八 縄張り/アルカナ眠る君に嘘はつけない

「オレたち浮きまくってね?」
 智樹はオフィスビルの一階にある受付カウンターで、ふてぶてしく辺りを見回した。世間でも名の知れた高層ビルに仁の会社の名はあった。それだけで十分驚愕に値したが、面会だけでも入館証の発行が必要なことなど、警備が厳重なことにも当惑した。
「はい、友達も一緒で……」
 悠真は慣れない手続きに手間どっていた。この物々しい雰囲気を味わえば、およそ簡単に訪ねられる会社ではないと予測ができる。時々通りすがりのビジネスマンから好奇の目が向けられるのを、智樹は昂然と睨み返した。
「アポイントの確認が取れないと難しいとのことです。先にお兄様と直接連絡をなさってはいかがですか」

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2,482字
某BL雑誌でA賞を取った作品です。 完結しています。全27章。凡そ75000字です。 18禁指定。少しハードなBLです。

義父の通夜で初めて義兄<仁>の存在を知る悠真。実父を憎む冷淡さがありながら禁欲的で支配性すら感じる魅力に悠真は不覚にも魅せられてしまう。目…

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