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ムスカリ。

少しひんやりとした空気の奥に潜んでいる生ぬるい匂い。春の匂いだ。
それは安心と不安を一度に運んできて、私の感情をぐるぐるとかき混ぜた。

昨年、夜道で見た桜が綺麗だったことを思い出した。だから今日、同じ場所へ足を運んでみると予想通り、桜のアーチがそこにあった。

一年前、桜のアーチをくぐったとき、もがき苦しんだ末に行き着いたゴールのように思えた。
そして微かな期待を抱いた。今よりきっと、よくなる。今よりきっと、幸せを拾える。だけど現実はそんなに甘くはなかった。簡単に幸せになんてなれない。希望の光はそうそう差し込んでこない。

というのも一年経った今、振り返ってみると私はまだ同じ場所にいるような気がするからだ。いい加減引きずりたくないと思っているのに記憶が私の足を掴んで離さない。覚えておくべきだけど忘れたい思い出。消し去りたい過去。この一年間、定期的に夢に出てきて私の心をかき乱した。きっとこれからも記憶が手を離してくれない限りずっと続くのだろう。

未来は変えられる。だけど過去は変えられない。過去と未来は繋がっているため過去の行いは未来に反映される。もしそうなのであれば。私は幸せになりたいと思う気持ちを捨てるべきなのかもしれない。

期待が高ければ高いほど、到達できなかったときの落ち込みは大きい。幸せになりたいと願えば願うほど、なれなかったときの傷は深い。その振れ幅が大きいと回復にも時間がかかる。かつてはいくらでも湧いて出てきたへこたれない力が年を追うごとに小さくなっている。一方で諦めの感情は年々侵食を増している。世の中にはどうにもならないことが山程ある、と。

期待をしない、願わない、信じない。
傷つく覚悟がないのであればこの3つの言葉を深く心に刻むべし。
それが、物事を複雑に考えすぎる私の中に潜む闇、ダークサイドの教えだ。

だけどこの教えの難易度は高い。それもまた、悩みの種である。

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