゾビッチを監視することで相手に試合をコントロールさせないようにする作戦が見て取れる。
キーパーはメニャンではなくタタルシャヌ、テオエルナンデスも離脱しているためバロトゥーレが先発、完全にフルメンバーという程ではないが、出来るだけインテルに勝つためのベストなメンバーで来た。
続いてインテルのスタメン
こちらはほとんどベストメンバーで来た。中盤はチャルハノールかビダルか、最後まで意見が割れていたが、結局チャルハノールがスタメンになった。
チャルハノールは初めての古巣との対戦、出て行き方があまりにもアレだったため、大ブーイングが予測されるがここはチャルハノールにとって正念場になるような試合だった。
前半、強心臓の元10番
試合は前半から割とインテル側に多くのチャンスがあった。基本的にインテルが保持するが、クルニッチがブロゾを監視している影響上、こちらも上手くは組み立てられない、そこでバストーニが上がったり、バレッラやチャルハノールが降りてくるなどして上手く試合を回していた。
そして1回目のチャンス、チャルハノールがPKを獲得、そして本人が決めてインテルが先制点を取る
そしてミランサポーター側に向けてこのパフォーマンス、元ミランの10番としてインテルに移籍してミラニスタから裏切り者扱いされていてもこのパフォーマンス、この男あまりにも心臓が強すぎる、これだけの大ブーイングを浴びながらもPKを落ち着いて決めてくるあたり流石と言ったところなのだろうか。
ミラニスタは激怒案件だろうがインテリスタからすればドン引き2割、爆笑8割と言ったシーンだった。
こういう大ブーイングを見てまたサポーターが戻ってきたんだなぁと実感した瞬間でもあった(それにしてもチャルハノールは少し自重して)
先制点を取ったあともインテルペースだが、ミランも全く負けていない、ボールを奪って即座にブラヒム、レオンに繋げてカウンター、鋭い攻撃でインテルゴールに襲いかかる。
そして獲得したセットプレーからトモリがヘディングでゴール!と思いきやデフライの頭に辺り、インテルのオウンゴールとなった。
この得点で同点のまま振り出しに戻ると、インテル側にすぐチャンスが来る、中に入り込んだダルミアンにすかさずラウタロが絶妙なパスを通してダルミアンがペナルティエリアに侵入、それをバロトゥーレが倒してしまいまたもPK、次のキッカーはラウタロ、しかしラウタロのキックはタタルシャヌに止められて得点にはならず、お互いに得点は譲らないと言った展開で前半が終了した。
後半、賭けと疲労
前半終えて鍵になって来そうなところと言えば「どちらが先に仕掛けるか」というところだった。実際ミランはクルニッチをトップ下に置き、ブラヒムをサイドに置いたことによって、いつもの中央からの攻撃は少なめになる代わりに、相手に主導権を握らせないフォーメーションを取っていた。
しかし時間が経てばいつかは仕掛けなければならない、ミランはいつブロゾの監視を解放するか、そしてインテルはいつコレア、サンチェス、ビダルと言った交代策を切ってくるのか、両監督の駆け引きがもう既に始まっていた。
後半開始早々ミランは前半にPKを献上したバロトゥーレを下げてカルルを投入、穴になっていた選手を下げた事でミランの組み立てにまた安定感が戻ってきた。
そして先に仕掛けたのはミランだった、ブラヒムとレオンを替えて、サレマーケルスとレビッチを投入、クルニッチを下げることなく、ブロゾの監視役を徹底することを選択した。インテル側からすれば、脅威となるブラヒムが下がったことでやや安心感が出たような交代カードに見えた。
しかしブロゾが一貫してクルニッチのマークにあっているため、インテルもなかなか攻撃を作れずにいた。クルニッチを下げずに相手に主導権を渡さないチョイスをしたのは見事だった。
そしてインテルはというと、やや後手に回ってしまった印象、しかもバレッラが太ももの裏あたりを気にし始めて負傷交代、ビダルが代わって入る、それだけではない、ジェコも同じように負傷を訴えて交代、予想外のハプニングが多発する。
こうなったのも過密日程の影響とターンオーバーが出来ない選手達の使い詰めが原因だろう、ついにバレッラとジェコにガタが来てしまった。代わりのいない選手達の離脱にシモーネはかなり振り回されていた。
こうしてインテルはサンチェスとコレアをツートップに入れて勝負に出るが、如何せんバレッラとジェコの抜けた穴は大きい、ブロゾが監視されて組み立てられない中、前線にも繋げられないジェコが普段ポストプレーしていたところに人がいない、バレッラが普段持ち上がる展開に同じように出来る選手がいない
彼らが抜けた時に彼らがやっていたプレーの重みを知った。これ程までに攻撃が成立しないとは...頼みのジョーカーであったコレアにはほとんどボールが繋がらず、チャンスというチャンスは巡ってこなかった。
お互いに予期せぬ自体が起こりながらも、それぞれの賭けを仕掛けた結果、後半には点は動かず、結果は1-1の痛み分けというスコアになった。インテル側からすれば離脱した選手の様態が気になることと、首位に対して差を詰められなかったことが悔やまれる試合になった。
ミランからしても首位をナポリに明け渡してしまうというところで、まさに文字通り痛み分けのような結果になっていた。
ミラノダービーを構成するもの
ミラノダービーはやはり特別な試合。同じ地域、同じスタジアムを拠点とし、どちらもCL、スクデットなど多くのタイトルを勝ち取った唯一のライバルとしてこのミラノダービーは位置づけられている。
それだけに観客も、選手達もそれを背負って戦っている、そしてサポーター達の作るコレオも合わせてこのダービーの魅力を作っていると言ってもいい。
それがこの1~2年の間は無観客試合によって何かが足りないミラノダービーを経験していた。やはりこの大歓声があってこそ、このブーイングの嵐があってこそのミラノダービーなんだと改めて認識させられた。
結果は1-1となんとも言えない結果にはなってしまったが、このミラノダービーを構成する要素の全てに改めて感謝の気持ちを示したくなるような試合になった。
次の試合はシーズン後半、お互いその時にどの位置にいるのか分からないが、また今回のように熱いダービーを繰り広げられる事を祈っている。
次は勝つ
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