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オフィス街の一角にある近代建築物の前に一台のタクシーが止まった。 陽の落ちたここは閑…
響はビールグラスを片手にライブハウスの二階から身を乗り出していた。地明かりのついた一階…
「終わりのない蜜の迷路おぼれてしまうけど。一つ消えていく、偽りの道……」 麗次はホテル…
「今日はこれをかけてくれ」 響は一枚のコンパクトディスクを取り出すと、アシスタントに渡…
「へぇ、こんなとこ使ってんだ。下心丸見え」 個室に通された麗次は、畳敷きの部屋にギター…
「なんで……」 麗次は早朝の自宅前に座り込むリュウに当惑した。マンションとはいえ、外気…
「自分で渡せばいいじゃないか」 拓也は無理やり握らされたバングルを恨めしそうに睨み、人影のないギャラリーの中庭で不服そうに呟いた。 「だから、連絡先訊いてねえの。これからミラノに行かなきゃなんないし、一ヶ月は帰れそうにねぇ」 響はキャップを被った軽装だった。無駄を省いた慣れた出で立ちも彼の体形には十分すぎるほどの装飾だ。深く下げたつばの隙間から友の顔を覗き込む何気ないしぐさに、拓也の目は不自然に泳いだ。 「それ大事な物っぽいし、早く返してやんないとな。おまえ、会うだろ」
響はミラノの地に降り立った。夕陽に照らされたロマネスク建築の波に、いつも畏敬と懐かしさ…
拓也は音楽スタジオのロビーでパソコンを開いていた。誰も居ないソファに腰かけ、ライブのス…
──面倒だから、さっさとやっちゃってよ。 響は走馬灯のように展開する麗次の言動を、未だ…
「響、急で悪かったな」 空港まで車で出迎えた森は、車中に乗り込む響に言った。 「こっちこ…
「コレクションもぼくたちにとっては祭りみたいなもんだし、遊びを突っ込みたいな」 ライブ…
暗闇の中。時計は深夜の一時を指している。麗次はベッドの上で膝を抱え、携帯電話の画面をぼ…
明かりの消えた音楽スタジオの前に一台のタクシーが止まった。麗次はその中を覗くと、手を振る拓也を確認して微笑んだ。 麗次の隣にはリュウが立っていた。車に乗り込む相棒を見守る彼に、拓也は身を乗り出して言った。 「麗次を借りるよ」 しかし、リュウは冷めた視線を向け「明日な、レージ」と告げて、無愛想に踵を返した。