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某温泉

 先日より草津町の(元)町議と町長と議会のいろいろが報じられている。問題の町議は住民投票でリコールとなり失職したが、これに対しTwitterの一部からは「性被害が町ぐるみでもみ消された」とでも言わんばかりの非難が起こっており、「#草津温泉には行かない」というハッシュタグまで現れる始末であった。

 事実関係はまだ争われているとはいえ、被害を告発した元町議の「町長室の模様替え」などは他の人々からあったという証言も出ていないようで、どうも元町議には分が悪いのではないかと思ってしまう。そもそも元町議は被害届は出していないらしく(むしろ名誉棄損で町長から訴えられている側である)、住民投票の結果を「性被害のもみ消し」と見てしまうのは少々短絡的と言わざるを得ない。

 それはさておき、その結果がどうして「#草津温泉には行かない」になるのだろうかと、最初見たときは不思議であった。自分が見ている中でも、その繋がりに同じように疑問を持つ人もいた。Twitter草津町は観光業が盛んで住民もそれに関係する人が多いから、「性被害のもみ消しに加担した町民にお灸をすえてやろう」くらいの調子なのかと最初は思った。

 とはいえ、確かにそういう意図の人もいたかもしれないが、町の議会の問題と観光業は直接関係がないし、今は観光業も厳しいのでそれはお門違いではという意見も、元町議擁護側からもあったようだ。「最善の相」で見れば、これはお灸というよりは「そういう町には怖くて旅行できない」という思いなのではないか。

 ミソジニーの流行る町に観光に行っても、フェミニズム的価値観にアップデートできていない地方の旧態依然とした環境では、不快な思いをさせられる可能性が高い、そういう思いが「#草津温泉には行かない」というハッシュタグの根本にあったのではないか、というのが今回できるだけ悪意などをないものとして見たときの結論である。反撃というよりむしろ自衛だったのではないか。

 もっとも冒頭に貼ったリンクによると、町の観光課や観光協会に苦情や抗議の電話が寄せられることはほとんどなかったようで、あのハッシュタグによって直接町の人が困るということはなかったようだ。電話対応に追われるようなことがなかったのはよかった。どこに旅行するかは自由なので、行きたいところに行けばいいし、行きたくないところには行かなくていい。

 Twitterでは「#草津温泉には行かない」のタグに対抗して「#草津温泉に行こう」のタグとともに草津の魅力を紹介するツイートも見られた。どこの観光地も大変だとは思うが、どうか乗り切ってほしいと思う。

 それにしても、今回「#草津温泉には行かない」を表明した人たち、だったらどこの観光地がおすすめなのだろうか。彼/彼女たちの価値観に合う観光地の情報など、もしかしたら交換しあっているのかもしれない。 

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