五 禁断の行為/アルカナ眠る君に噓はつけない

「義兄さん……」
 悠真は繋がれた両腕をガラスに乗せ、這うように頭上に滑らせながら身体ごとしな垂れかかった。視界が波打つ。部屋諸共、渦を巻いて堕ちて行く。
「仁……」
 額がぶつかり、歯ががちがちと鳴った。目を背けたくとも抗えない。義兄の前髪が一筋だけ揺れているのを、朦朧としていく意識の中で追い続けた。
 仁の唇が剥き出しになった首筋を食んでいる。顔は見えない。それでも、前髪の繊細な浮動で分かった。

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