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コロナと少子高齢化

 コロナは少子高齢化を促進するんじゃないか、という話。

 まず少子化については言うまでもないだろう。今回のコロナ禍で職を失ったり、収入の減少や不安定化に直面している人は大勢いる。今は大丈夫でも、終息の見通しが立たない中では、結婚や出産を控える人が多くなるのは自然なことである。上のリンクでは最新の統計で出生数は前年比マイナス1.7%と言っているが、これはコロナ禍の前に妊娠していた赤ちゃんの数であり、減少が顕在化するのはこれからである。さあ、どういう数字が出てくるか。

 一方婚姻数は前年比マイナス17.1%だそうだ。おそらくこれは、コロナ禍の中で生活の見通しが立たないこと、あるいは今結婚しても結婚式などが挙げられないことなどで、結婚を先延ばししたカップルがいるということだろう。この減少分は、コロナ禍が落ち着けば結婚するカップルが多いだろうが、一方あるいは両方の生活の変化により結婚せずに終わってしまうパターンもあるだろう。

 婚姻数の減少は長期的な問題になるかもしれない。まず、この自粛の流れによって、不要不急の外出が推奨されなくなっている。職場から外食であったり、長距離移動であったり、他人と会うことだったりを控えるように言われている人も多いだろう。そのような状況は新しいカップルの形成を促すものではない。恋愛は現代社会から、企業の立場からすれば、どちらかといえば「不要不急」とされてしまうことであり、ディスタンスの風潮とは相性が悪い。

 さらには、今後コロナ禍が経済的に長期にわたり影響を及ぼした場合、若者の就職氷河期が再来することも十分に考えられる。そうなれば、その世代の若者は、正規の職につけなかったり、あるいは賃金水準が前後の世代より下がったりするだろう。その結果、結婚が遅れるまたは結婚できない、結婚したとしても子供がもてない、もっても1人ということになり、少子化が促進されてしまう。

 そもそもコロナ禍の前から、出生数の減少幅は大きくなっていた。そこにこの事態であるので、出生数回復のため、日夜励んでいた行政の皆さんにとっては大変頭が痛いことだろう。


 一方高齢化のほうである。コロナで重症化したり、死亡したりするのは主に高齢者(リンク先PDF)である。コロナが流行り始めた頃には、これで高齢化が緩和されるのではないかという不謹慎な期待もあったように思う。ただこれをもってコロナで高齢者が減少するとは言えないのではないか。

 なぜなら、コロナ対策は手洗い・うがい・消毒・マスク・ディスタンスなどの基本的な感染症対策のため、他の感染症の感染も同時に抑制するものだからである。

 こちらは2017年のデータであるが、インフルエンザ・結核・感染性胃腸炎で年間2000人ほどが死んでいる。これらの多くは高齢者であろう。他にも、風邪をこじらせて肺炎で死亡というパターンも高齢者にはある。これらがコロナ対策によってどこまで減るかはまだわからないが、感染数や死亡者数が減るであろうとは予測できる。

 もちろんコロナ禍で亡くなった高齢者も多いので、今年の死亡者数がプラスマイナスどちらに転ぶかはわからない。ただ、「ニューノーマル」の生活では他の感染症にもかかりにくくなることは確実であろう。外出が減ることで事故も減っているかもしれない。コロナ禍のような感染症に備えて医療体制を充実させようという流れも考えられるが、もしそうなれば、これは高齢者の健康に寄与するものである。

 コロナは直接高齢者の寿命を延ばすものではないが、コロナ禍による変化により結果として寿命が伸びた高齢者もいると思われる。一方確実に少子化は促進されるだろう。コロナ禍がいつ終わるのかはわからないが、終わってみれば一部の期待のように少子高齢化が改善されるどころか、コロナ禍がなかった場合の推測よりもいっそう悲惨な結果になっているというのは十分にありうる話である。

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