十八 互いの熱/アルカナ眠る君に噓はつけない

 昨夜は会食から帰宅してからというもの、仁一人がワインを飲み続けていた。義弟を寄せつけず、月夜を眺めながら、ひたすら物思いに耽っている。そんな義兄を気にかけつつ先に眠りについたはずなのに、仁の目覚めの早さにはいつも感服してしまう。彼はいつ眠っているのだろう。一度は寝姿を見てみたいと、悠真は思った。
 窓から溢れる日だまりの中、彼はバスルームの鏡に己を映して言った。
「え、これは……」
 首元に黒いエナメル製のチョーカーが着いていた。犬の首輪に似たそれは、連結部分に小さな錠前と金属製の輪がぶら下がった見るからに被虐的な趣味だったが、彼の滑らかな肌を引き立てるにはこれ以上ない物だった。

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3,506字
某BL雑誌でA賞を取った作品です。 完結しています。全27章。凡そ75000字です。 18禁指定。少しハードなBLです。

義父の通夜で初めて義兄<仁>の存在を知る悠真。実父を憎む冷淡さがありながら禁欲的で支配性すら感じる魅力に悠真は不覚にも魅せられてしまう。目…

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