見出し画像

日本海

 私は太平洋側出身の人間なので、日本海というのは中央分水嶺の向こうの存在である。旅行も滅多にしないため、山を越えて日本海まで行ったことはこれまでの人生で2回しかない。

 1回目は鳥取砂丘である。その日は曇り空で、雨は小雨が時折ぱらつく程度であったが、風も強く、夏なのに外にいるとやや寒いくらいであった。遠路はるばる来たので砂丘に繰り出したのだが、まあ空模様が重い重い。写真を撮っても、白っぽい灰色の空と、日光が弱いためこちらもどんよりとした色の一面の砂と、青と言うには彩度の低い海しか写らない。

 私は鳥取砂丘をでかい砂浜のようなものだとばかり思っていたので、ビジターセンターのようなところから砂丘に出て、海が見えなくてびっくりした。そのとき砂丘に入ったところから海の間には大きな砂丘があって、そこを越えないと海にはたどり着けないのである。その頃は若かったので(数年前だが)、多くの人たちが登っていく緩やかなところから少し外れた急斜面を友人たちと登って行ったものだから、きついし靴に砂は入るしで大変だった。そのあと波打ち際まで行ったのだが、油断していたら靴を波に洗われて足がびしょ濡れになってしまった。

 鳥取砂丘、ひいては日本海とのファーストエンカウントがそんな感じだったので、すごくどんよりしたところというイメージがついてしまったのだが、あとで晴れているときの鳥取砂丘の写真を見て、晴れだとこんなに映えるんだと衝撃だった。天気は残念だったが梨のソフトクリームかジェラートかを食べたりもして楽しかったので、今度は晴れているときにまた行きたい。

 余談だが、鳥取砂丘が日本最大の砂丘だと思っていたら、規模としては青森県の「猿ヶ森砂丘」のほうがずっと大きいらしい。ただこの猿ヶ森砂丘、現在は防衛装備庁の試験場になっており、弾道試験などが行われているため、ほとんどが一般人立ち入り禁止ということだ。


 2回目は福井の東尋坊である。この時も空模様は不安定で、行ったときは雨こそ降っていなかったものの、雲が空一面を覆っていた。

 東尋坊の前には昔からある感じの土産物店などが並ぶ商店街があるのだが、海のほうへ伸びているのに上り勾配で、不思議な感じだった。正直あまり栄えている観光地という印象はその時は持たなかったが、それでも人はまあまあいるし、それに個人商店がたくさん残っているだけの需要はあるんだろうなと思った。

 東尋坊は奇岩の崖の並ぶ名勝であるが、個人的に一番びっくりしたのは結構な高さのある崖なのに転落防止の柵がほとんどないところである。一時期自殺の名所にもなっていたように思うが、確かに落ちたらただでは済まないと思う。検索したが転落事故の具体的な話は(トラブル絡みの事件はあったようだが)出てこなかったので、みなさんさすがに気をつけるのか。

 柵や手すりをつけるにしても、「崖」を売りにする観光地としては景観を損なうようなことはしたくないだろうし、今後もあのままなのだろうか。個人的にはそうあってほしいが、事故が起こると今の社会でそういう状況が許されるか疑問なところもある。

 後で東尋坊を地図でみたところ、思ったより海岸線が入り組んでいた。崖を見る場合、船からでなければ人間は崖の上にいるわけで、足元の崖は見えにくい。海岸線が入り組んでいることで、海の切れ込んだところでは対岸の崖が見えるので、観光には向いてるんだろう。

 こちらも曇りの日の来訪となったため「日本海=どんより」イメージが強化されてしまった。晴れの日だとまた違った景色が見られると思うので、また行ってみたいところではある。もっとも、遠隔地の旅行だと、予定を先に立てるため、天気がいいかは運と日ごろの行い次第なのだが。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?