「ちょっと待てよ、嘘だろ」 深海の底で、気が遠くなるような時間を、過ごした気分だった。 何重にも重なったベールの向こうから、声がする。 「お前、なんでこんなとこ…
千代田
2020年2月10日 03:05
「ちょっと待てよ、嘘だろ」深海の底で、気が遠くなるような時間を、過ごした気分だった。何重にも重なったベールの向こうから、声がする。「お前、なんでこんなとこにいるんだよ」耳は聞こえる。だけど、目が鉛のように重たくて、開かない。低くてよく通る声は小さく、震えていた。聞いたことがあるような。誰だっけ。「ユウリ!……おい、起きろよ!」声の主の名前を思い出す前に、彼が呼んで