十二 隠された拘束/アルカナ眠る君に噓はつけない

「やべえ、頭いてぇ。おい、悠真。まだ寝てんの?飯食いに行こうぜ」
 智樹は内階段を怠惰に上がりながら禁断の巣穴に初めて足を踏み入れるような、不可解な緊張感を伴って言った。
「あぁ、飲みすぎた」頭を壁に預けると、最後の一段を前に立ち止まった。滾々と流れる静寂の他は寝息一つ聞こえない。
「悠真……おい、居ねえの?」
 昼日中でも光のない閑散とした部屋。最奥にはカーテンの引かれた小窓とシングルベッド。そして、何とも曰く言い難い姿勢で横たわる人影があった。
「入るぞ」やけに重く湿った空気に如何わしさすら感じる。
「おい、悠真」
 智樹はベッドまで近寄ると大胆に驚嘆した。そこに眠っているのは悠真に違いない。しかし、シャツの前面が見事にはだけ、肩や胸までも剥き出しになった姿は、日頃の彼からは想像ができないほど卑猥だった。

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2,818字
某BL雑誌でA賞を取った作品です。 完結しています。全27章。凡そ75000字です。 18禁指定。少しハードなBLです。

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