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「レイジング・ブル」

なかなかよかった。
孤高のボクサーの物語、というと聞こえがいいが、全能感にとらわれたとき、人はものが見えなくなる。本作の主人公であるジェイク・ラモッタはそういう人生だった。それだけだと、孤独なボクサーの生涯を描いただけになるが、本作はそこではおわらなかった。
落ちぶれたジェイクは、スタンダップコメディアンになる。笑いも取れず、最後はさびれた楽屋で出番を待つ。声がかかり、ジェイクは、部屋を出る前にシャドーボクシングをはじめる。
ぶくぶくと太り、友だちもいなくて、おもしろい冗談も言えないジェイクが、虚空に向かってパンチを放ち続ける。それが彼の人生なのだ。彼は人生のすべてを受け入れて戦い続けるのだ。

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