十五 静かな衝動/アルカナ眠る君に噓はつけない

 悠真は落ち着きなく座席に座り、空席のままいつ埋まるとも分からない隣を見つめた。
 慣れない空港とあって搭乗の一時間前には到着していた。案内されたのは見たこともない豪華なラウンジ。何もかもが初めての経験で浮き足だってしまう。機内まで丁寧に導かれ、やっと席に着いたものの、座り心地の良いシートにまで不慣れを見破られているようだった。
 きっと義兄はこれらを秀麗にこなすのだろう。呼吸するのと変わりなく、何の躊躇もせずに。この拘束さえなければ、誇らしいのは事実だった。
「お連れ様は先に」
「ああ」
 そんな会話が近付いてくるのが分かった。義兄だ。悠真は席に深く掛け直すと、正面にあるモニター画面を見つめた。パーティションで囲われた二人席は個室さながらで、そこで義兄とすごすのだと思うと身構える。

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2,121字
某BL雑誌でA賞を取った作品です。 完結しています。全27章。凡そ75000字です。 18禁指定。少しハードなBLです。

義父の通夜で初めて義兄<仁>の存在を知る悠真。実父を憎む冷淡さがありながら禁欲的で支配性すら感じる魅力に悠真は不覚にも魅せられてしまう。目…

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