二十七 新たな歯車/アルカナ眠る君に噓はつけない

 それから三年の月日が流れた。悠真は環境造形の会社で働きながら、コンクリートレリーフなどのデザインを手がけていた。街を彩る陶壁。幾何学的な彫刻。悠真自身の探求心と利便性まで考えた斬新なデザインは、少しずつではあったものの認知されていった。
「仁科くん、この前のコンペ通ったから。よろしく」
 通りすがりに主任が声をかけていった。
「本当ですか!ありがとうございます」
 頭を下げて満面の笑みを浮かべた悠真の前に、後輩の石田が横合いから顔を突き出した。
「すごいなぁ、またですか。さすが悠真さん」彼は暇さえあれば悠真につき纏っていた。新入社員の頃から大胆不敵で何かと問題児だった彼を、悠真だけが上手く操縦したのがきっかけだった。

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2,661字
某BL雑誌でA賞を取った作品です。 完結しています。全27章。凡そ75000字です。 18禁指定。少しハードなBLです。

義父の通夜で初めて義兄<仁>の存在を知る悠真。実父を憎む冷淡さがありながら禁欲的で支配性すら感じる魅力に悠真は不覚にも魅せられてしまう。目…

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