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放出制御組成物事件(パシーフカプセル)

弁理士試験の勉強時に製薬会社に勤めているという理由で、延長登録出願の判例について、いくつか説明を書いていたので、出してみようと思います。

注)私の記載に間違いがある可能性もあります・・・
  間違いが発見されたら、教えていただけると幸いです。

はじめに

医薬品の販売までのフロー

まず医薬品は販売するまでの簡単なフローを書いてみますね。
すごい簡単に書いてますので、足りないとかのツッコミはその通りです・・・

フロー
①薬のもと(有効成分:頭痛に効く成分とか)発見
②薬の形にする(製剤!私の仕事でした)
③治験
④厚生労働省の販売していいよっていう許認可
(これが処分って言われるやつです)
⑤販売

治験については以前の記事にも書きましたが、作った薬が本当に効くのか、安全なのかを人に実際に使って確かめるというものです。(試験研究にあたるから業としてではない、っていうのはこの治験のことを言っています。)

この治験に
非常にながーい時間がかかる
ので
医薬品は特許期間の延長が認められています

剤型による違い

剤型って聞きなれないかもしれませんが、私の仕事を記載したところで、詳しく書いています。

まぁ簡単にいうと、薬の形ですね。
皆さんよく知っているところですと、薬には
・錠剤
・顆粒剤(粉薬)
・液剤(経口用)
・注射剤
・貼付剤
・軟膏(塗り薬)
などなど、いろいろな形があります。

そしてですね、
薬には同じ有効成分でも違う剤型の薬があり、
その剤型によって体に吸収される早さ(吸収が早いと効果が早く出ます)などが違っています。

例えば、吸収(細かくいうと血中に入る早さ)が
早い・・注射>液剤(ドリンク)>錠剤>カプセル剤・・遅い
といったところです

注射は直接血液に薬を入れるので、吸収が早いです。
逆にカプセル剤は胃でカプセルが溶けて、薬が出てきてから吸収なので遅いです。

そしてですよ!
同じ有効成分で剤型が違っていても、治験が必要
です。

今まで注射剤だった(吸収が早かった)のが、カプセルとかのゆっくりのものになった時に、本当に効果があるのかわからないですよね。
逆にゆっくりのものを早くした時に、安全か気になりますよね。
だから必要とされています。

本題

前提

パシーフカプセルはモルヒネ塩酸塩水和物が有効成分の、癌の痛み止めの薬のようですね。

わかりにくいので風邪薬として書いていきますね笑。
ただ有効成分はMにしておきます。

・A社:有効成分Mの液剤の風邪薬を、許認可(処分α)を得て販売
・B社:有効成分Mのカプセル剤の風邪薬を、許認可(処分β)を得て販売
*B社特許:有効成分Mのカプセル剤の風邪薬
B者はこの特許を延長したい→延長登録出願

注)さきほど伝えたように有効成分は同じだけど、剤型が違うので、各処分(α、β)を得るために、A社もB社も治験をしてるので、販売までには時間がかかっています。

内容

特許庁は最初、
「処分αあるんだから、処分βは必要なかっただろ!」
「だから延長なんて認めないよ」
って言っていたんです。
しかしB社としては、薬の形が違っていて、治験が必要なので販売するまで時間がかかっています。

なのでB社は
「処分αがあっても、うちの特許の【有効成分Zのカプセル剤の風邪薬】は販売できなかったじゃんか!処分β必要だったじゃんか!」
って言ったわけです。
それが最高裁で争われた感じですね。

当然、処分αではB社の特許製品「有効成分Mのカプセル剤の風邪薬」は販売できなかったわけですから、処分βでかかった期間の分だけ延長されるべきと最終はなりました。

私見

この判例は先発医薬品の会社でしたが、これはジェネリック医薬品を意識したものでしょうかね。
ジェネリックは基本剤型チェンジなんで、その特許でも延長認めますという判例ですね。

なにってこの判例は
その特許発明の実施に本件処分を受けることが必要であったとは認められないということはできない
この書き方でわかりづらくさせているように見える・・・
「必要であったと認められないということはできない」
→「必要であった」
ない&ない=肯定って感じですよね。

処分βが必要だったってことですね。
まぁこんな感じで。
あでゅー

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