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2022年4月の記事一覧

六年前(自死遺族の手記)

自分自身に対するひとつの区切り、あるいはある種の決別として、あの日のことを記しておく。 * 六年前 振動する二つ折りの携帯電話。父からの着信を知らせる画面。実家を離れて一人暮らしを始めて以降、母から何気ない電話がかかってくることはそれなりにあったが、父から電話がかかってくることなど、ほとんど初めてだった。だから、とてつもなく嫌な予感がした。 通話ボタンを押すと、「おかあさんがくびつっちゃった」と、父の悲痛な声が耳に飛び込む。その声はつづけて「なるべく早く帰ってきてくれ